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団信の告知内容の解説と告知義務違反の具体的リスク

住宅ローンを組むにあたって、ほとんどの場合、団信(団体信用生命保険)の加入が必要となります。

現在病気を抱えていたり、過去に通院歴などがあった場合、どこまで団信に告知すればいいのか?また、告知を偽った場合どのような事態が想定されるのか?さらに、万が一団信に通らなかった場合の対処方法についてもまとめました。

この記事の監修者

宅地建物取引士/元銀行員
鰭沼 悟

宅地建物取引士、不動産投資家歴15年、元銀行員。不動産仲介からリノベーション設計・施工をワンストップで提供する株式会社grooveagent(ゼロリノベ)代表取締役。

目次

団信の告知義務違反のリスク

団信には様々な告知事項がありますが、まず大前提として内容に漏れが無いよう、必ず素直に告知しなければなりません。告知に虚偽があったことが発覚すると、せっかく加入した団信を解除される可能性があります。

団信は住宅ローンを借りている本人が死亡または高度障害状態になった時、ローンの残債を返済してくれる保険です。告知義務違反があったために保険を解除されてしまうと、残された家族に住宅ローンの返済という重い負担が降りかかることになります。

「そうは言っても、バレなきゃいいんじゃないの?」と思われる方もいるかもしれません。

もちろん、虚偽の告知をしたとしてもバレなければ万が一の時の保険料は支払われます。ですが、住宅は人生の中でもとても大きな買い物で、住宅ローンは30年以上付き合うものです。

バレてしまった時のリスクを抱えながら生活するのは、得策ではありません。

告知審査の内容

意図せず告知漏れが起きる可能性もあります。故意でなくとも重大な過失であった場合は契約解除されてしまいますから、告知内容はしっかり把握しておきましょう。

質問事項は以下のような内容です。

1.最近3ヶ月以内に医師の治療(指示・指導を含みます)・投薬を受けたことがありますか。

2.過去3年以内に下期に該当する病気で手術を受けたこと、または2週間以上にわたって医師の治療(指示・指導を含む)・投薬を受けたことがありますか。

●狭心症、心筋こうそく、心臓弁膜症、心筋症、不整脈、先天性心臓病
●脳卒中(脳出血・脳こうそく・くも膜下出血)、脳動脈硬化症
●高血圧症、糖尿病、こうげん病、リウマチ、貧血症、紫斑病
●慢性気管支炎、ぜんそく、肺結核、気管支拡張症、肺気腫
●胃かいよう、十二指腸かいよう、かいよう性大腸炎、すい臓炎、クローン病
●肝炎、肝硬変、肝機能障害
●腎炎、ネフローゼ、腎不全
●緑内障、網膜の病気、角膜の病気
●ガン、肉腫、白血病、腫瘍、ポリープ
●精神病、神経症、総合失調症、てんかん、うつ病、自律神経失調症、アルコール依存症、薬物依存症、知的障害、認知症
●子宮筋腫、子宮内膜症、乳腺症、卵巣のう腫

3.手・足の欠損または機能に障害がありますか。または脊骨(脊柱)・視力・聴力・言語・そしゃく機能に障害がありますか。

「2週間以上にわたって医師の治療(指示・指導を含む)・投薬を受けたことがありますか。」という部分については、1年に1回の定期検査を行なっている場合や、1回病院に行って2週間分の薬を処方されたり、2週間後の来院を指示された場合なども該当します。1~3の内容になし・ありで答え、「あり」の場合は、さらに以下の項目を記入します。

●病気やけがの名前(診断名)・障害内容・けがまたは障害の原因
●治療(指示・指導を含みます。)・投薬を受けた年月
●入院の有無および期間
●手術の有無・時期および名前または部位
●症状経過
・治療中の場合、現在の症状・治療内容・薬剤名・用法・用量等をご記入ください。
●〔高血圧症と告知された場合、最近の血圧値をご記入ください。〕
・最高(収縮期圧)、最低(拡張期圧)
●〔糖尿病と告知された場合、ご記入ください。〕
・最近の空腹時血糖値 、インスリン治療、合併症
●〔肝臓に関する病名を告知された場合、ご記入ください。〕
・最近の肝機能検査数値

ここであげた項目はあくまで1例ですが、銀行が指定する保険会社がこれらのような項目を見て判断していきます。

診断書が必要になるケース

告知審査の質問項目にも病状や数値を記入する必要がありますが、住宅ローンの条件によってはさらに健康診断書の提出も必要です。

主な条件は、借入額が5000万円を超える場合や、楽天銀行の長期8疾病就業不能保証特約付き団信信用生命保険を利用する場合です。

診断書をもらう手間がかかるため、自分が借りる住宅ローンで診断書が必要かどうかは念のため事前に確認しておくと安心です。

病気があってもすぐに審査に落ちるというわけではない

そもそも「通院歴があるけれど素直に申告していいのだろうか…」という迷いは、病気があると団信に加入できず、住宅ローンが組めなくなるのでは、という不安からくるものです。

しかし、質問項目に「あり」と答えたからと言って即座に審査に落ちるということはありません。

例えば「1.最近3ヶ月以内に医師の治療(指示・指導を含みます)・投薬を受けたことがありますか」という質問は、ちょっとした風邪や疾患にも該当するものです。「あり」と答えることになる人も大勢いますから、2の疾病に該当しない内容であればさほど心配する必要は無いでしょう。

では、2に該当する病気だった場合はというと、これも即座に落ちるとは限りません。その後の項目で具体的な病状などを確認するのは、その内容によって個別に審査が行われるからです。

団信に落ちてしまったときの対処法

もしも正直に病状を書いて審査に落ちてしまったとしても、諦めるのは早計です。別の方法でローンを組むことを検討しましょう。

5-1.保険会社を変える

保険会社によって団信の審査基準は異なるため、A社では審査に落ちてしまったけど、B社は受かった、というケースは珍しくありません。保険会社を変えて再チャレンジしてみましょう。

ただし、銀行は団信の引き受け会社を指定していることがほとんどですから、別の銀行に住宅ローンを申し込むところから始める必要があります。

銀行を変えても同じ保険会社を取り扱っていればまた落ちることになってしまいますから、銀行を変える時は提携している保険会社を確かめてから申し込むようにしましょう。

5-2.ワイド団体信用生命保険に申し込む

一般的な団信の審査基準よりも加入条件が緩和された「ワイド団信」という団信があります。告知審査の内容は普通の団信とほぼ同じですが、引き受け範囲を広げているのです。

メガバンクや地銀での取り扱いが増えてきているワイド団信ですが、住宅ローンの金利が0.2~0.3%前後上乗せされていたり、申し込みの年齢条件がある点は注意しましょう。

5-3.団信が任意のフラット35でローンを組む

ほとんどの住宅ローンは団信への加入がローンを組む際の必須条件になっていますが、住宅金融支援機構が提供する「フラット35」は、団信への加入が任意です。団信付きの場合に比べると、金利は0.2%安くなります。

団信に入らなくても住宅ローンが組める商品があるのは、健康に不安がある人にとってありがたいものです。

しかし、その場合ローンの返済中に借りている人に万が一のことがあったとしたら、やはり残された家族の負債が心配です。

リスク回避のため、団信以外の生命保険や会社の福利厚生による死亡保障など、返済の手立てを準備・確認しておきましょう。

まとめ

団体信用生命保険は、万が一に備えるための大切な安全装置です。まず第一に、虚偽の告知は絶対にしないようにしましょう。

健康に不安がある場合でも審査に通る可能性はありますし、たとえ審査に落ちてしまった場合でも対処法を知っておけばマイホームを諦める必要もありません。

大切なのは、もしものことがあった時に大切な家族に数千万という借金が降り掛かからないようにすることです。無闇に審査を怖がらず、しっかりと告知義務を果たしましょう。

この記事の制作体制
  • 大月知香

    ゼロリノベの編集者。大学時代にデンマークへの留学を通して、北欧の人々の住まいに対する美意識の高さに感化される。暮らしにおける「住」の重要性を伝えたいと住宅雑誌の編集を経験。より自分らしく、自由に生きられる選択肢の一つとしてリノ...

  • 鰭沼 悟

    宅地建物取引士、不動産投資家歴15年、元銀行員。不動産仲介からリノベーション設計・施工をワンストップで提供する株式会社grooveagent(ゼロリノベ)代表取締役。

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