マンションの購入に伴う登記とは?新築/中古マンションでの違いや必要な費用を解説
「マンションの登記内容を変更したいけれど、どうすればいい?」
「マンションの登記はどこを見ると情報が分かるの?」
上記のような疑問をお持ちの方がいるのではないでしょうか。
マンション登記には購入したマンションの建物や土地の所有権や正式住所、ローンの状況など、大切な情報が詰まっています。
マンション登記の見方はとても簡単なので、一度把握しておけば必要なときにいつでも確認できるようになります。
この記事ではマンション登記の見方について解説していきます。
マンション登記情報の取得方法や変更方法と一緒にチェックしておきましょう。
宅地建物取引士/元銀行員
鰭沼 悟
宅地建物取引士、不動産投資家歴15年、元銀行員。不動産仲介からリノベーション設計・施工をワンストップで提供する株式会社grooveagent(ゼロリノベ)代表取締役。
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不動産の売買でよく聞く「登記」とは?
不動産の売買や、不動産を担保にお金を借りた場合など、さまざまな場面で必要なのが「登記」です。
では、なぜ登記が行われるのでしょうか。不動産登記は、土地や建物の基本情報(場所や面積など)や所有者の権利関係を明確にし、一般の人々にもわかりやすく公開することです。これにより、不動産の取引が円滑に行われ、財産を守る役割を果たします。
新築マンションに必要な2つの登記とは?
新築マンションに必要な登記として下記の2つが挙げられます。
- 建物表示登記(建物表示登題)
- 所有権保存登記
順に紹介します。
2-1.建物表示登記(建物表示登題)
建物表示登題(建物表示登記)とは、完成した建物の位置や構造、床面積などを明示するために行われる新しい登記手続きのことです。新築マンションの場合、一般的には購入者がこの登記手続きに関与する必要はありません。
2-2,所有権保存登記
所有権保存登記においては、購入時に支払った購入代金を負担した人が所有者として登記されることが重要です。
例えば、親が一部の購入代金を負担しているにもかかわらず、子どもだけが所有者となっている場合、親が出資した金額が贈与とみなされる可能性があります。
ただし、住宅取得資金の贈与を受けた場合には、一定の条件を満たすと非課税となる制度も存在しますので、最寄りの税務署や税理士に相談してください。
中古マンションに必要な所有権移転登記とは?
中古マンションの所有者は売主として登記されています。すでに所有権が登記されている不動産を購入する場合、所有権が買主に移転するために「所有権移転登記」が必要です。
中古マンションを購入して自分自身では住まない場合でも、所有権移転登記は必要です。また、購入後にそのマンションから引っ越した場合、新築マンションと同様に住所変更登記が必要になります。
新築/中古マンションの登記の違いとは
新築マンションと中古マンションの登記の違いを紹介します。
- 登録免許税の税率
- 自分で住まないマンションの登録免許税
順に紹介します。
4-1.登録免許税の税率
新築マンションと中古マンションでは、所有権の登記方法が異なります。新築マンションでは所有権保存登記を行い、中古マンションでは所有権移転登記を行います。
また、登記にかかる登録免許税の税率も異なります。土地にかかる登録免許税は同じですが、建物にかかる登録免許税の税率は新築マンションの方が高くなっています。
そのため、固定資産税評価額が同じ新築マンションと中古マンションでは、中古マンションの方が登録免許税が高くなります。例えば、建物の評価額が1000万円のマンションの場合、新築なら登録免許税は1万5000円、中古なら3万円となります。
4-2.自分で住まないマンションの登録免許税
新築マンションと中古マンションの登記の違いとして、自分で住まないマンションの登録免許税が挙げられます。
登録免許税の軽減を受けるためには、住宅用家屋証明書が必要です。ただし、投資用や親など自分以外に住んでもらうために購入した非居住用のマンションの場合、居住用マンションよりも建物分の登録免許税率が高くなります。
例えば、建物の固定資産税評価額が1000万円の場合、非居住用になると、新築の登録免許税は4万円、中古は20万円になります。なお、土地を購入した場合は居住用・非居住用問わず、所有権を移転登記する際の登録免許税の税率が20/1000(2%)から15/1000(1.5%)に軽減されます。(2026年(予定)3月31日まで)
登記内容を確認するための登記事項証明書の見方
マンションの登記内容を把握するためには、登記事項証明書の見方を把握する必要があります。
登記事項証明書は、下記のように「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」、そして必要に応じて「共同担保目録」という4つの構成に分かれています。
出典:法務省「登記事項証明書(不動産登記)の見本(区分建物)」
ここでは、それぞれの区分の見方をご紹介します。
5-1.マンションの基本情報を確認できる「表題部」
出典:法務省「登記事項証明書(不動産登記)の見本(区分建物)」
表題部は住所や構造など、マンションの基本情報が記載されている部分です。
マンション全体の情報を記載している「一棟の建物の表示」部分と自分の部屋の情報を記載した「専有部分の建物の表示」に分かれており、下記のような内容が記載されています。
ここを見ることで、正確な住所や家や番号、専有部分の広さやマンション全体の広さ、構造などが確認できます。
一棟の建物の表示 | |
専有部分の家屋番号 | 不動産を登記するために割り振られる番号 |
所在 | マンションの住所 |
建物の名称 | マンションの正式名称 |
構造 | マンションの構造(木造・鉄筋コンクリート造など) |
床面積 | マンション全体の床面積 |
敷地権の目的である土地の表示 | |
土地の符号 | 敷地権(土地に関する権利)の対象となる土地がいくつもある場合、見分けるための番号 |
所在及び地番 | マンションがある土地の住所 |
地目 | 土地がどのように使われているか表示するもの 例)住宅・田・公園など |
地積 | 土地の広さ |
専有部分の建物の表示 | |
不動産番号 | 不動産を登記するために建物ごとに割り振られる数字 |
所在 | マンションの住所 |
建物の名称 | マンションの正式名称 |
構造 | マンションの構造(木造・鉄筋コンクリートなど) |
床面積 | 専有部分の建物の表示 |
敷地権の目的である土地の表示 | |
土地の符号 | 敷地権(土地に関する権利)の対象となる土地がいくつもある場合、見分けるための番号 |
敷地権の種類 | 所有者(法律の範囲内で自由に使用、処分ができる権利)・地上権(他人の土地を利用する権利)のどちらかが記載される |
敷地権の割合 | 有している敷地権の割合が記載される |
所有者 | 土地の所有者が記載される(不動産会社など) |
5-2.所有権に関する情報を確認できる「権利部(甲区)」
出典:法務省「登記事項証明書(不動産登記)の見本(区分建物)」
権利部(甲区)は権利の中でも、所有者に関する事項が記載されています。
所有権とは法律の範囲内で自由に使用、処分ができる権利のことで、誰に所有権があるのか、いつから所有権を有しているのか分かるようになっています。
所有権に関数事項 | |
順位番号 | いくつも記載事項がある場合、登記をした時期が早いほうから順に番号が付けられる |
登記の目的 |
など、所有権をどのように登記したのかを記載 |
受付年月日 | 登記の目的の内容をした年月日と、1月1日から数えて法務局で何番目の登記だったのか記載 |
権利者その他事項 | 所有権を登記した原因(売買、相続、贈与など)と誰が所有権を有しているのか記載される |
マンションの所有権を変更したい場合や現在の所有権を確認したい場合は、「権利部(甲区)」を見ることですぐに把握できます。
5-3.所有権以外の権利を確認できる「権利部(乙区)」
出典:法務省「登記事項証明書(不動産登記)の見本(区分建物)」
権利部(乙区)には、所有権以外の権利について記載されています。この部分を見ると、所有権以外にどのような権利を有しているのか確認できます。
所有権に関数事項 | |
順位番号 | いくつも記載事項がある場合、登記をした時期が早いほうから順に番号が付けられる |
登記の目的 |
所有権以外の権利に関する事項が記載される。多いものは次の3つ。
|
受付年月日 | 登記の目的の内容をした年月日と、1月1日から数えて法務局で何番目の登記だったのか記載 |
権利者その他事項 | 登記をした理由(ローンを組んだ等)と詳細を記載 |
- 抵当権の設定内容を確認したい
- ローンを完済したので抵当権を抹消する
- 地上権の内容を確認したい
上記の場合には、「権利部(乙区)」をチェックしてみましょう。
5-4.複数の不動産を担保にしている場合は「共同担保目録」
出典:法務省「 登記事項証明書(不動産登記)の見本(建物)」
共同担保目録とは、抵当権を設定したときに担保として複数の不動産を提供している場合にまとめて表示する欄です。
例えば、マンションをいくつか保有しており、新しいマンションを購入する際に他のマンションも併せて担保として提供している場合が当てはまります。
権利部(乙区)に抵当権設定の項目があり、かつ複数の不動産を担保にしている場合のみ表示されます。
共同担保目録 | |
登記および番号 | 登記申請をした番号を記載 |
番号 | 抵当権設定されている不動産に割り当てられている番号を記載 |
担保の目的である権利の表示 | 抵当権設定されている不動産の所在地や家屋番号を記載 |
順位番号 | いくつも記載事項がある場合、登記をした時期が早いほうから順に番号が付けられる |
マンションの登記事項証明書を取得する3つの方法
マンションの登記情報が確認できる登記事項証明書は基本的にマンションの入居時に渡されますが、紛失してしまった場合や最新の情報を入手したい場合は申請することで取得できます。
申請時には氏名などの個人情報の他に正確な土地の地番と家屋番号が必要です。手元に登記事項証明書がある場合はどちらも確認できますが、地番や家屋番号が不明な場合は下記の方法で確認できます。
- マンションの管理会社に問い合わせをする
- 登記情報サービスで検索をする(有料:1件332円(税込))
- ブルーマップで調べる
地番と家屋番号が把握できている状態で、下記の方法を利用してみてください。
6-1.オンラインで申請する
登記事項証明書は、自宅のパソコンからオンライン申請をすることができます。法務局に出向く時間がない場合でも、平日8:30~21:00まで受付をしているため利用しやすいところがメリットです。
また、窓口で申請をすると600円かかりますが、オンライン申請を利用し郵送してもらうと500円、最寄りの法務局等で受け取る場合は480円とコストを抑えることもできます。手軽に登記事項証明書を用意したい場合は、下記のような手順で利用してみてください。
【オンラインでの申請方法】
- かんたん証明書請求にアクセスをして、申請者情報を登録します(氏名や住所など)。
- 申請者情報登録後に、オンライン申請を行います。受付時間は平日8:30~21:00までです。
- 申請料は電子納付、ATM納付ができるので、支払い方法を選択します。収入印紙を用意する必要はありません。
- 最寄りの税務局での受け取りか郵送かを選択し、登記事項証明書を受け取ります。
参考:法務局「登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です」
6-2.管轄の法務局の窓口で申請する
近くの法務局に出向き、窓口で登記事項証明書の申請をすることができます。事前に下記を確認しておくとスムーズに申請できます。
- 登記事項証明書申請書の記入
- 収入印紙の用意(600円(50枚を超えるごとに100円追加))
(代理申請など特殊なケースは上記以外にも書類が必要です)
所要時間は10~20分程度なので、少しでも早く登記事項証明書を用意したい人におすすめです。近くの法務局を確認したい場合は、こちらを参考にしてみてください。
6-3.郵送での送付を手配する
管轄の法務局のホームページ等を確認し郵送対応をしている場合は、郵送で登記事項証明書を取り寄せることもできます。
まずは下記書類を用意して管轄の法務局に郵送します。
- 登記事項証明書申請書(収入印紙を貼る)
- 切手を貼った返信用封筒
(代理申請など特殊なケースは上記以外にも書類が必要です)
書類に不備がなければ1週間~10日ほどで登記事項証明書が届きます。他の方法よりも手元に登記事項証明書が届くまでに日数がかかるため、できるだけ他の方法を利用することをおすすめします。
参考:岐阜地方法務局「郵送で登記簿謄本を請求したいのですが?」
【登記事項証明書には4種類ある】登記事項証明書は記載されている内容によって、下記の4つに分類されます。
情報量が異なるだけで、どれも第2章で紹介をした様式となっています。銀行などの金融機関や税務署などの公的機関に提出するときは、現状だけ把握できる現在事項証明書を使用する場合が多いです。 登記事項証明書の申請をするときに窓口で「どのタイプの登記事項証明書を申請しますか?」と聞かれることもあるので、それぞれの違いを把握しておきましょう。 |
マンションの登記内容を変更する方法とは
登記事項証明書の名義や所有権、抵当権などを変更したい場合も登記事項証明書の取得方法と同様に下記の3つのパターンが利用できます。
- オンラインで申請をする
- 法務局に出向いて申請をする
- 郵送で申請をする
しかし、申請時とは異なり内容を変更する場合は内容によって必要な書類が大きく異なるため、法務局に出向いて申請をするのが無難です。登録免許税などの費用も変わってくるため「登記事項証明書の名義変更をしたい」「新しく抵当権設定をしたい」などと問い合わせてみてください。
オンラインで変更申請をする場合は、申請用総合ソフトを自身のパソコンにインストールし作業をしなければならないため、現時点では手軽にできるとは言えないでしょう。
登記事項証明書の変更に必要な申請書はこちらにまとめられているので、必要な部分を記入し法務局に持参してみるのがおすすめです。
マンションの登記情報を確認するには登記事項証明書を見る
マンションの登記情報を確認したいときは、登記事項証明書を見る必要があります。
登記事項証明書とは、マンションなど不動産の登記記録を記載した書類で、マンションの引き渡しが終わり登記が完了したときに手渡しで渡されるケースが多いです。
法務局の承認を得て発行され、どのような登記を有しているのか証明できる書類となっており、ローンの申請時やマンションの売却時、相続などで使います。
8-1.登記簿謄本との違い
登記簿謄本と登記事項証明書は、同じ書類です。
- 登記事項証明書=登記情報をコンピュータで管理しており、必要な内容を印刷し渡す書類
- 登記簿謄本=登記事項を直接用紙に記入し、その用紙を複写して渡す書類
法務局のオンライン化が進んだことから、現在は登記事項証明書が使用されています。しかし、まだまだオンライン化の途中なので、築年数が古いマンションの場合は登記簿謄本として管理されている可能性もあります。
参考:松山地方法務局「登記簿謄本と登記事項証明書の違いは?」
マンションの登記に関するよくある質問
マンションの登記に関するよくある質問を紹介します。
- 不動産登記を自分で行ったときの登記費用はどれくらい?
- 不動産登記にて必要な書類はなに?
- 中古マンションの登記はいつ行うの?
順にお答えしますので、同じような疑問をお持ちの方はぜひ参考にしてください。
9-1.不動産登記を自分で行った時の登記費用はどれくらい?
自分で登記手続きを行う場合は、登録免許税と諸経費が必要になります。
新築マンションを購入する場合、所有権の登記費用や必要な書類の取得費用など、さまざまな経費が発生します。また、中古マンションを購入する場合は所有権の移転登記費用もかかります。さらに、ローンを利用する場合は抵当権の設定費用も加わります。
9-2.不動産登記にて必要な書類はなに?
不動産登記全てに必要な書類は下記になります。
- 登記申請書
- 本人確認書類
- 印鑑証明・実印
- 住民票の写し
その他新築を建てた時に必要な書類や新築物件を購入した時に必要な書類等がありますが、全てに共通して必要なのは上記4つです。
9-3.中古マンションの登記はいつ行うの?
決済や引き渡しの際に行われる項目の中に、登記手続きの委任があります。
売主と買主の両方が、司法書士に登記書類を提出し、専門的な手続きを代行してもらうことになります。マンションの売買時に必要な登記は、「所有権移転登記」と「抵当権設定登記(※住宅ローンを利用する場合)」の2つです。
司法書士は、決済や引き渡しの完了後(通常は当日中)に登記申請を行います。買主は、住民票(金銭消費貸借契約時に提出したもの)と本人確認書類を用意すれば大丈夫です。登記手続きが完了すると、物件は実際にあなたのものとなります。
まとめ
マンションの登記情報の確認方法や変更方法などが把握でき、知りたい情報が簡単に確認できるようになったかと思います。
この記事をもとに、購入したマンションの登記内容が自分で確認できるようになることを願っています。