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中古マンションを値引きできた!不動産投資家の交渉術とセリフ集

売主状況を確認して値引き可能かどうかを判断する

「値引きして安く物件を買えればいいな…」
「最大いくらまで値引きできるのだろう?」

マンションは高い買い物ですので、できるだけコストを抑えて買いたいですよね。そのため、「言うだけならタダ!」と気軽に値引き交渉をする人もいます。

実際、不動産投資家として値引き交渉を数多く経験し、また不動産仲介会社の経営者としても、上手に値引き交渉を進めて「値引き価格」で家を買えた人をたくさん見てきました。

一方で、気軽に値引き交渉したために、売主を怒らせてしまうケースも少なくありません。

そうなってしまったら、値引き交渉どころではありません。そもそも、本当に欲しかった物件を購入できなくなります。「あのとき普通に買っていれば…」と後悔する人もいました。

いったいどこに分岐点があるのでしょうか?
そこで本日は、「値引き交渉できる状況」と「値引き可能額」を見極める方法をご紹介します。

ぜひ、7分ほどお読みください。後悔しないための値引き交渉のコツをお伝えします。また、本記事では「超実践!値引き交渉するときのセリフ集」も用意しています。
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この記事の監修者

宅地建物取引士/元銀行員
鰭沼 悟

宅地建物取引士、不動産投資家歴15年、元銀行員。不動産仲介からリノベーション設計・施工をワンストップで提供する株式会社grooveagent(ゼロリノベ)代表取締役。

目次

中古マンションの値引き交渉をやみくもに行うのは要注意

「値引き交渉するだけならお金はかからない」という感覚で、理由なく中古マンションを値切るのは賢明ではありません。

なぜなら「売る・売らない」の決定権は売主側が持っているからです。買主側が欲しいと言っても、売主側が売らないと言えば買うことはできません。

もし、値引き交渉によって売主側に「横柄な人だな」と嫌われてしまったら、”本当に欲しい物件”を買えなくなる可能性も大いにあります。

そうなってしまったら、人生という大きな枠で考えたとき「あの物件を普通に購入すべきだった…」と後悔するのではないでしょうか。

1-1 値引き交渉のコツは「自分が売る側だったらどう思うか?」

例えば、

  • 自分だったら…高く売りたいので最初は相場価格より高めで出してみよう
  • 自分だったら…ローン残債があれば残債以下では絶対に売りたくない
  • 自分だったら…思い出のつまった家は大事にしてくれそうな人に渡したい
  • 自分だったら…態度が悪い人には売りたくない
  • 自分だったら…希望者が複数いたら確実に買ってくれる人(ローンが通る/動きが早い)を選びたい

値引き交渉するなら、売主の立場で考えてみて、売主側も納得する理由があるときにしましょう。不動産取引は「信頼関係」を結ぶことでトラブル回避にもつながります。

*売主に嫌われて購入できなかった失敗事例

それでは実際に「言うだけならタダ」、「ゲーム感覚」や「横柄な態度」で値引き要求をおこない、売主に嫌われてしまったケースをご紹介します。

失敗事例1「過度な値引き」
希望物件に出会ったAさん。その物件価格は「3,500万円」でした。最初に大きく吹っかけて妥協点を見つけていく交渉方法を聞いたことがあるため、大幅値引きした「2,800万円」だったら買うと交渉しました。

Aさんは2,800万円から徐々に価格調整するつもり。しかし、売主側に「なんだこの価格は…」と不快に思われ、交渉する間もなくお断りされてしまいました。端数を切るという程度を超えて、一般的に想定される値引き額とはいえないでしょう。

失敗事例2「横柄な態度」
希望物件に出会ったBさん。その物件価格は「2,900万円」でした。「見学時に物件の欠点(悪い点)をたくさん探し出して指摘することで値引き交渉の有利な材料にしましょう」というテクニックがあると知ったBさんは、実際そのとおりに交渉してみました。

しかし、中古物件の売主は、小売店とは違います。思い入れのある家を売っている一個人です。長年暮らしてきた愛着ある家を貶されてしまった売主側は、不快な気持ちになりました。そして、Bさんに対する印象も最悪となり、売買自体をお断りされてしまいました。

*売主側の不動産仲介会社にも節度ある言動を心がける

売主側の不動産仲介会社に対しても横柄な態度にならないように注意すべきです。なぜなら、実際の販売価格は、売主側の不動産仲介会社との交渉になるからです。

そして「購入希望者はどのような人か」などの情報が不動産仲介会社から売主に入るようになっています。よって物件見学時には、売主側の不動産仲介会社に対しても節度ある言動を心がけましょう。売買契約が成功するためには、慎重な対応が大切です。

この章では、「本当に欲しいマンション」や「人気のマンション」の場合、売主の立場で考え、売主側が納得するような理由がなければ、安易に値引き交渉するべきではないとお伝えしました。

言い換えると「売主側が納得する理由」があれば値引き契約の可能性があります。
では、もしそうなったとき、いくらまでなら値引き可能なのでしょうか?

値引きの目安は「価格の10%以内」

2-1「売り出し価格」と「過去の相場価格」の差額が値引きの目安

値引き額の目安は「売り出し価格(売りたい価格)」と「過去の相場価格(売れた価格)」の差額です。

なぜなら、売主側としては「売り出し価格」で売れるのが理想的ですが、実際は「過去の相場価格」が「売り出し価格」よりも低いことがあるからです。その分、交渉の余地があります。

そこで、株式会社東京カンテイ「中古マンションの価格乖離率(首都圏)」の「首都圏 売却期間別 価格乖離率シェア(1ページ目)」をみてみましょう。

乖離率
「売り出し価格(売りたい価格)」と「過去の相場価格(売れた価格)」の差額の比率

3ヶ月目を目安に乖離率をみていきます。なぜなら、不動産会社の査定は、3か月間で売れると予想される価格に設定するケースが多いからです。

すると、売り出し開始から3ヶ月経った物件の82.4%(16.5%+34.7%+31.2%)が、乖離率10%以内となっています。つまり、3ヶ月以内の物件の場合は価格の10%までなら値引きの可能性があるということです。

2-2 売却期間が長いほど相場を下回る傾向にある

売却期間が長くなるほど相場の価格を下回る可能性が高く、結果的には乖離率が大きくなります。なぜなら、「今の価格では売れない」と足元を見られてしまう傾向にあるからです。

先ほどの「中古マンションの価格乖離率(首都圏)」においても、売却期間が長くなるほど乖離率が高くなっています。

よって、欲しい物件の売却期間が長いなら、相場より値引きできる可能性があります。

2-3 精度の高い値引き相場の調べかた

今までは全体の平均からの目安でした。値引きの相場観を知るには分かりやすい指標です。しかし実際は、エリア・築年数・広さなどによって変わります。

そこで、より精度の高い値引き相場の調べかたを解説します。

STEP1 過去の相場価格(売れた価格)を調べる

仮に、あなたの欲しい物件が下記だったとします。

  • 京王線調布駅(東京)
  • 徒歩10分
  • 広さ:60㎡
  • 築年数:30年
  • 物件価格:3,150万円

そこでまずは、このエリアの過去の相場価格を調べてみましょう。

今回は「過去の相場価格(売れた価格)」を確認できる便利なサイトをご紹介します。 リアルな取引価格を知ることができるので、値引き幅の参考材料になります。

(出所)『ウチノカチ』

四半期ごとに国土交通省から開示される過去280万件以上の実取引データのうち直近の取引データを抽出し、価格相場・価格推移がひと目でわかる、無料のウェブサービスです。全国12万地点、2万以上の沿線・駅周辺の、相場を簡単に調べることができます。

物件エリアである「京王線調布駅」と記入して検索します。すると次の画面になります。

さらに「京王線 調布駅」をクリックするとページが遷移します。遷移先ページの中盤に次のようなツールがあります。

この「中古マンション価格計算ツール」に物件情報を入力すると「過去の相場価格」が出ます。この条件では「3,059万円」が成約価格の相場となります。

STEP2 「売り出し価格」−「相場価格」=「値引き可能額の目安」

あなたが欲しい物件の現在の価格とSTEP1で調べた相場価格の差額が「値引き可能額の目安」です。

今回のケースの場合、現在の売り出し価格は「3,150万円」、同条件の成約価格相場は「3,059万円」でした。よって、差額の「91万円」が値引き可能額の目安となります。

また、相場を調べていくうちに、気になる物件が相場以下で価格だと分かったなら、値引き交渉しないで満額でよいという判断をすることもできます。

一方で、相場より安い物件の値引き交渉は難航します。なぜなら、すでに相場より安いので、何か大きなマイナスポイントがない限りは買い手を見つけやすいからです。

最終的な値切り可否は「売主・買主・物件」の3状況で決まる

値引き可能額の目安について前述しましたが、そもそもの「値引き可能か否か」は、次の3つの状況によって変わります。

「値引きできるか否か」が決まる

1.売主の状況
2.買主の状況

「いくら値引きできるか」が決まる

3.物件の状況

それぞれ詳しくお伝えします。

【売主状況】急いでいる場合は値引きの可能性大

売主の状況によって「値引きができるか・値引きができないか」が決まります。

なぜなら、早く売却しなければならない事情の人もいるし、希望額で売れるまで気長に待てる人もいる…等々、まったく状況が異なるからです。

そこで、売主の状況別に値引き可否をみていきましょう。

売主の状況ごとの値引き可能性

4-1 値引きの可能性がある売主状況

次の状況のとき、値引きの可能性があります。値引きが成功するかどうかは、物件状況の選び方もポイントになります。

(値引き ○)遠方へ転勤のため早く売却を済ませたい

海外や国内の遠方へ長期転勤を命じられて所有物件を売却する場合は、値引きできる可能性があります。なぜなら、転勤までの間に売却したいという明確な事情があり期限が決まっているからです。

特に海外転勤の後に売却するとなると、たびたび帰国したり、親族に委任状を用意してやりとりしてもらったりと面倒です。そのため「多少値引きしてでも期間内に売却したい」というケースが多いです。

ちなみに「賃貸に出して、家賃収入で住宅ローンを支払えばいいのでは?」と考える人もいます。しかし、住宅ローンが残っている人には得策ではありません。

なぜなら、返済期間中に賃貸に出すことを認めていない金融機関が多いからです。また、借り手がすぐ見つかるとは限りません。社宅用に借り上げてくれる法人ではなく、個人の借り手が見つかったとしてもずっと借り続けてくれるかも分かりません。

よって、短期間で転勤から戻ってくる人は売却しないで、帰国したときの準備のために置いておくケースもありますが、長期転勤の人は売却を選ぶケースが多いです。

(値引き ○)離婚のため早く売却を済ませたい

売却理由が離婚の場合は値引きできる可能性があります。 なぜなら、どちらかが住み続けるよりも、売却で得た現金で財産分与して、きれいさっぱり結婚生活を清算したいと考える方が多いからです。

結婚生活のために購入したマンションは、部屋数が多く一方の家族だけが住むには広すぎるケースもあります。よって、早く売却して現金化したいので、値引き交渉に応じやすいです。
(*注)慰謝料支払い等で揉めているケースでは、値引きが難しいです。

(値引き ○)売り出し開始から一定期間を経過している

売り出しから一定期間を経過した物件は値引きの可能性があります。なぜなら、売り出し開始時は強気で価格設定するものの、思ったよりも競争率が低く売れずにいると弱気になってくるものだからです。また、半年や1年ほど売れ残っていると物件自体のイメージも悪くなりがちです。

そのため、物件が売れない場合は徐々に提示価格を下げる傾向にあります。ちなみに、次の時期を目安にして値下げを検討する場合が多いです。

  • 販売開始後3ヶ月
  • 販売開始後6ヶ月
  • 販売開始後9ヶ月以降

上記のようにずっと売り出されていれば、普通は当初の価格より値下げされています。その値下げが「早く売りたい」という気持ちの表れなので、現時点の価格より、あともう少し値下げに応じる可能性が高いです。

(*注)期間が長いのに値下げされてない場合は、何らかの事情で価格を下げられない可能性があります。

(値引き ○)住み替え先の新居を住宅ローンで購入している

「今まで住んでいたマンション」の残債がありつつ「新しい住居」を住宅ローンで購入している場合は、値引きできる可能性があります。

なぜなら、住宅ローンの支払いが「今まで住んでいたマンション」と「新しい住居」の二重払いになって、家計負担が大きいからです。しかも「今まで住んでいたマンション」の金利分は無駄払いになるので、できるだけ早く売却したい心境になります。

よって、住宅ローンの二重払いになっている(なる可能性のある)場合は、値引き交渉しやすい環境にあります。

(*注)ただし、ローン残債より低い価格での値引き交渉は厳しいです。

(値引き ○)引き渡し日が極端に遠い

売主の退去時期まで極端に時間がある場合は、値引きできる可能性があります。なぜなら、買主側からすると「買ったらすぐに住める」という点が中古物件のメリットだからです。

購入後のリフォームやリノベーションを検討している場合は、引き渡しまで時期が空くと着工が遅くなってしまいます。手付金だけを支払い、引き渡しが長い状態が続くことを希望する人は少ないでしょう。

すなわち、中古物件なのに「買ってもすぐに住めない」なら大きなマイナスポイントとなり、値引き交渉の好材料になります。

(値引き ○)少人数で相続した誰も住む予定のない物件

少人数で相続したマンションを売りに出している場合は、値引きの可能性があります。なぜなら、相続人の生活拠点から遠方で誰も住む予定がないマンションは早めに現金化したいと考えるケースが多いからです。

そのとき相続人が1〜2人程度の少人数だと、意見がまとまりやすく値引き交渉がしやすい環境にあるといえます。

4-2 値引きの可能性が低い売主状況

次の状況のときは、値引き交渉は難航します。注意点として覚えておきましょう。

(値引き ×)「新しい住居」の費用がかからない

「新しい住居」の費用がかからないときは、値引き交渉の可能性は低くなります。なぜなら、新しい住居が実家などの場合は月々の支払いがかからないため、新居を住宅ローンで購入した人に比べて金銭的に余裕があるからです。そのため、値引き交渉にも強気で応じてくる可能性が高いといえます。

(*注)余裕があるので、値引きした金額でも良いという場合もあります。

(値引き ×)売り出し開始してから日が浅い

売り出し開始から時間が経っていない場合、値引き交渉できる可能性は低いです。なぜなら、売主は「値引きしなくてもすぐに売れるはず」と思っているからです。そのため、売り出し開始時期の値引きは難しいでしょう。

(値引き ×)売り出し価格を値下げした直後

物件が売れない場合は、売り出し開始後3ヶ月・6ヶ月・9ヶ月以降を目安に、徐々に価格を下げる傾向にあります。しかし、価格を下げた直後は値引き交渉は難しいです。なぜなら、売主は「値引きしたばっかりだから、これ以上の値引きは厳しい」と思っているからです。

(値引き ×)多人数で相続した物件を売りに出している

多人数で相続したマンションを売りに出している場合は、値引きの可能性は低くなります。なぜなら、相続人の誰かが値引きに前向きになっても、相続人の他の誰かが応じないケースが多く、話がまとまらないからです。

(値引き ×)売却と同時に賃貸募集もしている

売却と同時に、借り手を見つけやすいエリアで賃貸募集をしている場合、値引き交渉は難航します。なぜなら、値引きされて安く売るより、賃貸で家賃収入を得たほうが良いと考える傾向にあるからです。よって、売却と同時に賃貸募集もしているケースの値引き交渉は、難易度が高いです。

(値引き ×)住宅ローンの残債がたくさんある

住宅ローン残債がたくさんある場合は、値引きの可能性は低くなります。なぜなら、売却して現金化したとしても、住宅ローン返済額がたくさん残ってしまったら、売主が残債を支払いつづけなくてはならないからです。

例えば、住宅ローンの残債が3,000万円あったとして、2,500万円で売却してしまったら、500万円の返済が残ってしまいます。そのため売主は、出来るだけ高く物件を売却したいと思うので、値引き交渉は難しくなります。

(値引き ×)売主に相場感がない

売主が相場を知らない場合は、値引き交渉は難航します。なぜなら、売りに出した物件は高く売れると信じているからです。

しかし、これは不動産仲介会社にも責任があります。売主が売却の際に複数の不動産仲介会社に査定を依頼した際に「相場より高めの査定結果」にして営業する不動産会社がほとんどです。

そのため売主は「相場より高めの査定結果」で売れると思い込んでしまいます。こうなると値引き交渉の難易度は高くなります。

(値引き ×)物件が売れなくても何ら問題がない

通常、売主が物件を売却しなければならないのには理由があります。しかし、ごく稀に物件が売れなくても問題ない売主も存在します。実は、このケースが最も値下げ交渉のハードルが高いです。

なぜなら「高く売れるなら売ってもいいかな」のスタンスだからです。よって、値引きする理由がないので交渉のハードルはきわめて高いです。

【買主状況】誠意を見せることが大切

前章は売主状況をみてきましたが、もちろん買主状況も重要です。いくら値引き交渉の可能性があったとしても、買主状況が悪ければ、そもそも交渉のテーブルに立つことすらできません。

では、どんなことを確認すればよいのでしょうか?

買主状況が整って初めて交渉のテーブルにつける

主に、3つあります。

  • 物件を買える状況にあることを証明する
  • 売主側に嫌われないようにする
  • 不動産仲介業者の営業マンを味方にする

それぞれ確認していきましょう。

5-1 物件を買える状況にあることを証明する

具体的な交渉に入るためには、買主が住宅ローンの事前審査に通っていることが必須です。なぜなら、交渉後にいざ売却となったにもかかわらず、買主のローンが通らなかったら全ては白紙になってしまうからです。

よって、具体的に値引き交渉するためには、いち早く住宅ローン事前審査に通過して物件を買える状況にあると証明しましょう。また、購入時の手付金や諸費用も準備しておくこと必要があります。

住宅ローン事前審査
住宅ローンに正式に申し込む前に、申込者の返済能力などを最小限の情報から短期間に判断する審査。 物件の売買契約等を結ぶ前に申し込めるので、「住宅ローンが借りられそうか」を契約前に確認することができる。

住宅ローン事前審査は「購入希望の物件」ごとに金融機関に審査申込を入れます。買主側の不動産仲介会社がサポートしてくれますので安心して手続きしてください。

5-2 売主側に嫌われないようにする

「売る・売らない」の決定権は売主側が持っています。よって、売主側に嫌われたらそもそも物件を買えなくなることを意識しておくべきです。

ポイントは、売主側の立場になって考えること。

売主は、思い入れのあるマンションを少しでも高く売りたいと思っています。しかし、値引き材料をあぶり出そうとして「壁紙ボロボロですね」「部屋全体が汚いです」「長期間売れていないので売れないですよ」などと、良くない部分をチェックし横柄な態度で値引き交渉してくる人に売りたいと思うでしょうか。

きちんと理由のある妥当な不具合があれば、お互いに納得できるでしょうが、相手も人間です。感情があります。欠陥のある物件のように伝え方を間違うと、「この人に売るのは嫌だ」となるのではないでしょうか。

あなたが本当に購入したいと思う物件なら、気に入っている点がたくさんあるはずです。よって売主側に嫌われないためには「とても素敵なマンションだから譲って欲しい」という気持ちで交渉を進めていくようにしましょう。

5-3 不動産仲介会社(買主側)の担当を味方にする

「値引き交渉するだけならタダ!」と無謀な値引きを要求すると、買主側の不動産仲介会社にも嫌われる可能性があります。そうなると今後の物件購入自体が困難になるかもしれません。

なぜなら、値引き交渉は買主側の不動産仲介会社にもリスクがあるからです。

たとえば、値引き交渉して売主側に納得してもらった後に「住宅ローン事前審査が通らなかった」「やっぱりやめたと買主都合でキャンセル」となってしまったら、売主や売主側不動産仲介会社に不信感を持たれてしまい「あの不動産仲介会社(買主側)とは今後取引をしたくない」となって大打撃を受けます。

そういった買主は、不動産仲介会社(買主側)に冷やかし客のレッテルを貼られるので、今後の物件探しにおいて、あなたの味方になってくれることはなくなります。

不動産仲介会社を味方にするために、買主として、曖昧な態度をとらないようにしたり、節度のある行動をするように心がけましょう。

【物件状況】値引き交渉の材料を揃える

【売主状況】【買主状況】は「値引きできるか否か」の判断でした。本章【物件状況】は「いくら値引きできるか」の判断材料となります。

6-1 過去の相場価格を交渉の材料にする

特に重要なのは、前述した過去の相場価格を調べることです。なぜなら、いくらまでの値引きが適正なのかが比較しながら分かるからです。

例えば、売り出し価格3,000万円の物件があったとします。同条件の過去の相場価格を調べたところ約2,920万円だったなら、(売り出し3,000万)−(相場価格2,920万)=80万円までなら値引きの適正範囲となります。

詳しくは、本記事「2.値引きの目安は価格の10%以内」をご覧ください。

6-2 物件の痛み度合いを確認して交渉の材料にする

マンション相場以外に「部屋の状況」は値引きの判断材料になります。なぜなら、リフォームや設備設置を理由に値引きを交渉できるからです。

物件状況を確認して値引きの交渉材料をそろえる

壁紙(クロス)

壁紙がタバコなどで汚れていたり、一部が剥がれている場合は、値引き交渉の材料になります。なぜなら購入後にリフォームしなければならず、その費用が別途かかるからです。見学時に確認しましょう。

水まわり

築年数が経っているマンションの水まわり(キッチン・トイレ・お風呂など)は、故障や不具合があるケースも少なくありません。特に水まわりは、取り換え費用が多額になる傾向になります。

その場合、売主負担でリフォームしてもらうか、相当額の値引き交渉の可能性があります。見学時に各所に不具合がないか確認しましょう。販売価格が高い物件であっても、交渉できる可能性があります。

床・天井

マンションの多くは、床と天井が二重床や二重天井で作られています。一方で、二重化されていない直床や直天井といった物件も少なくありません。

二重床
マンションなどのコンクリートの床(床スラブ)とフローリングなどの床材との間に空間をとって二重構造になっている床のこと。 床スラブと床材の間の空間には、給排水管やガス管などが通っている。

直床や直天井の建物は、値引きの材料になる可能性があります。なぜなら、二重床や二重天井に比べて、断熱性や防音性で劣るからです。

また、給排水に関わるようなリフォーム工事の難易度にも大きな差が生じてしまいます。よって見学時に不動産仲介会社(売主側)に床の状況を確認しましょう。

他にも気づいた箇所は売主側が不快にならない伝えかたで確認して、値引き交渉の材料として揃えておきましょう。

値引き交渉の本番は事前審査通過後

値引きの交渉の「開始」は買付証明書のタイミング、「本格化する」のは事前審査通過後です。

値引き交渉の本番は事前審査通過後

買付証明書とは「この物件を気に入ったので、この金額で購入したい」という購入意思を売主側に伝える書類です。ここに「値引きした希望額」を記載します。

買付証明書の詳細は買付証明書(買付申込書)について説明しているこちらの記事をご覧ください。

買付証明書を提出したあとは早急に住宅ローン事前審査の手続きをしなければなりません。なぜなら、具体的な交渉は事前審査を通って「物件を買える状況にある」と証明した後になるからです。

ちなみに買付証明書には法的効力はありません。キャンセルしたからといって違法でもなんでもありませんし、特にペナルティもありません。

7-1 買付証明書の提出後は、すぐに事前審査を行うべき

目の前にある希望物件を買いたいと思っていても、もたもたしていたら他の購入希望者にとられてしまいます。なぜなら、不動産業界の慣習として「交渉の優先順位」があるからです。

一番最初に買付証明書を出して、住宅ローン事前審査を通った人が「一番手」となります。そして、具体的に価格交渉することができます。

よって、買付証明書を提出したら直ぐに事前審査の申込をしましょう。そして「一番手」になってはじめて交渉のテーブルにつくことができます。

7-2 「他に購入希望者がいるかどうか」も売主側に確認する

前述したとおり、売主との交渉権を得るのは、基本的に買付証明書を出した順番で「一番手・二番手…」となります。しかし、あなたが一番手だったとしても、二番手の購入希望者に買われてしまうこともあります。

なぜなら、交渉権は不動産業界の慣習なだけで法的効力はないからです。たとえば、一番手の購入希望者が値引きを交渉していた状況で、二番手が満額で購入したいとなった場合、一番手も満額で購入しなければ、二番手に買われてしまいます。しかし、これはまだよい方です。一番手に何も言わず、満額購入の二番手に売却するケースもあります。

よって値引き交渉するときは「他に購入希望者がいるかどうか」も売主側に確認しておきましょう。

失敗事例3「欲を出しすぎて物件を逃す」
希望物件に出会ったDさん。その物件価格は「3,500万円」でした。過去の相場価格などを調べた結果「3,300万円」ぐらいまでなら値引きできそうだと分かったので、買付証明書に値引きした価格を記入して提出しました。その後、売主側の不動産仲介会社から、満額で購入希望の二番手があらわれたと伝えられました。
そこでDさんも満額で買うと意思表示すれば希望物件を購入できたのですが、欲を出したDさんは値引きに意固地になってしまいました。結局、物件を購入できたのは二番手の人。Dさんは本当に欲しかった物件を買えずに悔やみました。

物件価格ではなく「仲介手数料」の値引きは諸刃の剣

不動産仲介会社に支払う仲介手数料の値引きは、交渉できなくはないのですが、しないほうがよいでしょう。なぜなら、仲介手数料は不動産仲介会社の唯一の収入源であるため、無邪気に値下げ交渉することで、担当者の熱意を下げてしまう可能性があるからです。

交渉によっては、「この人のために良い物件を探そう!」という気にはなってくれないかもしれません。また、同じ物件に複数購入希望者がいた場合、規定の手数料を支払ってくれる人を優先することになるでしょう。

不動産仲介会社を味方につけたいなら、安易な仲介手数料の値引き交渉は賢明ではありません。

【超実践】値引き交渉するときのセリフ集

実際の交渉は、売主側と買主側の不動産仲介会社が行います。

ただし、不動産仲介会社に任せっきりではありません。あなたと不動産仲介会社(買主側)で相談しながら、どのように交渉するかを検討していきます。そのため、売主側に「値引きしたい意思を伝える流れ」などを知っておく必要があります。

そこで、交渉するときのセリフ集を用意しました。

  1. 相場価格より高いとき
  2. リフォームが必要なとき

この2つを覚えておけば十分です。

1 相場価格より高いとき

「売り出し価格」がエリアの「過去の相場価格」より高い場合、その差額を値引きできる可能性があります。

「素敵なお部屋ですね。○○○も良いですし、○○○も良いですね。もしこちらのお部屋を買わせていただけることになったら大変嬉しいです。そこでお願いがあるのですが、同条件の過去の相場価格は○○○でしたので、その相場まで値引きして頂けませんでしょうか。」

上記のように値引き交渉するとよいでしょう。

ただし「売り出し開始直後」や「値下げ直後」は値引き交渉が難航しますので、交渉前に物件の販売状況を確認しておくことをおすすめします。

2 リフォームが必要なとき

壁紙がタバコなどで汚れていたり、一部が剥がれている場合、リフォーム費用がかかることを材料として値引き交渉ができます。床や水回りなど他の箇所でも同様です。

「素敵なお部屋ですね。○○○も良いですし、○○○も良いですね。もしこちらのお部屋を買わせていただけることになったら大変嬉しいです。そこでお願いがあるのですが、壁紙はリフォームさせて頂きたいので、その費用分だけでも値引きして頂けませんでしょうか。」

上記のように値引き交渉するとよいでしょう。

ただし、売主側が痛んでいる箇所を考慮して価格設定している場合もあります。その場合は、痛んでいる箇所があっても値引きは難しくなります。

「この物件価格は部屋の痛みを考慮して設定されているか否か」を把握するために、あらかじめ過去の相場価格を調べておくことが重要になります。

よくある質問

10-1.「現金一括」は非常に効果的な値引きカード?

交渉術ではありませんが、効果的な値引きカードとして「現金一括購入」が挙げられます。現金での購入は売主にとって非常に魅力的だからです。

売主としては、購入者の住宅ローン審査の結果を心配するよりも、現金一括で購入してくれる方が安心です。。

そのため、「〇〇万円になるのであれば現金一括で購入する」という提案は非常に魅力的になります。こちらが値引き交渉の途中に現金購入者が入ってきた場合も奪われてしまう可能性があるため、不動産業界ではとても恐れられています。

10-2.中古マンションの契約後でも値引きは可能?

中古マンションを契約したあとに不具合が見つかった場合、値引きができるのかという質問があります。結論としては、値引きはできません。

例えば、「付帯設備表」「物件状況確認書」に設備故障や不具合なしと記載があったのにも関わらず不具合があった場合は、補修や修繕を売主に依頼することになります。

また、売主側に契約違反があった場合は、値引きではなく、違約金の請求をしていくことになります。

10-3.値引き交渉の最中で他の人から申込があったらどうなる?

人気物件の場合、こちらが価格交渉をしている最中に他から別の購入申し込みが入って来てしまうというケースがあります。この場合、優先交渉権は先に購入申し込みをしているこちらにあると言えます。

ただし、4000万円の物件に100万円の値引き交渉をしているとき、4000万円満額で購入する人が後から入ってきた場合、「満額出す方がいますがどうされますか?」と売主側の不動産会社から連絡が入ります。ここで満額出さない場合は購入は難しいでしょう。

いずれにしても優先交渉権がなければ購入もできないため、住宅ローンの事前審査は素早く行っておきましょう。

10-4.交渉途中で物件が奪われてしまうケースは存在する?

「住宅ローンの事前審査を通過した上で購入申し込みをした人」の順ではなく、他の人に物件を買われてしまうこともあります。

それが次のような場合です。

  • ほぼ同時に購入申し込みをした場合
  • 先着順ルールではない不動産会社の場合
  • 売主が他の人を選んだ場合

10-4-1.ほぼ同時に購入申し込みをした場合

自分が購入申込書を提出した30分後に、他の人が購入申込書を提出した場合、売主側の不動産仲介会社は同時に申し込みされたと考えます。この場合、優先権はどちらにもなく、金額が高いほうが1番手となります。

10-4-2.先着順のルールを採用していない不動産会社の場合

不動産仲介会社の中には、先着順ルールを採用していない会社もあります。このルール自体、実は不動産業界の昔からの慣例であり、法律で決まっていることではないからです。

会社によっては、売主に自由に選んでもらうという会社もあるくらいです。この場合、購入申込の順番は関係なく、他の人がより高い金額の購入申込書を提出したら、その人に購入権が移ることになります。

10-4-3.売主が他の人を選んだ場合

何らかの事情で売主が他の人を優先してしまう場合もあります。よくある例は、こちらの値引き金額が大き過ぎて「この人には売りたくない」と売主が断ってしまうというものです。

その他にも、売主の親族や友人が買いたいと言っていたり、現金一括購入の希望者など、売主にとって魅力的な条件であった場合、売主が他の人に購入権を渡してしまうこともあります。

10-5.契約直前の値引き交渉はできるの?

売買契約の当日や、契約書にハンコを押す直前の値引き交渉はほぼ間違いなく失敗します。

失敗だけではなく、売主や売主側の不動産会社、こちらの不動産会社の担当までも敵にまわしてしまう行為となり、購入できなくなるとともに、こちらの担当者も次回からはよい情報をまわしてくれることはなくなるでしょう。

中古マンションの売買契約の流れとして、値引き交渉を経て値段が決まった段階で、売買契約書が作成され、物件価格が契約書に印字されます。値引きの相談をするのは、必ず購入申込書を提出するタイミングにしましょう。

まとめ

中古マンションの値引きで一番大切なのは「売主の立場になって考える」ことです。また「不動産仲介会社の立場になる」こともポイントです。

購入希望者がいくら買いたいと大声で叫んでも、売主側に嫌われてしまったら値引き以前に買うことすらできません。なぜなら「売る・売らない」の決定権は、売主側にあるからです。

よって、売主側に横柄な態度を取ったり、非常識な値下げを要求するのではなく、節度を持った言動を心がけましょう。

そして「売主の立場になって考える」ことを前提に、実際には、次の3つの状況を判断しながら値引き交渉を進めていきましょう。

  1. 【売主状況】急いでいる場合は値引きの可能性大
  2. 【買主状況】誠意を見せることが大切
  3. 【物件状況】値引き交渉の材料を揃える

上記を揃えることができれば、希望の中古マンションを値引きできる可能性が高くなります。

本記事には、実践的な「値引き交渉のセリフ集」を掲載しています。中古マンションを買おうと思ったら、ぜひ活用してください。

あなたと家族にとって最適なマンションを最適な価格で買える、そんな住宅購入になれば嬉しいです。

この記事の制作体制
  • 佐藤剛

    ゼロリノベの共同創業者。創業以来、延べ2.5万人に対してセミナーを実施。「大人を自由にする住まい」というコンセプトをサービスの軸に据え、住宅購入という人生で最も大きな投資をするこの瞬間、この重要な選択を通じて人々が自由を感じられる...

  • 鰭沼 悟

    宅地建物取引士、不動産投資家歴15年、元銀行員。不動産仲介からリノベーション設計・施工をワンストップで提供する株式会社grooveagent(ゼロリノベ)代表取締役。

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