軽量鉄骨はリノベーションできる?押さえるべきポイントや費用を解説
「軽量鉄骨住宅」とは、使用される鋼材の厚さが6㎜以下の鉄骨造(S造)を指します。
軽量鉄骨はハウスメーカーの戸建て住宅に広く採用されているため、自宅や購入検討中の物件について
リノベーションの可否が気になっている方は多いでしょう。
中には、リフォーム会社に相談したところ、「うちでは軽量鉄骨は扱っていません」と断られるケースもあるかもしれません。
結論から言うと、以下2つのポイントをクリアすれば、軽量鉄骨住宅のリノベーションは可能です。
- 建物の状態
- 軽量鉄骨に対応できるリノベ会社
軽量鉄骨の部材は工場で大量生産されるため、品質が安定している一方で、錆に弱い性質があります。
鋼材の腐食がひどい場合には補強が必要になり、建て替えと変わらない費用がかかってしまうケースも珍しくありません。
また、建築したハウスメーカーによって工法が異なり複雑なため、リノベーションを受けていない会社もあります。
そこでこの記事では、
- 軽量鉄骨住宅リノベーションのチェックポイント
- 軽量鉄骨住宅リノベーションのメリット
- 軽量鉄骨住宅リノベーションのデメリット
- 軽量鉄骨住宅リノベーションにかかる費用
- 軽量鉄骨住宅リノベーションがおすすめな人
について、詳しくご説明します。
最後まで読めば、軽量鉄骨住宅のリノベーションについて、具体的なイメージがわくはずです。
リノベーションをするか否かの意思決定をするためにも、ぜひチェックしてくださいね。
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軽量鉄骨住宅リノベーションを行う際の2つのチェックポイント
冒頭でもお伝えした通り、以下2つのポイントをクリアすれば、軽量鉄骨住宅はリノベーションが可能です。
- 建物の状態
- 軽量鉄骨に対応できるリノベ会社
ただし、どちらかが欠けている場合には、建て替えをした方が賢明だったり、そもそもリノベーションができなかったりと、実行を見直す必要があります。
それぞれのポイントについて、以下で詳しく見ていきましょう。
1-1. 建物の状態
まずは、現在の建物の状態が、リノベーションに適しているかどうかが重要です。
なぜなら、住宅の構造部分が錆び、腐食が激しい場合には、補強工事が必要になるからです。補強工事には費用も時間もかかるため、場合によっては建て替えの方が適しています。
参考として、軽量鉄骨住宅の「耐用年数」と「耐震性」を以下に記載します。
耐用年数とは、減価償却資産(家や車など、月日の経過とともに価値が下がる固定資産)において、本来の目的で使用できる期間のことで、国税局によって定められています。
あくまで目安なので、耐用年数を過ぎたからといって、すぐに住宅が使用できなくなるわけではありません。適切にメンテナンスされた軽量鉄骨住宅なら、70年〜100年もつと言われています。
耐震性については、1981年以降に建てられたかどうかが目安です。
建築基準法に基づき発行された「建築確認通知書」の発行が1981年(昭和56年)6月1日以降であれば、震度7以上の地震にも耐えうる新耐震基準の認可を受けた住宅だと判断できます。
しかし、耐用年数も耐震性も、ひとつの目安に過ぎません。
建物の状態を正確に把握するには、専門家の診断が必要です。
1-1-1. 建物状態の確認にはプロの診断が必要
軽量鉄骨の以下のような特徴を考えると、プロの目で建物を診断してもらうことは欠かせません。
- 通気性が悪く、結露が発生しやすい(錆びの発生につながる)
- 錆びに弱く、内側まで侵食すると強度が落ちる
- 熱に弱く、耐火被覆をしないと火災による倒壊の恐れがある
- 防音性は木造と同程度で、音が響きやすい
軽量鉄骨住宅は、新築時から20年〜30年後がリフォーム適齢期と言われています。そのため、築年数が20年を超えている住宅については、特に診断が必要です。
建物の状態を確認するには、以下の3通りの方法があります。
- 建築したハウスメーカーに相談
- 軽量鉄骨住宅のリノベーション実績がある会社に相談
- 第三者の住宅診断(ホームインスペクション)を受ける
「メーカーやリノベ会社が出す診断結果は、過剰なリフォームを求める内容なのでは?」という不安を感じる場合は、利害関係のない第三者による診断が最も信頼できると感じるかもしれません。
第三者に住宅診断を依頼する場合の費用相場は、1回あたり4〜6万円程度です。
一方で、ハウスメーカーやリノベ会社は、調査費を無料にするサービスなどを行っており、魅力的です。
どちらをとるかは各々の判断ですが、ひとつの安心材料として、以下いずれかの資格を有しているか否かをチェックすると良いでしょう。
- 建築士会インスペクター:都道府県建築士会の認定資格
- JSHI公認ホームインスペクター:日本インスペクターズ協会の認定資格
- 既存住宅状況調査技術者:国土交通省による認定講習修了後の考査に合格した建築士
1-2. 軽量鉄骨に対応できるリノベ会社
軽量鉄骨住宅をリノベーションするには、実績があるリノベ会社を見つける必要があります。
軽量鉄骨住宅は、ハウスメーカーによって工法が異なります。
会社ごとに独自の特徴があり、構造の安全保証も難しいため、リノベーションを受けていない会社も少なくありません。ネット上には、「建築したハウスメーカーでなければリノベーションはできない」という専門家の声も見受けられます。
確かに、自社の工法を熟知したハウスメーカーならば安心です。
しかし、大手ハウスメーカーのリノベーションは高額になる傾向があり、コストを抑えたい方には向いていません。
また、必ずしもハウスメーカーでなければリノベーションできないという訳ではありません。
そこで、おすすめしたいのは、ハウスメーカーによる軽量鉄骨住宅のリノベーション実績が豊富な会社。
ハウスメーカー独自の工法を理解していれば、他社であっても対応は可能です。
リノベ会社を選ぶ際には、事前にホームページ上や、電話での問い合わせで、軽量鉄骨のリフォーム事例を確認しておきましょう。
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軽量鉄骨住宅リノベーションのメリット
軽量鉄骨住宅のリノベーションには、以下3つのメリットがあります。
- デザイン性がアップ
- 工事がスピーディー
- 住宅の寿命が延びる
以下で詳しくご説明します。
2-1. デザイン性がアップ
ハウスメーカーが建てる軽量鉄骨住宅は、新築の段階では標準的、画一的なデザインです。
しかし、リノベーションによって、壁、床、天井の素材からドアの取っ手まで、自分好みのデザインに仕上げることができます。
また、軽量鉄骨住宅には、開放感のある間取りにリノベーションしやすい特徴があります。
なぜなら、補強材として壁中に対角線に張られている筋交い(ブレース)を、あえて露わにすることで、視界が開けるからです。
一般的には、このブレースによって軽量鉄骨は間取りの変更がしづらいと言われています。しかし、ノウハウのあるリノベ会社であれば、構造を活用して希望に沿った間取りを実現できます。
2-2. 工事がスピーディー
軽量鉄骨のリノベーションは、以下2つの理由から工事がスピーディーに進められます。
- 部材の品質が安定している
- 軽量で加工しやすい
先述の通り、軽量鉄骨の部材は工場で生産されるため、品質が安定しています。
例えば木材なら、水分の含有量や保存状態によって大きく曲がったり、乾燥でスカスカになったりと品質が変わる可能性があります。
これに対し軽量鉄骨は、出荷後も品質が変わらないため、現場で大工職人が素材を選り分ける手間もありません。
また、軽量で加工がしやすいので、作業にかかる時間も大幅に短縮。
工期が短縮されると人件費も削減されるため、結果的に低コストにもつながります。
2-3. 住宅の寿命が延びる
軽量鉄骨住宅のリノベーションを行うことで、住宅の性能を高め、寿命を伸ばすことができます。
住宅の性能には、以下のような要素があります。
- 断熱性
- 通気性
- 防音性
- 耐震性
- 防火性
元々、軽量鉄骨は木造と比較して通気性や防火性が低いというデメリットがあります。防音性も木造と同じ程度なので、足音などが響きやすい造りです。
しかし、リノベーションによって弱い部分を補い、性能をアップさせれば、築70年〜100年でも快適に暮らせる優れた材質です。
特に、スケルトンリフォームならマイナス部分を払拭できるため、検討の余地があります。
軽量鉄骨住宅リノベーションのデメリット
軽量鉄骨住宅のリノベーションには、以下3つのデメリットがあります。
- ハウスメーカー独自の工法が複雑
- 間取り変更に制限がある
- 築年数が古いと補強費が高額
以下で詳しく見ていきましょう。
3-1. ハウスメーカー独自の工法が複雑
「1-2. 軽量鉄骨に対応できるリノベ会社」でもご説明した通り、軽量鉄骨住宅は、ハウスメーカー独自の工法で建てられています。
会社ごとに独自の特徴があり、以下のような理由でリノベーションを断る会社も少なくありません。
- プランニングが複雑
- 構造の安全保証が難しい
しかし、以下のいずれかに依頼することで、軽量鉄骨のリノベーションを行うことができます。
- 建築を行ったハウスメーカー
- 軽量鉄骨のリフォーム実績あり、建築知識が豊富な会社
コストを抑えるためには、軽量鉄骨のリフォーム実績が豊富な会社の選択をおすすめします。
リノベ会社探しで疲弊しないためにも、まずは実績の有無を確認するようにしましょう。
3-2. 間取り変更に制限がある
軽量鉄骨住宅は、間取りの変更に制限がある場合があります。
なぜなら、部屋の仕切りを取り払う場合などに、壁中に対角線に張られている筋交い(ブレース)が邪魔になるからです。
また、以下の理由から、木造と比べて減築・増築の難易度が非常に高いという側面もあります。
- 壁自体が構造の一部となっているため、壁の位置を変更しづらい
- 重量バランスが崩れる危険性がある
しかし、軽量鉄骨住宅のリノベーション実績が豊富な会社であれば、構造を生かした間取りの提案をしてくれるはずです。
まずは希望の間取りをリフォーム会社に相談してみましょう。
3-3. 築年数が古いと補強費が高額
築年数が古く、劣化(特に、鋼材の腐食)が進んでいる軽量鉄骨住宅の場合は、補修費用が膨らむため、総額が建て替えと変わらないケースがあります。
全面的にリノベーションを行う場合に必要となる費用の相場は以下の通りです。
- マンション :総額300〜1,500万程度(10〜50万円/坪)
- 一戸建て :総額450~2,500万円程度(10〜50万円/坪)
一方、建て替えには、以下の費用がかかります。
- 建築:60〜90万円/坪
- 設計:建築費用の約10%〜20%
- 解体・撤去:2.5~5.5万円/坪
- その他、仮住まい、引っ越し、登記、儀式代(地鎮祭)など
40坪を想定すると3,000万円以上かかるため、建て替えの方が高く感じます。
しかし、耐用年数が長くなるため、家を引き継いで長く使用する場合には、結果的に安くつくケースもあるのです。
リノベーションか建て替えかを決める際には、今後のライフプランも踏まえて考えるようにしましょう。
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軽量鉄骨住宅のリノベーションにかかる費用
リノベーションにおいて、費用は大きな判断基準になります。
先述の通り、軽量鉄骨住宅を全面的にリノベーションする場合の相場は、以下の通りです。
マンション :総額300〜1,500万程度
一戸建て :総額450~2,500万円程度
施工範囲や資材のグレード、デザイン性によって、価格帯には大きく幅があります。
ここでは、以下5つの施工について、内容や費用の目安をご紹介します。
- 断熱
- 防音
- 耐震補強
- 減築
- スケルトンリフォーム
以下で詳しく見ていきましょう。
4-1. 断熱
断熱リフォームにかける総額は、20万〜120万円が一般的です。
ただし、窓だけの取り替えで20万〜30万円におさまるものから、住宅全体に断熱材を貼って300万〜500万円かかるものまで、施工範囲や材質によって価格には幅があります。
断熱リフォームの内容は、大きく分けて「断熱塗料の塗布」、「断熱材の設置」、「内窓の設置」の3種類です。それぞれにかかる費用は以下を参考にしてください。
軽量鉄骨住宅の断熱性能は、木造よりも低いと言われがちですが、一概にそうではありません。軽量鉄骨か否かに関わらず、木造でも鉄筋コンクリートでも、断熱材が適切に使われているかどうかが、断熱性を左右します。
しかし古い鉄骨住宅の場合は、断熱材を入れずに建築されている可能性もあるため、「夏は暑く、冬は寒い」状態かもしれません。
リフォーム会社と話し合い、住宅に合った工法や素材を決定しましょう。
4-1-1. 断熱塗料の塗布
断熱塗料は塗る場所によって若干価格が異なります。
施工費用の相場は、以下の通りです。
- 外壁:2~5千円/㎡
- 屋根:3~6千円/㎡
断熱塗料を塗るには、以下のような手順を踏みます。
- 下地処理
洗浄により、はがれかけている古い塗膜や汚れ、カビを取り除く - 養生
シートやテープを使用して、塗装箇所以外をマスキングする。 - 下塗り
下地素材の塗装ムラを防いだり、塗装面と上塗り塗料との密着を良くしたりする目的で、
下塗り用の塗料を塗る。 - 上塗り
下塗りが十分に乾いてから、断熱塗料を塗る。2回塗るのが一般的
以上のような工程を経て、工期は1〜4週間程度かかります。
断熱塗料を塗ることで、外からの熱を防ぎ、室内の温度を快適に保つことができます。また、結露の発生も抑え、鉄骨が錆びる原因を解消する効果もあります。
その他にも、塗装を行うことで、外見が美しく見えるのも大きなメリットでしょう。
一度塗った耐熱塗料の耐久性は、約15年です。
4-1-2. 断熱材の設置
断熱材を設置する場合も、場所によって価格が変わります。
施工費用の相場は、以下の通りです。
壁: 4千~3万円/㎡(工期:2週間~1ヶ月)
天井: 4~8千円/㎡ (工期:2~4日)
床下: 4~8千円/㎡ (工期:1~2日)
また、断熱材の施工方法によっても、価格は変動します。
施工方法は、以下の2通りです。
建物全体を覆う「外断熱」は、壁をすべて撤去してから行う「スケルトンリフォーム」になる可能性があり、コストがかかります。また、作業の進行スピードが天候に左右されやすいため、工期が長くなる可能性もあります。
そのため、リフォームでは内側から施工する「内断熱」を行うケースが多いです。
使用する断熱材には、以下のような種類があります。
- 鉱物繊維系
ロックウール、グラスウールなど。
鉱物やガラスを繊維状に加工して作られており、低コスト。
(防音性・吸音性にも優れている) - 木質繊維系
セルロースファイバー、ウールプレスなど。
自然素材で調湿性がある。
(防音性と吸音性にも優れている) - 発泡プラスチック系
硬質ウレタンフォーム、ポリスチレンフォームなど。
他の断熱材と比較して、断熱性能・防湿性が高い。 - 発泡ウレタンフォームの吹き付け
ウレタンの原液をスプレーガンで発泡させ、壁に吹き付ける施工方法。
梁などの凹凸がある場所にも隙間なく吹き付けることができ、断熱性が高い。
それぞれの断熱材ごとに、特性があります。
リフォーム会社とよく相談し、お住まいの地域の気温とコストに見合った断熱材を選びましょう。
4-1-3. 内窓の設置
内窓とは、現在ある窓の内側に、もうひとつ新たに窓を設置することです。「二重サッシ」「インナーサッシ」「二重窓」と呼ばれることもあります
内窓の設置費用の相場は、以下の通りです。
- 1ヶ所あたり: 8~15万円
- 掃き出し窓: 10~30万円
価格が高い「掃き出し窓」とは、上の写真のように、窓の下部分が床に接するスライド型で開く窓のことです。
また、使用するガラスによっても価格は変動します。
内窓に使用されるガラスには、以下のような種類があります。
- 単層ガラス
一枚で作られている普通のガラス。
最も低コストで、内窓に広く利用されている。
断熱効果は限定的。 - 複層ガラス
ガラスとガラスの間に空気層があり、断熱効果が高い。
(防音性能は低いため、防音目的には向いていない) - 真空ガラス
ガラスとガラスの間に、熱を通しにくい「真空層」がある。
断熱性が高く、結露も抑制する。
(防音効果も高い)
「部屋のあたたかい空気の58%は窓から逃げる」と言われる程、窓は熱損失における重要箇所です。
現状の住宅の断熱性能を確認した上で、適した素材を選ぶようにしましょう。
4-2. 防音
防音リフォームにかける総額は、3万〜40万円程度が一般的です。
ただし、防音リフォームにかかる費用は、求める遮音レベルによって変動します。
換気口を防音仕様にするだけなら3万円程度で済みますが、すべての壁を防音リフォームしようとすると、6畳の部屋で20〜30万円ほどかかります。
防音リフォームの内容は、大きく分けて「防音材を設置」、「内窓、防音ガラスの設置」、「換気口を防音仕様に変更」の3通りです。それぞれにかかる費用は以下を参考にしてください。
軽量鉄骨は防音性能が低く、木造と同じくらい音が響きやすいです。
しかし、全面的に防音しようとすると、断熱材の設置と同じようにスケルトンリフォームが必要になり、大きなコストがかかります。
そのため、「防ぎたい音」を明確にした上で、リフォーム箇所を絞る必要があります。
一般的に、防ぎたい音の種類と防音を行う箇所は以下の通りです。
リフォーム会社と相談し、防音施工の範囲や素材を決めていきましょう。
4-2-1. 防音材の設置
防音材の設置には、1〜4万円/㎡程度の費用がかかります。
設置箇所は、断熱材と同じく以下の3つです。
- 壁
- 天井
- 床下
「2-1-2. 断熱材の設置」でもご紹介したように、グラスウールやウールプレスなど、繊維系の断熱材は防音性・吸音性の面でも優れており、断熱と防音を両立することができます。
防音材には以下の3種類があり、何をどれ位使用するかによって価格が変動します。
- 吸音材
グラスウールやウレタンスポンジなど。
音を吸い込んで小さくする材質。 - 遮音材
防音マットや遮音シートなど。
音を透過せずに跳ね返す材質。 - 防振材
防振マットや音パットなど。
発生した振動を隣の部屋や階下に伝えない材質。
例えば、壁の内側に吸音材と遮音シートを入れる作業には、1万円/㎡ほどかかります。これに加えて、壁紙の張り直しに、500〜1,200円/㎡程度の費用が必要です。
4-2-2. 内窓・防音ガラスの設置
内窓や防音ガラスの設置の費用目安は、以下の通りです。
- 内窓: 8~15万円(掃き出し窓なら10~30万円)
- 防音ガラス:5~15万円
従来の窓ガラスの内側に、もう一枚内窓を取り付けることにより気密性が上がり、音の伝達に必要な空気を遮断します。
「2-1-3. 内窓の設置」でもご紹介した通り、断熱性能もアップできるため、おすすめの対策です。
一方、防音ガラスの遮音性は二重窓に及びませんが、二重窓と併用することで防音効果が高まります。
また、ガラスの種類によって防音性の高さが異なるため、リフォーム会社に求める遮音レベルを伝えた上で、適したガラスを選びましょう。
4-2-3. 換気口を防音仕様に変更
換気口を防音仕様にするには、1か所あたり3万〜6万円程度かかります。
換気口の防音対策は主に以下3通りで、何をどこまでやるかで価格に差が出ます。
- 屋外のカバー交換
- 屋内の換気口交換
- 吸音材を入れる
例えば、上の写真のような換気口のベントキャップ(雨や虫を避ける屋外用のフード)を吸音性能のあるものに交換する場合、費用は1か所あたりおよそ1.5万円です。
また、換気口内にポリウレタン製の防音パイプを詰める場合は、1か所あたり2千円程度。DIYも可能です。
DIYを取り入れることでコストを抑えられますが、経験がなく不安な方は、無理せずリフォーム会社に相談しましょう。
4-3. 耐震補強
耐震補強にかかる費用の目安は、以下の通りです。
- 耐震診断:20〜40万円
- 耐震補強:25〜200万円
1981年6月以前に建てられた住宅なら、あらかじめ耐震診断を受けておく必要があります。
4-3-1. 耐震診断
耐震診断には、20〜40万円ほどかかるのが一般的です。
そもそも耐震診断とは、1981年6月の建築基準法改正以前に建てられた建物について、新耐震基準を満たす耐震性があるかを評価するものです。
新耐震基準と旧耐震基準の違いは、以下を参考にしてください。
ただし、新耐震基準法はあくまでも”耐震性の最低ライン”です。地震が起こる可能性が高い地域では、新耐震基準以降に建てられた物件であっても、耐震性を確認して対策を打っておく必要があります。
耐震診断では、専門家によって以下の調査が行われます。
- 予備調査
現地調査の前に、関連資料から建物の延床面積、築年数、構造種別など、概要を把握する。 - 現地調査
直接現地に赴き、以下のような項目をチェックする。
- ひび割れ
- 雨漏りによるシミ
- 建物の傾斜
- ドアの開け閉めの不具合
- 壁やベランダの状況
- コンクリートの厚さ
- 柱や梁の太さ、大きさ、長さが設計図と一致するか
建物の構造図などがない場合は、図面の復元や作成のために現地調査の確認項目が増えます。結果的に、費用も高くなってしまいます。
4-3-2. 耐震補強
軽量鉄骨の耐震性を補強するための改修費用は、25〜200万円が目安です。
住宅の状態や工事内容によって、価格は大きく変動します。
一般的に、築年数が10年増加すると、耐震補強にかかる費用は約30〜40万円ずつ増加すると言われています。これは、築年数の経過により劣化が進むことや、現行の耐震基準に合わせるためにより多くの工事が必要になるからです。
築20年以上の耐震補強の相場は、以下を参考にしてください。
- 築20〜29年:約130万
- 築30〜39年:約170万
- 築40年以上:約200万
軽量鉄骨の耐震性を上げる工事内容には、以下3通りがあります。
- 耐震補強
構造などを補強して建物の耐力を向上させる。
鉄筋コンクリートの壁の設置、鋼板や補強用の炭素繊維シートの使用など、アプローチ方法は様々。 - 制震補強
建物に設置したダンバー(制震装置)が、地震エネルギーを吸収する。
補強する箇所が少ないため、低コスト。 - 免震補強
地盤と建物の間の免震装置が、地盤の揺れを3分の1〜5分の1まで軽減。
軟弱な地盤では設置が難しく、建物のまわりに一定のスペースが必要。
建物の状態によっては、部分的な補強で費用を抑えることも可能です。その場合には、必ず専門家と相談してプランニングを行いましょう。
例えば、地震に耐える壁が少ない場合に、壁に筋交いを設置する費用の相場は、25万円です。これによって耐震性が上がり、倒壊などの危険を防ぐことができます。
4-4. 減築・増築
軽量鉄骨住宅では、減築による建物の部分的な取り壊しや、増築による床面積の拡大は、非常に困難です。
理由としては、以下の2点が挙げられます。
- 壁自体が構造の一部となっているため、壁の位置を変更しづらい
- 重量バランスが崩れる危険性がある
ただし、構造に影響を与えない内容であれば、減築や増築も可能です。
例えば、一戸建て平屋住宅を増築し、窓枠を扉に交換して出入りするような工事なら、構造に影響はありません。
この内容で増築する場合、施工費用は、4畳の広さで約200万円が相場です。
4-5. スケルトンリフォーム
スケルトンリフォームとは、壁、床、天井をすべて取り払い、「骨組み(=スケルトン)」の状態にしてから行う大がかりなリフォーム方法です。「フルリノベーション」と言う場合には、一般的にスケルトンリフォームを意味しています。
スケルトンリフォームの実施内容と費用相場は、以下を参考にしてください。
詳しくご説明します。
4-5-1. 骨組み以外の解体・撤去
スケルトンリフォームを行うには、まず最初に骨組み以外を解体・撤去して、骨組みのみの状態にする必要があります。
軽量鉄骨の解体・撤去には、1坪あたりおよそ6〜7万円がかかります。
これにより、基礎や骨組みの状態が目視で診断でき、錆止めや補強で住宅の寿命を伸ばせます。
注意点は、基本的に住みながらの施工はできないということです。
仮住まいへ移動する場合、荷物の運搬費や宿泊費・住宅費も必要になります。
4-5-2. 劣化部分の補強
築年数に関わらず、スケルトンリフォームを行う場合には、以下のような補強工事もまとめて行った方が効率的です。
- 断熱リフォーム
- 防音リフォーム
- 耐震補強
劣化部分の補強には、1坪あたり30万円ほどの費用がかかります。
補強工事の時期をまとめることで、その都度発生するはずだった解体費が削減されます。
また、補強工事を同時に行うことで、断熱と防音両方に効果のある素材を使用するなど、低コストで複数の効果を得られます。
4-5-3. リフォーム
間取りやデザインの変更など、軽量鉄骨住宅のリフォームの費用相場は、以下の通りです。
- 内装のみ:800~1,250万円
- 外装込み:1.100~1,600万円
外壁の劣化がない場合、内装のみスケルトンリフォームをすることができます。
外壁の解体は行いませんが、骨組みは見える状態になるので、基礎部分の診断・補強も可能です。
一方、住宅全体が老朽化している場合は、外壁も含めてスケルトンリフォームを行います。
劣化が激しく補強費用が高額だと、建て替えの方が適している場合もあります。
専門家に建物の状態を診断してもらった上で、判断するようにしましょう。
軽量鉄骨住宅リノベーションがおすすめな人
ここまで説明した内容を踏まえると、軽量鉄骨住宅のリノベーションは、以下3つの条件を満たしている方におすすめです。
低コストで、自分好みのデザインの住宅にリノベーションしたい方にとって、軽量鉄骨は最適です。
ハウスメーカーが工場生産している安定した品質の部材によって、コストを押さえた上で、デザイン性を高めることができます。
一方、軽量鉄骨住宅は経年によって鋼材が腐食し、強度が落ちる恐れがあります。
子どもや孫の世代に住宅を引き継ぎ、長く使用する予定がある場合には、建て替えを選択した方が結果的には安く、間取りの自由度も高まります。
>>関連記事:【2024年最新】リノベーション会社のおすすめ27選!各社の特徴と選び方のポイントを解説 #リノベーション会社
まとめ
最後に、この記事の内容をまとめましょう。
◎「軽量鉄骨住宅」とは、使用される鋼材の厚さが6㎜以下の鉄骨造(S造)
◎軽量鉄骨住宅リノベーションを行う際の2つのチェックポイント
- 建物の状態
- 軽量鉄骨に対応できるリノベ会社
◎リノベ前には、以下の3通りの方法で建物の状態をチェック
- 建築したハウスメーカーに相談
- 軽量鉄骨住宅のリノベーション実績がある会社に相談
- 第三者の住宅診断(ホームインスペクション)を受ける
◎適切にメンテナンスされた軽量鉄骨住宅なら、70年〜100年もつ
◎軽量鉄骨住宅リノベーションの3つのメリット
- デザイン性がアップ
- 工事がスピーディー
- 住宅の寿命が延びる
◎軽量鉄骨住宅リノベーションの3つのデメリット
- ハウスメーカー独自の工法が複雑
- 間取り変更に制限がある
- 築年数が古いと補強費が高額
◎軽量鉄骨住宅を全面的にリノベーションする場合の相場
- マンション :総額300〜1,500万程度
- 一戸建て :総額450~2,500万円程度
◎軽量鉄骨住宅リノベーションがおすすめな人の条件
- 低コストでリノベーションしたい
- ハウスメーカーの標準的なデザインを自分好みに変えたい
- 次の世代に住宅を引き継ぐ予定はない
以上です。
この記事があなたのリノベーションに役立つことを願っています。
資料ダウンロード(無料)
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編集後記
わが家も軽量鉄骨住宅。リノベーションをするなら建築したハウスメーカーに依頼するしかないと思っていましたが、対応してくれるリノベ会社もあるんですね。コスト面も気になるので、リノベーションを検討する際はハウスメーカーによる軽量鉄骨住宅のリノベーション実績が豊富な会社も検討してみたいと思います。
どんなリノベーション会社があるのか気になる方は「リノベーション会社27選!業者選びのポイント9つとハズレを見分ける方法も紹介」の記事も参考にしてください。
軽量鉄骨の住宅は、制約やデメリットもあるため他の選択肢も比較したうえで検討することをおすすめします。RC造やSRC造のマンションとの違いを比較した関連記事もあわせてお読みください。
軽量鉄骨はコストを抑えれるメリットもありつつ専門性を持った業者が必要となったり、築年数が古い場合には補強費が余計に加わったりと条件や制限が多いのが特徴です。今後のライフプランも踏まえ最適な中古物件選びを進めましょう。