住宅ローンの三大疾病特約は必要?保障内容、加入条件などを解説
「住宅ローンの三大疾病特約ってどんなもの?」
「三大疾病特約はつけたほうがいい? つけなくてもいい?」
住宅ローンを検討していて、そんな疑問を持った人も多いのではないでしょうか。
住宅ローンの三大疾病特約とは、ローン契約の際に加入する団体信用生命保険につける特約です。
ローン契約者が、日本人の死因の上位を占める
・がん
・急性心筋梗塞
・脳卒中
の三大疾病で亡くなったり、高度な障害を負ったりした場合、住宅ローンの残債がゼロになるという保障内容で、多くの人が契約しています。
そこでこの記事では、住宅ローンの三大疾病特約について詳しく解説します。
- 三大疾病とは何か
- 住宅ローンの三大疾病特約とはどんなものか
- 三大疾病特約をつける人はどれくらいいるのか
といった基礎知識から始まって、実際に加入を検討している人向けに、
- 三大疾病特約の保障内容
- 三大疾病で保険金がおりる条件
- 三大疾病特約が適用されないケース
- 住宅ローンに三大疾病特約をつける際の金利
- 三大疾病特約の加入条件
などを詳しく説明していきます。
さらに、加入を迷っている人のために、
- 三大疾病特約をつけるかどうかの判断ポイント
- 三大疾病特約のかわりになる生命保険・医療保険
も挙げておきました。
最後まで読めば、住宅ローンを組む際に三大疾病特約をつけるべきか、判断できるようになるでしょう。
この記事で、あなたが納得いくローン契約ができるよう願っています。
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住宅ローンの三大疾病特約とは
まず最初に、「住宅ローンの三大疾病特約」とは何でしょうか?
その意味から説明していきましょう。
1-1.「三大疾病」とは?
「三大疾病」とは、日本人の死亡原因でつねに上位を占める3つの病気、つまり、
■がん
■急性心筋梗塞
■脳卒中
のことです。
厚生労働省の「令和元年 簡易生命表の概況」によると、令和元年に死亡した人の死因は、以下のような割合でした。
【死因別死亡確率(主要死因)・令和元年】
「悪性新生物<腫瘍>」とは、がんのことです。
また、「心疾患」には心筋梗塞と狭心症が含まれ、「脳血管疾患」は脳卒中を表わしています。
これを見ると、たとえば65歳男性では死因のほぼ50%が三大疾病によるもので、これらがいかに重大な疾患であるかがわかるでしょう。
ちなみに、最近ではこの三大疾病に、
■糖尿病
■高血圧
■肝硬変
■慢性腎不全
■慢性膵炎
の5つの重度慢性疾患を加えて、「八大疾病」とする場合もあります。
1-2.住宅ローンの三大疾病特約とはどんなもの?
では、住宅ローンにおける「三大疾病特約」とはどんなものでしょうか?
これは、住宅ローンを組む際に、多くの人が加入する「団体信用生命保険」につけることができる特約です。
団体信用生命保険、通称「団信」は、住宅ローンを組んだ人が、返済中に亡くなったり、高度障害を負って返済が困難になったりした際に、保険金で住宅ローンを返済することができるようにかける保険です。
団信に入っていれば、万が一のことがあっても、家族がローンの残債に苦しめられたり、住む家をなくしたりせずにすむのです。
ただ、通常の団信だと、
■以下の高度障害状態になった場合
・両眼の視力を全く永久に失ったもの
・言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの
・中枢神経系または精神に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの
・胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの
・両上肢とも、手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
・両下肢とも、足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
・1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
・1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの
という条件に該当した場合にのみ、保険金がおります。
逆にいえば、上記以外の重大疾病にかかって働けなくなっても、死亡しない限りは保険金はおりずに、住宅ローンの返済は残るわけです。
そうなってしまうと、病気で仕事はできず、医療費がかかる上にローンの返済ものしかかってくるため、やむを得ず家を手放したり、債務整理をしたりするケースもあるでしょう。
そこで、日本人がり患しやすい「がん」「急性心筋梗塞」「脳卒中」を発症した際にも、保険金がおりるような特約が用意されているのです。
特約ですから保険料は上がりますが、もし三大疾病にかかって休職や長期療養が必要になったとしても、住宅ローンがゼロになったり、さらに給付金まで受け取れたりする場合もあるので、メリットが大きい特約だといえるでしょう。
1-3.住宅ローンに三大疾病特約をつける人は多い?
では、実際に三大疾病特約をつける人はどれくらいいるのでしょうか?
カーディフ生命保険が2020年に発表した「第2回生活価値観・住まいに関する意識調査」によると、以下のようなデータが出ています。
▼加入している団信の保障の内訳
死亡保障のみ 34.5%/死亡保障+特約 39.1%/どれも契約していない 13.6%・コロナ感染拡大後の住宅購入者:
死亡保障のみ 18.8%/死亡保障+特約 68.1%/どれも契約していない 8.0%
出典:カーディフ生命保険株式会社「第2回生活価値観・住まいに関する意識調査」
これによると、団信で特約をつけているのは全体の39.1%、新型コロナウイルスの感染拡大後は特に急増して、68.1%と7割近い人が特約をつけるようになっています。
この統計での「特約」は三大疾病だけに限りませんが、これを踏まえると、三大疾病特約をつけている人もかなり多いといえそうです。
住宅ローンの三大疾病特約の保障内容
では、住宅ローンの三大疾病特約とは、具体的にはどんな保障内容なのでしょうか?もちろん保険会社によって詳細は異なりますが、一般的には以下のようになっています。
◎がん・急性心筋梗塞・脳卒中と医師から診断された場合、住宅ローンの残債がゼロになる
(住宅ローンの残債と同額の保険金が出て、ローン残債が弁済される)
<保険によっては以下のような保障がつくものも>
〇がんと診断されたら給付金が出る
〇医療、介護、メンタルヘルス、生活全般に関して、電話やメールで専門家のサポートを受けられる
など
三大疾病で保険金がおりる条件
ただし、三大疾病特約は、三大疾病になればかならず住宅ローンがゼロになるわけではありません。保険金が支払われるには、一定の条件を満たしている必要があります。
この条件もまた、保険によって異なりますが、おおむね以下のように定められています。
【がん】
・医師により、悪性新生物=がんの診断確定がなされた場合
※上皮内がんは除く
※保険期間の初日から90日の間(=待機期間)に診断確定がなされた場合は、保険金支払の対象外
【急性心筋梗塞】
・急性心筋梗塞を発病し、初診日から60日以上、労働制限が必要な状態が続いたと医師に診断された場合
または、
・急性心筋梗塞を発病し、その治療を直接の目的として、病院などで手術を受けたとき
【脳卒中】
・脳卒中を発病し、初診日から60日以上、言語障害、運動失調、麻痺などの神経学的症状が続いたと医師に診断された場合
または、
・脳卒中を発病し、その治療を直接の目的として、病院などで手術を受けたとき
また、心筋梗塞と脳卒中では、発症後60日以上は通常の仕事ができない、または後遺症が続くことが、保険金支給の条件になっています。
細かい支払い条件は、団信によって異なりますので、契約時にはよく確認してください。
三大疾病特約が適用されないケース
では、三大疾病特約をつけているにもかかわらず、病気になっても特約が適用されず、保険金が支払われないのはどんな場合が考えられるでしょうか?
たとえば以下のようなケースがあります。
4-1.保険期間開始から90日までの間に、がんの確定診断が出た場合
がんの場合、保険期間開始から90日間は「待機期間」といって、保険金の支払いが免責されます。
その間にがんと診断されても、保険金は支払われません。また、保険期間が始まる以前にがんと診断された場合も同様です。
4-2.がんと診断されたが、待機期間中に診断されたがんの再発・転移だった場合
待機期間内に一度がんと診断されて保険金が支払われず、待機期間後にまたがんの確定診断が出るケースもあります。
ですが、後者のがんが最初のがんの再発、または転移だと診断された場合は、保険金が支払われません。
4-3.急性心筋梗塞の診断を受けてから59日以内に労働制限がなくなった場合
急性心筋梗塞の場合、60日以上労働制限が続くことが保険金支給の条件です。
そのため、もし59日以内に、医師が「労働制限が必要ない」と判断した場合は、保険金は出ません。
ちなみに労働制限とは、「軽い家事などの軽労働や事務などの座業はできるが、それ以外の活動では制限を必要とする状態」と定義している保険会社が多いようです。
4-4.脳卒中の診断を受けてから59日以内に後遺症がなくなった場合
脳卒中の場合は、60日以上後遺症が続いた場合に保険金が受け取れます。反対に、後遺症が59日以内になくなってしまえば、保険金の対象にはなりません。
この後遺症については、おおむね「言語障がい、運動失調、麻痺などの他覚的な神経学的後遺症」と定義されています。
4-5.保険期間開始から1年以内に自殺した場合
三大疾病特約に限らず、一般的に生命保険では、保険期間の開始から1年以内に契約者が自殺した場合は、保険金の支払いが免責されるという契約になっています。
そのため、もし三大疾病になり、悲観して自殺してしまったとしても、それが保障開始日から1年以内であれば、保険金は出ないのです。
4-6.団信の契約の際、健康状態に関して必要な告知をしなかった、または虚偽の告知をしていた場合
団信に入る際には、健康状態に関して自己申告します。過去の傷病歴や、障害などがあれば、この時点で告知しなければなりません。
ですが、「正直に病歴を告知すると、団信に入れないかも…」という不安から、傷病歴を隠したり、嘘の告知をしたりする人もいます。これを「告知義務違反」といいます。
もし病気になって保険金を受け取りたいというときに、告知義務違反があったことがわかると、保険金が支払われない可能性があります。
実際に三大疾病になったからといって、かならず「保険金が受け取れる、住宅ローンがゼロになる」とは限りません。
契約時には、保険金支払いの条件をじっくり読んで、申告忘れや虚偽申告などはくれぐれもしないように注意してください。
また、団信に入れなかった場合の対処法について知りたい方は以下の記事をご覧ください。
参考:健康不安があるときの団信保険について解説している記事はこちら
住宅ローンに三大疾病特約をつける際の金利
住宅ローンに三大疾病特約をつけると、その分保険料が高くなります。一般的には、この保険料は住宅ローンの金利に上乗せされることが多く、おおむねは、
◎三大疾病特約:0.2~0.3%上乗せ
◎がんのみの特約:0.1~0.2%上乗せ
◎八大疾病特約:0.3~0.4%上乗せ
という程度が相場です。
ただし、フラット35の三大疾病特約では、
■初年度特約料:借入金額1,000万円あたり年54,700円(年払い)
■2年目以降の特約料:債務残高の減少に応じて算出
となっています。
三大疾病特約の加入条件
また、三大疾病特約は誰でもつけられるものではなく、加入条件があります。
これも団信によって詳細は異なりますが、一般的には以下の条件を課している場合が多いようです。
◎団体信用生命保険に加入できる
◎住宅ローン借入時の年齢が20歳以上・50歳以下で、満80歳までに完済する
中には、「過去にがんと診断されたことがない」「完済時の年齢が75歳未満」といった条件の団信もありますので、契約前によく確認しましょう。
三大疾病特約をつけるかどうかの判断ポイント
ここまで、三大疾病特約とはどんなものか、詳しく説明してきました。ですが、実際に団信に加入する際に、三大疾病特約をつけるかどうか迷う人は多いでしょう。
そこでこの章では、「三大疾病特約をつけるか・つけないか」を判断する際に何をポイントにすればいいかを挙げていきましょう。
7-1.保険料(金利)
「5.住宅ローンに三大疾病特約をつける際の金利」でも説明したように、三大疾病特約をつけると保険料が上がります。
この保険料は、一般的には住宅ローンの金利に0.2~0.3%程度上乗せされて支払うことが多くなっています。
「0.2~0.3%なら大した金額ではない」と思うかもしれません。ですが、住宅ローンの金利はパーセンテージで考えると少額に見えても、完済までの支払総額を計算すると思いのほか高額になっているものです。
たとえば、フラット35でシミュレーションしてみましょう。
■3大疾病特約つき
■借入金額:3,000万円
■返済期間:35年
■住宅ローン金利:1.36%
■元金均等返済
の場合、住宅ローンの返済総額は3,716万円、特約料の総額はおよそ290万300円にものぼります。
となると、かなり高額に感じますよね。
ただ、特約料の年間支払額は、1年目の16万2,400円から徐々に下がっていき、35年目には2,600円になります。
また、総額を月割にするとわずか691円で、コーヒー1.5杯分程度に収まります。
このように特約料をシミュレーションした上で、追加するメリットはあるかどうか、検討してみましょう。
7-2.すでに加入している生命保険の保障内容
団信に加入する以前に、すでに生命保険や医療保険に加入している人も多いでしょう。
その保障内容を確認して、三大疾病特約と比較することも必要です。
たとえば、加入済みの保険に、
◎三大疾病に関する保障がついている
◎同じく、働けなくなった際の保障がついている
◎その他、保険金でローンの残債を返済できる
といった十分な保障があれば、団信に三大疾病特約を追加しなくていいとも考えられます。
一方で、
■がん保障があるが、診断一時給付金100万~200万円程度と、入院給付金しか保障されない
■死亡時にしか保険金が出ない
などの場合は、団信に三大疾病特約をつけるメリットは大きいでしょう。
7-3.自分の健康状態
また、現在の自分の健康状態も重要です。
生活習慣病のリスクがある、ハードワークで今後健康に影響が出そうであるなど、健康不安がある場合は、万が一に備えて三大疾病特約をつけておく、というのもひとつの選択肢です。
7-4.三大疾病にかかる可能性
さらに、三大疾病にかかる可能性がどの程度あるか、ということも軽視できません。家族や親族にがん、心疾患、脳卒中が多い場合は要注意です。
遺伝の影響も考えられますし、家族の環境や生活習慣が病気のリスクを高めている可能性もあります。
「うちは祖父母も叔父伯母もほとんどががんになった」
「父方の親族に脳卒中で後遺症が残った人が多い」
などという場合は、不安をやわらげるためにも、自分が健康なうちに三大疾病特約を検討してみてもいいでしょう。
三大疾病特約のかわりになる生命保険・医療保険
「7-2.すでに加入している生命保険の保障内容」では、加入済みの生命保険と三大疾病特約を比較するようおすすめしました。
が、もしまだ生命保険に入っていなかったり、入っていてもその保障内容が不十分だったりする場合は、あえて三大疾病特約はつけずに、生命保険のほうで保障を充実させるという方法もあります。
特に団信の三大疾病特約では、同じ心臓や脳の病気でも、狭心症や心不全、脳梗塞や脳出血などは保障されません。これらを広く含んだ医療保険を選ぶといいでしょう。
三大疾病特約の目的は、がん、急性心筋梗塞、脳卒中になった際に、死亡に至らなくても住宅ローンをゼロにして返済の必要をなくすことです。
ただ、医療保険の場合、住宅ローンの残債を全額カバーするのは難しいのが現状です。
そのため、
◎働けなくなったら一定期間の生活費を保障する「就労所得保障」
◎三大疾病以外の心疾患、脳疾患などさまざまな病気を広くカバーするもの
を中心に、保険を見直すのがおすすめです。
まとめ
いかがでしたか?
住宅ローンの三大疾病特約について、よく理解していただけたかと思います。
最後にもう一度、記事の要点を振り返ってみましょう。
◎住宅ローンの三大疾病特約とは、ローン契約者が
・がん
・急性心筋梗塞
・脳卒中
で亡くなるか高度な障害を負った際に、住宅ローンの残債がゼロになる特約
◎住宅ローンに三大疾病特約をつける際には、ローン金利に0.2~0.3%の特約料が上乗せされる
◎三大疾病特約の加入条件は、
・団体信用生命保険に加入できる
・住宅ローン借入時の年齢が20歳以上・50歳以下で、満80歳までに完済する
この記事を踏まえて、あなたが住宅ローン契約の際に三大疾病特約をつけるかどうか、納得いく判断ができるよう願っています。