挑戦し続けられる住環境が自分を自由にする [自由に住みたい大人たち Vol.3 アントン・ウォルマンさん]
住まいや暮らしに求める自由の形は人それぞれ。モデルとして世界的に活躍する中、セルフリノベーションの魅力も伝えるアントン・ウォルマンさんが見つけた “自由” とは?
PROFILE ● Anton Worman/アントン・ウォルマン
モデル、俳優、YouTuber。民泊を運営するJAPANDI HOUSE主宰。スウェーデン出身。2019年より日本に拠点を構え、DIYのYouTubeチャンネルを開設。SNSの総登録者数は200万人を超える。著書に外国人向けのセルフリノベーション指南書『Free Houses in Japan』(Anton in Japan Media)。テレビ出演や雑誌連載等、メディアにも多数登場
セルフリノベーションで家の課題は解決できる
「床を剥がしたら、WOW! 基礎フレームの下に土が見えます。断熱材がナイ!」。YouTubeで古民家のセルフリノベーション動画を配信するのは、日本在住スウェーデン人のアントン・ウォルマンさん。家財の残る古家を購入し、解体からゴミの処分、耐震・断熱、内装、設備選びに至るまで。ユーモアを交えながらも具体的なノウハウが凝縮された動画は実にリアル。国内外問わず人気を博している。
モデルとして世界各地を飛び回り、仕事で訪れた日本が気に入って移住を決意。中古マンションを買ってセルフリノベーションしたことで、DIY熱に火がついた。「思い通りにデザインできるのが楽しくて、もっと自分でいろいろしたくなって、築86年の建物付き土地を買いました」。古い上に再建築不可の旗竿地ゆえ、三軒茶屋にして破格の1000万円だった。
ここまでの大規模なリノベーションを自分ですることに不安はなかったのだろうか。「スウェーデン人はバケーションの時期に別荘へ行く人が多く、私もそうでした。そこでは建物をDIYして管理するのも、別荘で過ごす時間と同じぐらい大事な目的なんです」。大工仕事は家族で親しむだけでなく、学校でも必修科目。子どもの頃から身につけたスキルを自負し、「建物の問題は自分でなんとかできると思っていました」
アートのような日本の技術こそ宝
リノベーションではいくつもの驚きに遭遇したアントンさん。中でもインパクトを受けたのが窓だった。「日本の窓は小さくて驚きました。スウェーデンは冬が暗くて日も短いから、日差しが貴重です。小さい窓の家はありません」。モデルの仕事で撮影スタジオに窓がないと、元気がなくなるほどだと真顔で話す。「日差しは心と体のパフォーマンスに影響します。だから家でも光と自然が大事。人間も生き物で、自然の一部だから」
自然光を採り入れながら既存の梁や柱を見せ、無垢材を多用した空間。そこに、遊び心のあるタイルやドアハンドルがデザインされている。日本的な懐かしさとスカンディナビアの洗練が融合した “ジャパンディ” がアントンさんのスタイルだ。「日本とスウェーデンの家は、自然と調和させるところやミニマルなところが似ています。スウェーデンでよく使われる木材と日本らしさを組み合わせてプランニングするのが面白いですね」
設計には日本へのリスペクトも散りばめられている。「日本にはスゴイところがたくさんあります。障子、畳、桐たんす、金継ぎ……、でしょう!?(笑)。古民家を見るとインスピレーションをたくさんもらえます」。現在、進行中のリノベーションでは「釘を使わない宮大工のワザ」で柱をつくる予定だそう。「アートみたいな組み木をあえて見せたら、みんなの反応もきっとスゴイ。日本のいいところを見せないのはもったいないね」
大都市で空き家があるのは日本だけ
「ここは1936年竣工。この数字、日本だと古くて価値がないから隠すでしょ。でも、外国ではフィーチャー! 欧米ではいい場所に住みたかったら古い家しかないから、100年前でも気にしない。そもそも日本みたいな大都市で空き家があるのは信じられないことなんです。今の日本は空き家が多い。だから手頃な中古物件を買ってセルフリノベーションするのは、低いリスクで家を持てる良い方法だと思います」
中古物件はゼロから考える注文住宅と違って「実際の間取りやデザインを見て『自分ならこう変えたい』と想像しやすいでしょ?」とアントンさん。セルフリノベーションの魅力を語る一方で、手間がかかる側面も否定しない。大工仕事をする彼であっても耐震補強はエンジニアの指示を仰ぎ、電気・水道・ガス工事はプロに任せる。
「リノベーションは自分で変えられる楽しさがある。できない部分をサポートするリノベ会社もある。新築より費用を抑えられるから挑戦しやすい。中古物件もたくさんある。自分らしい家を持つためのいい条件が、日本には揃っていると思います」
スウェーデンでは服より家で自己表現
「日本では新築の建売住宅を買うと、それが自分風でなくても受け入れて、20年くらいはそのまま住みますよね? だけどスウェーデンでは、たとえ新築でも自分で手を入れたくなる。それほどみんな自分風に変えたいんです。どうせ変えるなら新築を選んだらもったいないし、選ぶ必要もないから、築年数を気にしない。服装にはあまりこだわらないけれど、家で自分らしさを表現することにはとことんこだわりたいんです」
その理由は北欧の冬にあった。寒さが厳しいからあまり外に出ず、自宅で過ごす時間が長くなる。人と会うのも互いの家。家族や友人と料理をつくったり、みんなでくつろいだり。そうした日々の中で、より心地良くしたい、よりもてなせる空間にしたいという思いが深まる。「友人たちと家を行き来すれば、お互いに刺激を受け合って、もっとこうしたいとどんどんイメージがふくらみます」
比べて日本では、人と会うとなると自宅よりカフェやレストランなど外の場合が多い。「だから日本人は、すごくオシャレ。行く場所に合わせて服を選んで、自分らしさを出しています。でもスウェーデン人は家で個性を出したい。もちろん私も自分を表現するのは “服より家” 。だって、いつも自分の好きな空間にいたいじゃないですか」
家づくりが自分自身の発見に
自分の “好き” のため、人と集うため、表現するため。その思いはブレないが、具体的にどうするかは建物と向き合い、手を動かしながら見つけていくという。「一番必要なものって、最初はわからないもの。今のアントンと2年後のアントンは違うでしょう?」
セルフリノベーションすることで、使いたい素材や求める間取りに気づいていける。それがどんどん楽しくなって、やりたいことをしているうちに動画配信や民泊のビジネスにまでつながった。何年か前には思いもよらなかったこと。その時々の「したいこと」に忠実に、「好きなもの」を見つけて追い求めた結果、生き方や活躍の場が広がった。
では、アントンさんにとっての『自由な住まい』とは? そう問うと、間を置かずに「挑戦できること」ときっぱり。自分自身を広げ、アップデートさせていける環境であることに、自由を感じるのだと教えてくれた。
構成・取材・文/樋口由香里 撮影/水谷綾子
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