購入前の中古マンション固定資産税額は計算できない!知る方法はコレ
マンションを購入すると毎年納めることになる固定資産税。新築でも中古でも、不動産を所有していれば必ず納税義務が発生します。
固定資産税とは何かということから、築年数ごとに変わる中古マンションの固定資産税額の目安、今年分の固定資産税は売主と自分のどちらが支払うのかという疑問まで、気になるあれこれについて説明します。
宅地建物取引士/元銀行員
鰭沼 悟
宅地建物取引士、不動産投資家歴15年、元銀行員。不動産仲介からリノベーション設計・施工をワンストップで提供する株式会社grooveagent(ゼロリノベ)代表取締役。
中古マンションの固定資産税とは?支払はいつ?買う予定の物件の税額は?
固定資産税とは、土地や建物などの不動産(固定資産)を、1月1日時点で所有している人に対して課せられる地方税です。
土地や戸建住宅、新築マンションを所有している場合と同様、中古マンションを所有している人も、毎年地方自治体に固定資産税を納めなければなりません。
固定資産税は土地と建物の両方が対象になります。マンションを購入した場合は土地+建物の所有者となるので、両者それぞれに固定資産税がかかります。その税額は、
固定資産税評価額×1.4%
で計算します。
固定資産税評価額は、固定資産税を決める際の基準となる不動産の額です。建物や土地をどう評価するかを定めた「固定資産評価基準」に基づき、それぞれの自治体が決めています。建物は再建築価格を基準として評価し、土地は売買実例価額を基準として評価するのが基本となります(このことについては後述します)。
なお、建物の固定資産税評価額は、建物が古くなるほど経年劣化に伴って評価額が下がっていきます。したがって新築マンションよりも中古マンションの方が固定資産税の額は安くなります。
1-1.固定資産税の支払いタイミング
固定資産税を支払う必要のある人のもとには、各市町村(または都)から、毎年4~6月頃に納税通知書と振込用紙が郵送されてきます。
支払い期日は自治体によって異なりますが、多くの場合は6月、9月、12月、2月の年4回に分けて支払う形式となります。その場合は4枚の振込用紙が送られてきます。これらはまとめて支払うことも可能です。
支払いが期日より遅れた場合は延滞金が発生するので注意してください。
1-2.買う予定の中古マンションの固定資産税の確認方法
中古マンションは完成前の新築マンションの場合と違い、すでに固定資産税評価額が確定しています(課税台帳に記載されています)。そこから固定資産税の額を算出することも可能ですが、かなり細かい計算をする必要があるので少々やっかいです。
それよりももっと簡単に、不動産会社の担当者に「前所有者が昨年収めた固定資産税の金額」を確認してもらうよう依頼するというやり方があります。売買契約を交わす前でも、この依頼を断られることはまずないでしょう。不動産会社によっては最初から物件情報に前年の固定資産税を記載していることもあります。
ただし、固定資産税評価額は3年に1度見直されるため、実際に自分が納める税額とは若干異なる可能性がゼロではありません。それでも、中古マンションの固定資産税額が大きく変わることはまれなため、おおよその額は知ることができます。
築年数ごとの中古マンションの固定資産税の目安
ここでは築年数ごとの中古マンションの固定資産税額を計算してみます。
<条件>
・専有面積…70㎡
・建物の固定資産税評価額(新築時)…1,500万円
・土地の固定資産税評価額…3,000万円
土地の評価はずっと変わらないものと考えてください。
2-1.新築時
建物と土地はそれぞれ以下の軽減措置が適用されます。
建物部分→新築時から5年間は半額
土地部分→200平方メートル以下の小規模住宅地の場合は課税標準額が1/6
これらを加味して計算した結果は以下のとおりです。
〇土地税額:3,000万円×1.4%×1/6=70,000円
〇建物税額:1,500万円×1.4%×1/2=105,000円
〇固定資産税納税額=175,000円
2-2.築6年
建物部分の軽減特例期間は終了し、築年数に応じた再計算をすることになります。東京都の定める「経年減価補正率表」によると、6年後の経年減価補正率は「0.8335」となります。これにしたがって計算した結果は以下のとおりです。土地の税額は1/6のまま変わりません。
〇土地税額:3,000万円×1.4%×1/6=70,000円
〇建物税額:1,500万円×0.8335×1.4%=175,035円
〇固定資産税納税額=245,035円
2-3.築15年
東京都の定める「経年減価補正率表」では、15年後の経年減価補正率は「0.6225」となります。
〇土地税額:3,000万円×1.4%×1/6=70,000円
〇建物税額:1,500万円×0.6225×1.4%=130,735円
〇固定資産税納税額=200,735円
2-4.築25年
東京都の定める「経年減価補正率表」では、25年後の経年減価補正率は「0.3992」となります。
〇土地税額:3,000万円×1.4%×1/6=70,000円
〇建物税額:1,500万円×0.3992×1.4%=838,32円
〇固定資産税納税額=153,832円
2-5.建物の固定資産税評価額の調べ方と土地の固定資産税評価額の調べ方
先述したように、マンションの建物部分の固定資産税評価額は再建築価格をベースにして決められます。
これはつまり、「今、そのマンションを建築するといくらかかるか」を考えて計算されるということです。
新築時に実際に都道府県税事務所の職員が家屋調査を行って、建築資材や内装・住宅設備をチェックし、建物の価値を決定します。その後は築年数の経過や物価の変動に応じて評価額が見直されます。
一方、土地の固定資産税評価額を決めるのは「路線価」と呼ばれるものです。これは市町村が毎年4月に発表しています。「路線価×土地面積(㎡)」で計算され、さらに「道路から離れた奥まったところにある」、「間口が狭い」といった条件によって補正率を掛けて評価額が調整されます。
路線価はそれぞれの地域の税務署のサイトで公開されています。路線価には固定資産税用と相続税用があるので、固定資産税用の数字を参照してください。
今年分の固定資産税は売主と自分のどちらが支払う?
固定資産税はその年の1月1日時点の不動産所有者に課税されます。ということは、年の途中で購入した中古マンションの固定資産税の納税義務は、1月1日時点で所有していた人=売主にあるということになります。
しかし売主からすれば、その年の年末近くに物件を売却したのならともかく、年の初め頃に売却したマンションの固定資産税を1年分支払うとすれば納得いかないというのが正直なところでしょう。そこで、中古マンションに関しては売主と買主の間の話し合いで負担割合を決めるのが通例となっています。
具体的には、物件の引渡日を基準として日割り計算し、買主が支払うと決めた分の金額を売主に渡して、売主が納税することになります。
翌年からはもちろん、買主が正式に固定資産税の納税義務者となって、全額を納めます。