“DIYの夢” を載せたワゴンで、自由をガソリンに走り続ける [自由に住みたい大人たち Vol.6 chikoさん]

住まいや暮らしに求める自由の形は人それぞれ。DIYを通して、暮らしにも社会課題にも役立つ、さまざまなアイデアを発信しているchikoさんが見つけた “自由” とは?
PROFILE●chiko
DIYクリエイター。「WAGON WORKS」主宰。都市部のアトリエと自然に囲まれた自宅、2軒の戸建てでDIYを行い、さまざまなアイデアをSNSで発信している。空き家のDIYリノベプロデュースやインスタ活用セミナー、行政と連携したワークショップなど、幅広く活躍
嫌いな家を自分で変えた喜びがDIYのきっかけ
「常に家のどこかを変えている」と笑って話すのは、DIYクリエイターのchikoさん。
案内してくれた自宅は基礎と柱と屋根以外、全てDIYと言っても過言ではない。棚のデザイン、床の素材、コンセントの色まで自分好みに変えてきた。アトリエの奥にあるサンルーム風の作業場も「目隠しで板を張っただけの壁だから、ちょっと荒めの仕上がりだけれど、それも味。隙間が空いてきていても気にしません」

DIYを始めたきっかけは26年前にさかのぼる。「もともと、この家が嫌いだったんです。結婚と同時に買った中古の戸建てでしたが、住んでみたら冬の室内がめちゃくちゃ寒い。床下に潜って調べると断熱材が入ってないし、窓もシングルガラスで。リフォームするにもお金がないから、自分たちでなんとかしようと始めたのが最初のDIYでした」
床に断熱材と無垢材のフローリングを張ったり、好みの枠につくった内窓を入れたりと、温熱環境を上げながらインテリアも思うままに仕上げていった。「そしたらちょっとカッコよくなって。しかもそれを “自分でできる” ってことに感動したんです。これができるなら、家具や雑貨も買わないで、自分でつくれそう!と、楽しくなってのめり込んでいきました」


自分のスキルを誰かのために
子どもが小さいうちは緩やかに、就学して手が離れるにつれ本格的に、DIYを続けていったchikoさん。作品を誰かに見て欲しくて始めたSNSだったが、つくり方を知りたいという声が多く寄せられた。「中には私みたいに、住んでいる家が好きじゃないとか、不具合があってもそこに住むしかないとかいう人もたくさんいたんです。それで、 “自分で住まいを快適にできる” ことを知ってほしくて、初心者でもできるつくり方をブログで投稿し始めました」
ほどなくトップブロガーとして注目され、自著を出版するまでに。それを機に、DIYを仕事にしようと決意する。「最初はSNSしかできませんでしたが、ライターの仕事をしたい、テレビに出たいという夢が叶うたび、名刺の裏に記載する仕事内容を一つずつ増やしていきました」。屋号はワゴンワークス。たくさんの木材と自分のスキルをワゴンに乗せて走っていきたい、という願いが込められている。

古い物を生まれ変わらせるメリット
自宅の問題解決からスタートした試みは、彼女の生き方を大きく変えた。そこに気負いや計算はない。「ただ好きなことに無我夢中で、気づいたらこの景色が見えていた感じです」。DIYの道を走り続け、さまざまな取り組みを行ってきたchikoさんは、今また新たな景色を目にしている。
「DIYで何か社会の役に立てないかなと考えた時、空き家とはとても相性がいいことに気がつきました。今後も空き家は増え続けるので、古い家でもリノベーションでいくらでも素敵に変わること、空き家をやりたいことの発信地にもできるといった、リノベの方法や使い方のアイデアを広める活動もしています」。さらにその延長線上として、地球環境まで意識するように。

「持続可能な環境づくりとして、森林保全に関わる発信もしていますが、皆さんにとっては身近なことでもいいと思うんです。例えば使わなくなった洋服や家具、雑貨のリメイクでもいい。物を大事に使うだけ、ゴミを減らすだけ、環境のことを意識するだけでもいい。そういうちょっとしたことでも、一人ひとりが考えれば地球にとってメリットがあると思うから。空き瓶を間接照明にするなどの簡単でコストをかけないリメイク作品も発信しているのは、そういう願いもあるんです」

住まいの正解は、自分たちが心地いいこと
今や社会課題にも向き合うchikoさんだが、それもやりたいことをしてきた結果。自他ともに認める根っからの自由人なのだそう。「子どもたちに、お母さんは少し不自由を感じた方がいいって言われるくらい、ずっと自由に生きてきました(笑)。家族にそうさせてもらっているなって感謝しかありませんね」。そんな彼女がDIYにのめり込んだのも、自由を生み出す手段だからだ。

「家のリノベーションとなると大掛かりにとらえる人が多くいますが、基本的に “失敗がない”。柱や配線を切ったら家が崩れるけれど、それ以外のことならいくらでもリカバリー可能です。色も素材もデザインもやり直せるし、そもそも人に変だと言われても、自分と家族がよければオッケーじゃないですか!」。家はかくあるべきという情報に縛られがちだが、「自分でルールをつくるとしんどくなりますよね」とchikoさん。「自分たちにとって心地いいと思うことが “正解” ですから。枠を広げると、もっと自由に、ラクになれますよ」

その時々で空間も使い方も思いのままに
常識や人の目さえ気にしなければ、確かにわが家は自由の宝庫。「リビングにコレを置いたらダメ、寝る場所をつくったらダメなんて全然考えないで、空間を自由に変えてきたし、使ってきました。子どもが小さい頃、LDKから様子が見える遊び場だったウッドデッキは、作業場に。自宅と別の都市部にある実家は、今、アトリエにしています。2つの家を行き来する暮らしになりましたが、仕事の幅が広がりました。そうやって家や暮らしを好きに変えていけることが、私にとっては欠かせない自由だなと思います」

「もう十分に自由なんですけれど」と前置きしながら、今さらにこの先の自由について考え中なのだと笑う。「自然に囲まれた自宅と都市部のアトリエ、両方をこのまま維持するのかどうかを迷いつつ、さらに別の視点で、森の中の山小屋を買ってリノベしながら自給自足で暮らすのもいいなあって思い始めて。それで最近、登山を始めました(笑)。やりたいことがいろいろあるんですよね」
迷いすら楽しみ尽くす彼女の手にかかれば、空間や使い方はもとより、住まう場所も暮らし方も変幻自在。自由をガソリンにして、ワゴンは森の中へ進んでいくのかもしれない。

構成・取材・文/樋口由香里 撮影/古末拓也
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