吹き抜けリノベーションを成功させるには?費用相場・2階を吹き抜けにする注意点を解説

2階や天井部分を取り払い、1階リビングを大空間に変える「吹き抜けリノベーション」。開放感が大きくアップし、採光やデザイン性の向上にもつながる人気のリフォームですが、構造の制約・費用・工事手順・注意点を理解しないまま進めると思わぬトラブルを招くこともあります。
- どの壁や柱を抜けるのか
- 費用の目安はどれくらいか
- 吹き抜け特有のデメリットへの対策(寒さ・音・光など)
- そもそも自宅は吹き抜けにできるのか?
といった疑問や不安を持つ方が非常に多いのが実情です。
本記事では、リノベーションで吹き抜けにするメリット・デメリット、費用相場・工事の流れ・注意点を専門家の視点でわかりやすくまとめました。
「吹き抜けにできるか知りたい」「費用と注意点を知りたい」という方は、ぜひ参考にしてください。
リノベ費用の決定版!リノベにかかるお金について総まとめした記事はこちらから
リノベーションで吹き抜けにするメリット
吹き抜けは、1階と2階の上下2層以上を縦につなげた空間のことを指します。リノベーションで吹き抜けする主なメリットは以下の3つです。

それぞれ解説していきます。
開放感のある空間になる
吹き抜けにすることで上の階の部屋の分まで空間が広がることから、開放感のある住まいを手に入れることができます。
例えば、吹き抜けがない場合、6畳の部屋だけの空間だったのが、上の階の6畳の部屋を吹き抜けにすることで、12畳分の空間になります。6畳が12畳の空間に広がるので、もとの部屋より開放感を感じますよね。
このように、吹き抜けにすることで、縦の空間を広くすることが可能です。
採光しやすい

採光しやすいというのも吹き抜けにするメリットです。
吹き抜けがない場合、1階の部屋は1階の壁に付いている窓からしか採光できません。その場合、周りがすべて住宅などの建物で囲まれていたりすると、光が入りにくく家の中が暗くなってしまいます。また、雪が降る地域では、雪が積もって一階部分の窓はすべて覆われて家の中に光が入らないということもあります。
このように、家の中に光が取り込めるかどうかは、周りの環境に大きく左右されますが、吹き抜けにすることで、1階だけでなく2階の窓や天窓から採光できるので家全体を明るくすることができます。
また、周りを住宅に覆われているなど採光が難しい環境の方は、下の写真のように天窓を設置することで、光を取り入れやすくなり、より明るくすることができます。
特徴的でデザイン性がある
特徴的でデザイン性が高くなるというのも吹き抜けにするメリットです。
昔の日本家屋には吹き抜けはほとんど見られないので、吹き抜けにすることでモダンでオシャレな雰囲気にすることができます。
▼リビングにスケルトン階段を設置する最近人気のリビング階段を設置した構造にすると、より一層オシャレになります。そしてそのリビング階段を「スケルトン階段」にすることで、デザイン性も格段にアップさせることができます。

スケルトン階段とは、上の写真のような階段のことで、踏板と支えとなる骨組みだけの階段のことです。
一般的な階段のように、横の壁や段と段の間の板がなくオープンなので、スケルトン階段(オープン階段)と呼ばれています。リビング階段にすると、家族と顔を合わせる時間が増えるという利点もあります。
このように吹き抜けにリノベーションすると、特徴的でデザイン性を高くできるというメリットもあります。
リノベーションで吹き抜けにするデメリットと対策
吹き抜けにリノベーションすることはメリットもたくさんありますが、一方でデメリットもあります。メリットとデメリットの両面を考えて、吹き抜けにするかどうか検討すると良いでしょう。
吹き抜けにするデメリットは以下の4つです。

冷暖房効率が下がる

吹き抜けにすることで、冷暖房の効率が下がるデメリットがあります。
吹き抜けにすると、空間が広くなるためその分冷暖房の効率が悪くなり光熱費が高くなる傾向があります。夏場は太陽の光を浴びて熱くなった屋根からの熱が伝わって暑くなりやすく、冬は暖房やストーブの暖かい空気が上の方に溜まりやすくなるためです。
このように吹き抜けのデメリットとして冷暖房の効率が下がり光熱費が上がるというデメリットがあります。
冷暖房効率が下がる場合の対策


吹き抜けによる冷暖房の効率が下がる場合、シーリングファンを取り付けることが有効です。シーリングファンとは、天井に取り付ける扇風機のことで、空気を撹拌させ室内の温度を一定にしてくれる効果が得られます。
寒い・暑い

吹き抜けにすると冬は寒く夏は暑い室内になりやすいです。理由は、空間が広くなることで窓や外壁と接触する面が広くなるためです。寒さや暑さが起こるのは、断熱性を重視されていない日本の住宅の造りが原因でもあります。
実は北欧エリアは極寒の地域ですが、吹き抜けの住宅が多いのです。壁や屋根、窓の断熱性能を高めた造りにすれば、吹き抜けにしても暑さや寒さの影響を受けづらくなります。
もちろん、断熱性が重視されていない日本家屋をただ吹き抜けにリノベーションしただけでは、冬は寒く夏は暑いということになってしまいます。特に築40年以上経っている住宅は無断熱という住宅も少なくありませんので、リノベーションする際には、断熱工事をセットで考えておきましょう。
寒い・暑いときの対策

寒さ・暑さの対策としては、断熱性を高めることが最善の方法です。

この図は、一般社団法人 住宅生産団体連合会から発行されている「快適・安心なすまい なるほど省エネ住宅」のデータをもとに作成しています。
この図のように、住まいには熱の出入りがしやすい部分というのがあります。その熱の出入りが大きい部分の断熱を強化することで、家全体の断熱性を高めることができるのです。
具体的には、壁と屋根には断熱材をしっかりと入れて、窓は内窓を後付けするか、樹脂サッシやペアガラスに交換するなどして断熱性能を高めましょう。
断熱性を高めれば、吹き抜けにしても寒い・暑いということがなくなりますよ。
掃除や電球の交換が大変

吹き抜けにすると掃除や電球の交換が大変というデメリットもあります。
吹き抜けにすると天井が高くなり、電球が切れた時の交換や掃除をしようとしても、はしごをかけても届かないような場所にありますし、毎回会社の方を呼んで電球の交換や掃除をしてもらうのも大変ですよね。
掃除や電球の交換への対策

対策としては、電動昇降器具を取り付けて、天井に付いている照明やシーリングライトを降ろすことです。
この電動昇降器具をつけることで、手元のスイッチで天井から照明が降りてくるので簡単に掃除や電球の交換をすることができます。
この電動昇降器具をつける場合は、電動昇降器具に対応している照明やシーリングファンを買うようにしましょう。また、昇降可能な高さも確認して購入しましょう。

出典:オーデリック
こちらの電動昇降装置は、最大重量13㎏まで取り付けられシーリングファンにも対応しています。昇降可能高さも5mあるので、一般的な2階建ての天井に取り付けることができます。
音が響く

音が響くというのも吹き抜けにするデメリットのひとつです。
吹き抜けになっている間取りでは1階の音が2階に響きやすくなる場合があります。例えば、1階のリビングで見ているテレビの音や、キッチンで食器を洗っている音が、2階で勉強している子ども部屋まで聞こえて勉強に集中できない、眠れないということがあります。
音が響くことへの対策

対策としては、書斎や寝室、子ども部屋など音が響いて欲しくない部屋の壁を防音処理し、ドアも防音タイプのドアにする方法があります。
吹き抜けの間取りは、1階の音が2階に響くことをあらかじめ想定して、静かにしたい部屋は対策を検討しておきましょう。
リノベーションで吹き抜けにする費用相場
リノベーションで吹き抜けにしようと考えたとき、やはり気になるのが費用ですよね。ここではリノベーションで吹き抜けをつくる際の費用の相場をお話しします。

吹き抜けにリノベーションする費用の相場は、150万円〜300万円ほどです。
施工面積が広い、吹き抜けにすることで建物の補強が必要な場合は、さらに費用がかかることもあります。
上記の費用はあくまで目安で、詳しい費用は、住まいの状況により変わるため、リノベーション会社に実際に家を見てもらって正確な見積もりを出してもらいましょう。
また、天井を吹き抜けにすると音が響いたり、暑さや寒さを感じやすくなるため、防音工事や断熱工事など、追加の工事が必要な場合も多くあります。そういった追加工事をする場合は、リノベーション費用に加えて、100万円ほど追加でかかると考えておきましょう。
特に築40年以上経っている住宅は無断熱という住宅も少なくありませんので、断熱工事をセットで考えておきましょう。
その他、別途費用は以下のようなものがあります。
| 工事する場所 | 工事内容と費用 |
| 窓を断熱にする | 窓は、住まいの中でも一番熱の出入りが大きい部分ですので、窓の断熱性を高めることが非常に重要になってきます。 窓を断熱する工事には、 ・断熱性の高い窓ガラスに交換する ・内窓を設置する の2つの方法があります。 断熱性の高い窓ガラスに変更する場合、費用は約10万円~になります。内窓を設置する場合、約8万円~になります。どちらの工事も、窓の大きさや |
| 壁を防音にする | 壁を防音にリノベーションする費用の相場は、約1万円〜1万2000円/㎡です。 費用の中には、壁を解体し、遮音シート・吸音材・石膏ボードを入れ、壁紙を張り替える費用が含まれています。天井を吹き抜けにリノベーションする工事に含まれている壁の場合は、費用をもう少し抑えることができます。 |
| 外壁を断熱塗装する | 断熱塗装をする場合、吹き抜けリノベーションで内装仕上げ工事をした後に行います。費用の相場は約8万円〜30万円です。 |
吹き抜けにリノベーションする方法と注意点
吹き抜けにリノベーションする方法と注意点をまとめてご紹介します。
2階を吹き抜けにする方法
2階を吹き抜けにする際、一般的に以下の順番で進められます。
- 構造上、床が抜けるかを確認する
- 現地調査・構造チェック
- 工事範囲の確定
- 解体(天井・2階の床)
- 補強工事・断熱工事
- 内装の仕上げ
- 照明・設備の設置
2階の床を撤去して吹き抜け空間をつくる工事は、“構造上その部分の床が取り除ける住宅かどうか” が最重要ポイント。構造のチェックや床を抜いたぶん、建物の強度を補うための補強も必要です。
注意点:吹き抜けにできる物件かどうかを必ず確認

吹き抜けリノベーションに取り掛かる際に、まず初めに「吹き抜けにできる物件かどうか」を必ず確認する必要があります。
なぜなら、吹き抜けにリノベーションできる物件とできない物件があるからです。
リノベーションで吹き抜けにすると、梁や柱や床を一部取り除くことになるので、建物の耐震強度が大きく変わってしまいます。そのため、後から吹き抜けを作っても耐震性に問題がない建物は吹き抜けにすることができますし、吹き抜けを作ると耐震性が弱くなる場合は、吹き抜けを作ることができなくなります。
よくインターネットなどで、
- 木造軸組工法の建物だと吹き抜けにできる
- ツーバイフォー工法の建物は吹き抜けにできない
- 鉄筋コンクリート造の建物は吹き抜けにできない
といった情報や、会社によっては建築工法で吹き抜けにできるできないを判断する会社もいますが、必ずしも正しいとは言えません。
基本的には、建物の建築工法によって吹き抜けできるかどうかが分けられるのではなく、建物の構造や状態によって判断されます。
そのため、梁や柱や床を取り除いても家の強度に問題がないかどうか、梁や柱の状態はどうかという観点から、吹き抜けにしても家の強度に問題がなければ吹き抜けにリノベーションすることができます。
吹き抜けにリノベーションしたいと考えている方は、必ず専門的な目線で吹き抜けにできるかどうかの詳細を判断してもらいましょう。
吹き抜けにできる物件かどうか判断するには?
吹き抜けにできるかどうか判断してもらう方法として、リノベーション会社に事前の現地調査を依頼しましょう。
会社の選び方については次章でお話ししていますが、2~3社に声をかけてみることをおすすめします。その理由は先ほどお話ししたように、会社によって吹き抜けへのリノベーションができるかできないかの判断基準が異なっているからです。
複数社に相談してみて一番信頼のできる会社に依頼すると良いでしょう。
現地調査を依頼した際の費用は、原則として無料の場合が多いです。これは、現地調査を依頼して契約を結ばない場合も同様です。
しかし、特殊な工具での調査や図面を引いている場合は費用が発生するということもありますし、遠方からくる場合に出張費を請求される場合もあります。
現地調査を依頼する際は、あらかじめ費用の有無を確認してから依頼しましょう。
吹き抜けリノベーションの会社選びのポイント
吹き抜けにリノベーションする際は、依頼する会社選びも重要になってきます。ここでは、吹き抜けにリノベーションする際の会社選びのポイントについてお話ししていきますね。
吹き抜けにリノベーションする際の会社選びのポイントは以下の2つです。

それぞれ解説していきます。
事前の建物調査をしっかりとしてくれるか
吹き抜けにリノベーションする際の会社選びとして、一番に「建物調査をしっかりとしてくれるかどうか」というポイントがあります。
なぜなら、吹き抜けへリノベーションするには梁や柱や床を一部取り除くことになるので、建物の耐震強度が大きく変わってしまうからです。そのため、梁や床を取り除いても家の強度に問題がないか確認してもらう必要があります。
例えば、前章でもお話したように、建物の建築工法を聞いただけで「ツーバイフォー工法だから吹き抜けはできない」「木造軸組工法だから吹き抜けにできる」と決めてしまう会社もいます。しかし、建物の構造だけでは吹き抜けにできるかどうかは判断できないのです。
吹き抜けリノベーションは、建物の耐震強度が大きく変わってしまう大きなリノベーションです。したがって、必ず専門的な目線で事前の調査をしてくれる会社にしましょう。
建物調査をしてくれるか確認する方法
事前に建物調査をしてくれるかどうかの確認方法として以下の3つがあります。

気軽に確認できる方法として、まずはインターネットで会社のサイトを見てみるのが良いでしょう。
事前の建物調査をしっかりとしている会社の多くは、インターネットの自社サイトで事前検査について書かれてあります。
しかし、中にはサイトに書かれていない会社もあるので、電話などで確認してみましょう。
デザイン性が高く提案力があるか
デザイン性が高く、提案力のある会社にすることもポイントです。
吹き抜けへリノベーションする場合、取り除けない梁があったり、壁を壊してみると構造上絶対に必要な筋交いがあったりする場合があります。
このように構造上、取り除けない梁や筋交いが発生した場合に、
- 梁をアクセントにする
- 取り除けない柱と筋交いをカウンターに埋め込み、カウンターキッチンの一部にする
- インテリアにうまく溶け込ませる
とうまく活かすこともできます。
このように吹き抜けのリノベーションでは、取り除くことができない柱や筋交いなどが多く残る場合もあります。その場合、その家の構造を活かして作り上げていくデザイン性や提案力のある会社を選ぶと良いでしょう。
デザイン性が高く提案力のある会社の確認方法
デザイン性が高く提案力のある会社かどうかの確認方法として以下の2つがあります。

それぞれ解説していきます。
▼施工事例を見る
まず、リノベーションを依頼しようと検討している会社の自社サイトを見てみて、施工事例が載っている場合は見てみましょう。
事例を見てみると、デザイン性の高さやいろいろなスタイルに対応してくれるのかなどを確認することができ、自分の好みのリノベーションができるかイメージできますよね。
施工事例を見てみて、さまざまなリノベーション事例がある会社はいろいろな提案をしてくれますし、事例のデザインが気に入れば、理想のリノベーションができる会社であると言えます。
▼電話や直接話を聞きに行って確認する
次に電話や直接話を聞きに行って確認する方法です。
自社サイトがない・サイトに事例が載っていない場合は、直接話を聞きに行って事例を見せてもらったり、吹き抜けのリノベーションについて相談をして、いろいろな提案をしてくれそうか確認してみると良いでしょう。
リノベーションで吹き抜けにするのがおすすめの人

吹き抜けにリノベーションするのがおすすめの人について解説していきます。
コミュニケーションを取りたいファミリー層
家族でコミュニケーションを取りたい人は吹き抜けはおすすめです。
吹き抜けにすると、上の階と下の階に分かれていても会話ができるのでコミュニケーションが取りやすくなります。
子どもが小さいうちは、家事をしながらも子どもの気配が感じられると安心しますし、子どもが大きくなってからは繋がりのある空間があることで、気軽に話しかけやすくなりますね。
光や風通しを確保したい人
光や風通しを確保したい人にも吹き抜けはおすすめです。
住居の向きや近隣の建物環境によって、日当たりが悪かったり風通しが悪い住宅もありますよね。日当たりが悪いと、夏は湿気でカビが生えやすかったり、冬は寒かったりとデメリットが多いものです。また、暗い部屋で過ごすことや、風通しが悪い環境は、家にも人にもよい影響を与えません。
吹き抜けにリノベーションすると、2階の窓からも光を取り入れられ家全体が明るくなりますし、風通しも良くなります。
デザイン性を高くしたい人
デザイン性を求める人にも吹き抜けはおすすめです。
吹き抜けをつくると開放感が生まれるため、ゆとりのあるオシャレな雰囲気になります。吹き抜けにもいろいろな種類がありデザインも豊富で、インターネットで吹き抜けのお家などを見てみると、またイメージが膨らみますよ。
リノベ費用を算出して施工事例を見てみる
ゼロリノベでは業界では新しい「定額制」でのリノベーションを行っています。下記はリノベーション費用のシミュレーターです。リノベーション予定の平米数から、リノベーション費用のおおよその金額を算出します。また、その金額とマッチする施工事例を紹介しているので、ぜひお試しください!
まとめ
吹き抜けにリノベーションすると、デザイン性の高い空間になるだけでなく、開放的で明るく風通しのよい空間になります。
その一方で、冬の寒さや夏の暑さが気になったり・掃除や電球の交換が大変・音が2階に響いてうるさいといったデメリットが生じることも…。しかし、事前にデメリットを考えてリノベーションすることで、対策することが可能です。
吹き抜けを検討している方は、デメリットを理解し、そのための対策まで踏まえたリノベーションをすることをおすすめします。
また、吹き抜けを作ると耐震性に問題があると判断される住宅の場合は、吹き抜けにすることができません。吹き抜けにできるかできないかは、一概にはっきりと言えませんので、リノベーション会社など専門的な知識を持った方にしっかりと事前調査をしてもらいましょう。
この記事をもとにあなたの理想の吹き抜けリノベーションができることを願っています。







