【中古マンションの安全性】築年数と耐震基準だけではない3つの見極め方
地震大国日本において、住まいの購入と自身は切っても切り離せない関係です。
では、中古マンションの購入時は耐震性についてどんなことに気をつけたらいいのでしょうか。イメージとして、「築年数が30年、40年のマンションは何だか危ない気がする」と感じている方も多いかもしれません。
ところが、実際の地震被害やマンションの耐震性能について考えてみると、全く違う事実が見えてきます。
今回は、安心して中古マンションを購入するための耐震に関する3つの真実をお教えします。
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一級建築士
西村 一宏
東洋大学ライフデザイン学部講師。リノベーション・オブ・ザ・イヤーを受賞した設計・施工部門の責任者としてゼロリノベ建築を担う。
そもそもマンションは地震で倒壊しない可能性が高い
A子:
中古マンションを購入する前に、耐震性についていろいろ調べてるんだけど…。全国で大地震が頻発してることを考えると、やっぱり地震に強い建物じゃないとって思うのよね。築年数が数十年のマンションより、築浅の方が安心なのかな…?
アドバイザー:
築浅のマンションならもちろん最新の耐震性能を兼ね備えている物件もありますが、だからといって築年数が経ているから耐震性能が低い、ということではありませんよ。そもそもマンションは地震が起きても、致命的な被害が出るケースは稀なんです。
A子:
えっ、そうなの?
アドバイザー:
東日本大震災時の実際のデータを見てみましょう。不動産データを専門で扱う「東京カンテイ」が出している下記資料(PDF)をご覧ください。新耐震基準と旧耐震基準の被害状況の比較がされています。
参考:「東日本大震災 宮城県マンション被害状況報告(PDF)」
A子:
へー、そんなデータがあるんですね。
アドバイザー:
クリック先の資料の【図1】を見てください。
A子:
はい。これですね!
アドバイザー:
大破、中破、小破…というのはそれぞれ損害レベルを示しています。大破は建て替えが必要な致命的被害、中破は大規模な補強・補修が必要な被害、小破はタイル剥離やひび割れ等相当な補修が必要な被害、軽微は外観上はほとんど損傷なし、または極めて軽微な被害です。
A子:
大破は…ほぼなし!倒壊するような被害が出たマンションはないに等しかったんだ。
アドバイザー:
東京カンテイの調査によれば、被害があったマンションの中でも新耐震と旧耐震では大きな差は見られないという結果でした。
A子:
ということは、築年数は本当に関係ないってこと?旧耐震より新耐震の方が絶対に耐震性能はいいはずなのに…。
アドバイザー:
不思議に思いますよね。では、中古マンションの耐震性について、実際のところはどうなの?…という部分の3つの真実をご紹介します。
参考:「東日本大震災 宮城県マンション被害状況報告(PDF)」
参考:「東日本大震災の被災状況について(PDF)」
【真実1】築年数の古い建物が本当に地震災害に弱いとは限らない
アドバイザー:
そもそも、A子さんはどうして築30年以上のマンションは危ないのでは、と思いますか?
A子:
うーん…30年も経ったら建物ってぼろぼろに劣化しそうというか。
アドバイザー:
なるほど。実際、RC造(コンクリート造)の建物の場合、耐用年数は47年です。
A子:
やっぱり!
アドバイザー:
ただ、耐用年数は単に税法上で価値がなくなる年数に過ぎず、実際に利用できるかどうかは関係がありません。物理的な耐久年数は100年以上と言われています。
国土交通省がまとめた資料「RC造(コンクリート造)の寿命に係る既往の研究例」のなかで紹介されている資料にも、十分に100年以上の耐久性があると考えられています。
鉄筋コンクリート造建物の物理的寿命を117年と推定(飯塚裕「建物の維持管理」鹿島出版会)
A子:
100年!?築30年なら70年は問題なく住めるってこと!?
アドバイザー:
さらには、建物寿命を延ばす技術の発展も目覚ましいです。実際に、築80年の鉄筋コンクリート造を改修した結果、寿命は60年程度プラスされ、築140年まで伸長すると認定されたケースも出始めています。
A子:
確かに技術は発展するものですもんね。
アドバイザー:
そもそも分譲マンションのストック総数は平成29年時点で644.1万戸で、このうち築30年以上のマンションは184.9万戸です。今後はさらに増えていくでしょう。
築年数を経たマンションがこれだけの戸数あるにも関わらず、マンションの地震被害で倒壊は皆無だったのです。築年数を経ているからといってすぐに倒壊するとは到底考えられませんよね。
A子:
全体の3分の1近いマンションが築30年以上ってことなら、その全部が危ない!って確かにありえないわね。
アドバイザー:
多くの人が気にする新耐震か旧耐震かという点にも触れておきましょう。現在の新耐震基準が定められたのは1981年だとご存知ですか?
A子:
えっ、30年以上も前なの!?
アドバイザー:
着工日が新耐震基準の施行後であれば新耐震基準のマンションですから、築30年以上でも新耐震の物件はたくさんあるんです。築年数だけにとらわれる必要は全くないとわかりますね。
【真実2】「旧耐震=危険」「新耐震=安全」と考えるのは早計!
A子:
1981年以前に建てられたマンションは旧耐震…メモメモ。ところで、旧耐震と新耐震で実際の被害に差がなくても、やっぱり新耐震の方が安全であることは間違いないですよね?
アドバイザー:
そうとも限らないんです。確かに旧耐震よりも、新耐震の方が建築基準は厳しくなっています。
大きくは、
- 旧耐震→震度5程度の地震でも建物が倒壊しないこと
- 新耐震→震度6強から7に達する地震でも倒壊しないこと
という基準が定められています。
A子:
うんうん。そうじゃないと新耐震の意味がないものね。
アドバイザー:
実際、そのように建築されてはいますが、実は新耐震でも旧耐震基準より耐震性が弱くなっているケースがあるんです。
A子:
えっ!?どうして!?
アドバイザー:
建物自体の管理状況が悪いことがあります。耐震性をはじめとしたマンションの耐久性は、修繕計画に基づいた大規模修繕をきちんと実施しているかどうか、加えて日々のメンテナンスもきちんと行われているかどうかが大きく関わります。しっかり管理されていれば、それだけ建物自体の寿命も延びるんです。人間の体と一緒ですね。
A子:
管理ってそんなに大事なんだ!
アドバイザー:
はい。新耐震だからと築浅の物件を購入しても、その後数十年にわたって管理がずさんで耐震性が落ちてしまうことがありますし、逆に旧耐震でも耐震補強がなされていたり、管理状況が良好で耐震性が高い物件もあります。この2つを比べた場合は、後者の方が安全性は高いでしょう。
A子:
旧耐震だから危険、新耐震は安心、と盲信するのはよくないのね。管理状況とあわせて考えてみます!
【真実3】ハザードマップだけで判断しない
アドバイザー:
最後にご紹介したいのは、ハザードマップについてです。
A子:
テレビで聞いたことある!自分の住みたいと思ってるエリアに被害予測が出ていたら、その地域のマンションはやめた方がいいのよね。
アドバイザー:
ハザードマップで確認できるのは、洪水、内水、高潮、津波、土砂災害、火山、地震防災危険、液状化などの情報です。地域によって公開されている内容は異なりますが、わざわざ危険なエリアを好んで選ぶ必要はありませんし、調べておいて損はありません。
国土交通省のポータルサイトから各自治体のハザードマップへ簡単にたどり着けますよ。
A子:
わ、便利!
アドバイザー:
ただし、地震に関しては地盤が弱い地域だからと言って、マンションが倒壊する可能性が高いというわけではないんです。マンションは固い地盤まで杭を深く埋め込んで建設するので、表面的な地盤はあまり影響しないからです。
A子:
ふむふむ。
アドバイザー:
ですから、ハザードマップに縛られすぎないよう、参考として見ることをおすすめします。あ、避難経路などは必ず確認しておいてくださいね。
A子:
はーい、他の被害予測とあわせて判断します!
建物の特徴に合わせて3種類の耐震構造がある
日本は地震大国であるがゆえに、地震対策の技術開発が日進月歩で進んできました。マンションの耐震構造には「耐震・制震・免震」の3つがあり、それぞれマンションの特性(立地や形など)によって適した耐震構造が採用されています。ただし、これらの構造的な工夫が機能するためには日々のメンテナンスが大切です。
コントロールできない地震災害に経済リスクをかけすぎない
アドバイザー:
以上の3つの真実の内容をきちんと踏まえた上なら、安全性の高い中古マンションかどうかもきちんと判断できます。特に大切なのは、物件のメンテナンス状況をしっかり確認すること。この点を覚えてください。築20年以上のマンションなら、一度は大規模修繕が行われているはずです。
A子:
築年数に縛られたら物件の選択肢も減っちゃいそうだし、知れてよかったです!
アドバイザー:
最後にお伝えしたいアドバイスは、地震は予想がつかないものだということです。現在、いろいろな大地震の予測がありますよね?
A子:
確かに、南海トラフ地震や、関東に直下型の大地震が来るとか。
アドバイザー:
何十年も前から予測されていて現実には起こっていない予測もあれば、予想もしていなかった大地震が起きることもあります。いつ、どこに、どんな形で災害が来るかは、誰にもわからないのです。
自分でコントロールできない部分に過敏になりすぎて、その対策にお金を費やしすぎないよう気をつけてほしいと思います。
お金は自分でコントロールできますから、経済的なリスクは絶対に背負わないように。あくまで自分の予算と相談して、耐震性についても考えてくださいね。
まとめ
コンクリート造のマンションの場合、適切な管理・修繕が行われていれば、寿命は100年以上と言われます。
さらに、旧耐震基準の物件であっても管理状況や対策が十分であれば問題なく住むことができる一方、管理がずさんだと新耐震基準でも十分な耐久性を保持していない場合があります。
「築年数を経ている・旧耐震基準である=危険である」とは必ずしも言えないので、物件ごとの管理状況をもとに耐震性を判断することが大切です。