一級建築士が告白!中古マンションリノベーションのデメリット7つ
中古マンションのリノベーション、メリットばかりが表に出ているけどデメリットはないの?と不安に思っていませんか?
リノベーションのデメリットは、先に知っておかないと大きなトラブルや不満を残した住まいづくりになってしまうこともあります。必ずチェックしておきましょう。
そこで、累計1000件以上リノベーションに携わってきた一級建築士として、リノベーションをリフォームと比較してどんなところにデメリットがあるのか、またどんな解決策やポイント、準備が必要になるのか、3つのカテゴリに分けてまとめました。
この記事を読んでデメリットを明確にし、向いていそうかどうかの参考にして頂ければと思います。
いつか住まいの購入を考えているのであれば、ぜひこの記事を保存してご活用ください。
期間(住むまでに5〜6ヶ月程度かかる)
リノベーションは引っ越しをして住み始めるまで通常5〜6ヶ月程度かかります。小規模リフォームなどと比べると、住み始めるまでに時間がかります。規模の大きい工事であり、設計担当がついてオリジナルの間取りとデザイン設計をするとなると、これぐらいの期間がどうしても必要になってしまいます。
また、期間についても明確には決まらず、スタート時点では引っ越し日を決めることもできません。そのため、入園、入学などタイミングを合わせたい場合は、リノベーションのスタートを早めておくことが必要です。期間は必要ですが、スケジュールのイメージさえつかめていれば、大きな障害とはならないでしょう。
中古マンションを探して購入する場合は、人によりますが2〜3ヶ月程度で購入されることが多いため、リノベーションの期間も含めると、「1年後に引っ越しをする」とイメージしておくとある程度の余裕があるかと思います。また、打合せ期間短縮のコツは次章でお伝えします。
より詳しく知りたい方は、リノベーションの流れについて解説しているこちらの記事をご確認ください。
また、注意点として「すぐに住みたい」「別に住めればこだわりはない」「普通程度にキレイならいい」と考える方にとっては設備の交換などの小規模リフォームが向いていると言えます。
設計打合せ短縮のコツ
設計打合せ短縮のコツは、自分たちが何がしたいのかという価値観を事前に整理しておくことです。設計期間が長引いてしまいがちな要素としては、
・やりたいことが二転三転し打合せ回数が増える
・やりたいことを盛り込みすぎて予算オーバーとなり、調整に時間がかかる
といったものです。事前に実現したいことをリストアップしておくことで、打合せがスムーズに進み期間も短縮されます。
お金についてのデメリット3つ
次に、お金関係についてのデメリットをお伝えしていきます。
・引っ越すまで家賃との二重支払いになる
・リフォームより費用がかかる
・追加の費用がかかることもある
それぞれ見ていきましょう。
2-1.引っ越すまで家賃との二重支払いになる
中古マンションを購入してリノベーションをする場合、物件が引き渡されるタイミングで設計が始まり、工事と進んでいきます。物件が引き渡されるとローン返済もスタートします。
しかし、まだ引っ越しができないため、今の賃貸料も5〜6ヶ月程度の間支払うことになります。一定期間続くため、相応に生活費を抑える必要があるかもしれません。ポイントは次章でご説明します。
一定期間ローン支払いを抑えることが可能
弊社もそうですが、一部の不動産仲介を行う会社では銀行と交渉して、6ヶ月程度の間はローンの金利分の支払いだけ(月2〜3万円程度)におさめるよう働きかけることができます。そうすることで、家賃との二重支払い期間も不安が少なく生活することができます。
ワンストップのリノベーション会社は期間短縮の効果あり
不動産仲介とリノベーション設計・工事を全て自社で行うワンストップの会社に依頼することで、物件購入からリノベーションまでの流れが一社で済み、社内で連携ができるため、二重支払いの期間を最低限の期間にするのに効果があります。
より詳しくは、リノベーションの流れについて解説しているこちらの記事をご確認ください。
2-2.中古マンションを買ってリフォームするより費用がかかる
リノベーションはリフォームよりも大きな金額が必要になります。主な理由は以下の二点になります。
・設計担当が自分たちのために専属でつく
・工事規模が大きい(床下の配管や電気、壁、設備など全て新品)
リフォーム会社や工務店などの場合、設計担当はおらず、営業マンか現場で動く職人と簡単な工事の段取りを話すことなります。しかし、リノベーションの場合は、どんな家にしたいかをヒアリングしてプランニングをしながら進めていくためコストがかかります。
過去に中古マンションをリノベーションした際の流れ
リフォームの場合、部屋全てを床下まで剥がして配管や電気設備を入れ替えるという規模の工事はほとんどありません。しかし、リノベーションの場合は、コンクリートの箱の状態にまで解体し、全てを新品にして作り変えます。そのため、リフォームと比べると費用がかかります。
リノベーション費用を抑えるには
リノベーションの予算をおさえる一番のポイントは、こだわる場所とこだわらない場所をはっきり分けることです。
下の表はこだわるポイントをはっきりさせている例を表しています。
例えば、キッチンにこだわったなら、お風呂は最低限のシンプルなものを選ぶ。など優先順位を持っておきましょう。
そうすることで、当初の予算をオーバーすることを防ぐこともできます。また、定額制や平米単価を出しているリノベーション会社に依頼するのも予算管理をする上で手間がかかりません。
もしも住んでいるマンションを手放さなければならなくなったときでも、リノベーションに1,000万円かけたからといって、売値が1,000万円上がるわけではありません。
不動産の値段のつき方は、エリアや立地、空間の広さや築年数に紐づいています。
そのため、内装がいくら綺麗でも値段に対しての影響はありません。ただし、賃貸に出すということであれば、おしゃれな部屋に住みたいという方にはメリットとなりうるので、相場と同じ賃料で出せば貸し手がすぐに見つかるというケースは考えられます。
2-3.追加の費用がかかることもある
設計プランが完了し、それをもとに工事に入ってみて追加の費用がかかることもあります。マンションの完成当時の図面と実際の現場にズレがある場合があるためです。
また、当時の図面がおおざっぱだと、解体してみないと確認できない部分があり、この場合もプランの微修正や変更により、追加の費用が発生する可能性があります。
具体例としては、断熱材が入ってない物件だったため入れなければならない。といったことは過去にありました。ゼロリノベの過去の事例では、追加費用が発生しても、およそ30~50万程度でおさまることが多いです。
仲介会社が他にあり、設計のみをゼロリノベで行なった事例で、400万円以上の追加費用が工事で発生したケースがあります。
追加費用の内容は物件にアスベストが使われているのを発見したため、その除去に費用が発生したというものです。
これは物件の仲介会社とリノベーション会社が別々だったことが原因です。通常の、仲介と設計をワンストップで行うゼロリノベでは起きたことはありません。
手間についてのデメリット3つ
次自分たち側の手間に関するデメリットは3つです。
・打ち合わせの手間がかかる(3ヶ月)
・工事中も現場に数回行く必要がある
・工事が始まってからプラン変更になる場合もある
それぞれについて見ていきましょう。
3-1.打ち合わせの手間がかかる
設計プランはおおよそ3ヶ月程度かかります。リフォームの場合は商品が決まっており、指定した設備を設置したり、2部屋を1つにつなげるのみだったりするため、打合せ内容は設計担当はつかず、営業マンとの工事の段取りなどで済みます。
しかし、リノベーションの場合はヒアリングから始まり、プランの提案、それについての精査、見積もりなどのステップがあるため打合せの手間はどうしてもかかってしまいます。
この手間を楽しいと思う方も非常に多いですが、手間と感じる場合はリフォームを検討してもいいかもしれません。
設計を効率よく進めるためにできること
効率よく設計を進めるためには事例をたくさん見て、自分の要望の優先順位を出しておくことです。設計にかかる時間はお客様によって異なります。
上記の表②③が一番差が生まれるセクションです。最後まで迷う方もいれば、スムーズに進む方もいます。
これは、個人の性格もありますが、自分たちの価値観を整理しながら、事例を見ておけば、設計担当との打合せもある程度スムーズにいきます。
事例はデザイン+間取りを見るべき
リノベーション事例はデザインのテイストを見るのももちろんですが、間取りがどうなっているかを見るのも非常に大切です。
というのも、本当に気持ちいい家の暮らしは間取りによって決まるからです。賃貸に暮らしている方のよくある不満としては、
・個室がいらない(個室が足りない)
・キッチンが暗い
・収納が足りない
・玄関が狭い
といったものがあります。これらを解決するのは、見た目のデザインではなく間取りです。次章で間取りの見方をご紹介します。ぜひ参考にしてください。
3-2.生活をイメージする間取りの見方
ここでは間取りのどこを見ればいいのかを実際の事例を使ってご紹介します。
3-2-1.よく使うキッチンを中心にイメージしてみる
こちらの事例は、キッチンが部屋の中心にあり、壁も少ないため、ダイニングやリビングとのコミュニケーションが簡単にとれる間取りとなっています。キッチンに立った時にどの向きになるか、また、冷蔵庫やパントリーへの出入りはラクか、などキッチンなどのよく使う場所を中心として間取りを見てみると、自分たちがマネしたい間取りを見つけやすくなります。
3-2-2.生活感を隠しやすいかどうか
この事例はベッドルームだけが奥にあり、そこに全ての生活感が出そうなものを集められるような間取りとなっています。それ以外の空間はモノを少なくし、生活感が出ないように管理しています。生活感が出そうなものを隠しておけるかなど、その後のキレイさを保てそうかどうかをイメージすると、収納の位置などが決まってきます。
3-3.工事中も現場に数回行く必要がある
工事が始まっても何度か現地に行く必要があります。最低でも、スタート時と工事中、引渡しで3回程度は足を運ぶ必要があります。
スタート時は解体工事が終わり全てを取り除いたという証明や現場の状況説明のために行きます。途中では、壁や天井の色のチェック、細かいところでは、トイレットペーパーホルダーの高さや位置を便座に座りながら確認するということもあります。
引渡し時は、最終確認として、汚れや傷がないかのチェックをします。これらは現地に行かなくてはなかなか確認することができないもののため、何度か現地に行く必要があります。
工事現場を確認する場合は設計担当に連絡をしてからにしましょう。職人さんは訪れる人がいるときはケガをしないよう資材や工具を片付けたりと事前の準備が必要です。また、今日進めなければならない分の仕事というものもあります。急な来訪で工事をストップさせないよう、設計担当者に連絡をしましょう。
3-4.工事が始まってからプラン変更になる場合もある
お金のデメリットでお伝えした通り、解体してみて初めてわかることも多いため、プランが一部変更になることがあります。お風呂の位置が動いたり、想定よりも寝室が狭くなったりすることもあります。もちろん、プランよりも広く確保できる場合もありますし、想定よりもプランのクオリティが上がることもあります。
プランの変更はリノベーションをする場合にはつきものとなります。どのリノベーション会社に相談しても、「解体して見ての確認ですね」という説明が入るかと思います。そのため、そういったこともありうるということを想定して臨むべき部分です。
想定しておくことで、設計担当との打合せもスムーズになり、工事期間への影響を最小限にとどめることができます。今までの経験上では工事期間への影響は一週間程度、費用が発生する場合、50万円程度を想定しておけばほぼ対応できるかと思います。
リノベーションを成功させるためにはお客様の協力が必要不可欠です。残念ながら、お金を払ったら完璧なものが完成するというものではありません。
リノベーションに関する出版でも有名なちきりんさんもリノベーションは共同プロジェクト型ということを書籍内でおっしゃっています。
徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと
これは、完成品を売るお仕事をされている方にはピンときにくいお話かもしれません。例えばスポーツジムで言うと、お金を払ったから筋肉が手に入るというものではなく、自分自身でも動く必要があると言うことに近いかもしれません。
もちろん、実際にアイデアを出し動くのは設計担当ですが、その提案に対し、どれが良いか、また、予算を超えている場合は、切り捨てる要素をどれにするかなど、お客様側が頭に汗をかく必要のあるタイミングは出てきます。そういった意味で、よいリノベーションを作り上げていくには共同作業というイメージを持つことが重要だと考えています。
ご夫婦の中で要望がズレたまま打合せに参加され、プランが決まるまでに大幅な時間がかかるといったことは稀に起こります。
事例をたくさん見てストックし、ご夫婦の場合は価値観をすり合わせながら、どんな暮らしがしたいのかを設計担当にお伝えください。
より詳しくは、【買うべき!リノベ会社の感想】徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のことをご確認ください。
まとめ
中古マンションのリノベーションのデメリットはいかがだったでしょうか。
デメリットを理解した上で、リノベーションに自分が向いていると判断したらリノベーションはあなたの住まい選びにとって良い選択となるでしょう。
もし、リノベーションをやってみたい!と思っているのであれば、リノベーション会社について解説しているこちらの記事もあわせてご確認ください。
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