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住宅ローンの繰り上げ返済のメリット・デメリットとすべき人の判断基準

繰り上げ返済

「住宅ローンの繰り上げ返済はしたほうが得?それとも、しないほうが得?」
……と、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

結論からお伝えすると、得か・損かは状況やタイミング次第でまったく変わってきます。

住宅ローンの繰り上げ返済で失敗しないためには、まず住宅ローンの繰り上げ返済のメリット・デメリットを正しく把握し、自分の状況と照らし合わせて判断する必要があります。

にもかかわらず、情報不足によって正しい判断ができず、後悔する人が後を絶ちません。

そこで本記事では、「住宅ローンの繰り上げ返済を検討するなら必ず知っておくべき情報」を凝縮してお伝えします。

<本記事のポイント>

  • 住宅ローンの繰り上げ返済って何?という基礎知識から解説
  • メリット・デメリットの両方を把握できる
  • 効果が高まるタイミングから失敗回避の注意点まで網羅

「住宅ローンの繰り上げ返済するべきなのか知りたい」
「自分にとって損のない良い判断をしたい」

…という方におすすめの内容となっています。

この解説を最後までお読みいただければ、「住宅ローンの繰り上げ返済の全容」はもちろん、良い面・悪い面を多角的に理解できるようになります。また「お得度が高まる返済タイミング」も解説しています。

結果として、自分の状況では繰り上げ返済をしたほうが良いか、しないほうが良いか、賢い判断ができるはずです。ではさっそく解説を始めましょう。

この記事の監修者
【監修】ファイナンシャルプランナー茂木禄人

ファイナンシャルプランナー
茂木 禄人

株式会社Mapフィナンシャル において、独立系アドバイザーとして活動。詳細プロフィールはこちら

目次

住宅ローンの繰り上げ返済とは

まずは住宅ローンの繰り上げ返済の基礎知識から見ていきましょう。

1-1. 住宅ローンの繰り上げ返済の概要

住宅ローンの繰り上げ返済とは、住宅ローンとして借り入れた金額のうち一部または全部を、月々の返済とは別に、繰り上げて返済することです。

繰り上げ返済がよく行われるのは、例えば、貯蓄に余裕ができたときや、相続・贈与などでまとまったお金が入ったときです。

繰り上げ返済として返済した金額は、すべて元本(元金、借入金額)の返済に充てられます。

元本は利息を生じさせる元となる金額なので、繰り上げ返済すると当初支払う予定だった利息を減らすことができ、結果として総支払額を減らすことができます。

1-2. 繰り上げ返済の2つのやり方

繰り上げ返済のやり方としては、毎月の返済額はそのままにして借入期間を短縮する「(1)返済期間短縮型」と、借入期間はそのままにして毎月返済額を少なくする「(2)返済額軽減型」の2タイプがあります。

▼ 繰り上げ返済の2つのタイプ

タイプ 毎月返済額 借入期間
(1)返済期間短縮型 変更なし 短くする
(2)返済額軽減型 少なくする 変更なし

(1)返済期間短縮型

まず「返済期間短縮型」は、月々の返済金額はそのままにして、残りの返済期間を短くします。短縮された期間分の利息が軽減されるため、利息軽減効果が高いのが特徴です。

具体的にイメージしやすくするために、実際に計算してみましょう。

ここでは「借入金額3,000万円・借入期間35年・固定金利1.2%・元利均等の住宅ローンを、借入れから5年後に300万円を繰り上げ返済した場合」でシミュレーションしてみます。

▼ 「返済期間短縮型」のシミュレーション結果

繰り上げ返済
しなかった場合
繰り上げ返済
した場合
毎月返済額 87,510円 87,510円 0円
総返済額 36,754,200円 35,578,303円 ▲1,175,897円
残存返済期間 30年 26年1カ月 ▲3年11カ月

返済期間が3年11カ月短縮され、総返済額は117万円減ったことがわかります。

(2)返済額軽減型

次に「返済額軽減型」は、返済期間はそのままにして、月々の返済金額を少なくします。毎月の支出を減らすことにより、家計にゆとりを出せるのが特徴です。

同じく「借入金額3,000万円・借入期間35年・固定金利1.2%・元利均等の住宅ローンを、借入れから5年後に300万円を繰り上げ返済した場合」でシミュレーションしてみます。

▼ 「返済額軽減型」のシミュレーション結果

繰り上げ返済
しなかった場合
繰り上げ返済
した場合
毎月返済額 87,510円 77,583円 ▲9,927円
総返済額 36,754,200円 36,180,480円 ▲573,720円
残存返済期間 30年 30年 0年

返済期間はそのままで、月々の返済額が9,927円減り、総返済額は57万円減ったことがわかります。

1-3. 返済期間短縮型と返済額軽減型のどちらが良いか

ここまで見てきたとおり、同じ時期に同じ金額を繰り上げ返済する場合であれば、返済期間短縮型のほうが総返済額は少なくなります。

返済期間短縮型と返済額軽減型のどちらを選ぶべきか、基本的な考え方は以下のとおりです。

(1)返済期間短縮型 「総返済額」を減らすことを優先したい人向け
(2)返済額軽減型 「毎月の返済額」を減らすことを優先したい人向け

住宅ローンの繰り上げ返済のメリット

ここまで住宅ローンの繰り上げ返済の基礎知識についてご紹介してきました。

「そもそも、住宅ローンの繰り上げ返済をするか・しないかで迷っている」という方も多いでしょう。

そこでここからは、住宅ローンの繰り上げ返済のメリットとデメリットを解説します。まずはメリットから見ていきましょう。

①利息をカットし総返済額を減らせる
②新たなローンの借入可能額を増やせる
③ライフプランに合わせて返済計画を調整できる

2-1. 利息をカットし総返済額を減らせる

1つめのメリットは「利息をカットし総返済額を減らせる」ことです。

前章では返済期間短縮型・返済額軽減型のシミュレーション例をご紹介しましたが、ここで改めてまとめてみましょう。

▼ 借入金額3,000万円・借入期間35年・固定金利1.2%・元利均等の住宅ローンを、借入れから5年後に300万円を繰り上げ返済した場合のシミュレーション

繰り上げ返済しなかった場合 繰り上げ返済した場合
(1)返済期間短縮型 (2)返済額軽減型
総返済額 36,754,200円 36,180,480円 35,578,303円
利息軽減額 0円 ▲1,175,897円 ▲573,720円

このように繰り上げ返済することができれば、利息を大幅にカットすることが可能です。

上記の計算例では固定金利1.2%で試算していますが、金利が高くなるほど総返済額を軽減させる効果は高くなります。金利が高いほど、カットできる利息の額も高くなるためです。

2-2. 新たなローンの借入可能額を増やせる

2つめのメリットは「新たなローンの借入可能額を増やせる」ことです。

現在借り入れている住宅ローンに加えて、新たな住宅ローンや自動車ローン、教育ローンなどの借入れを検討している場合には、繰り上げ返済によって借入可能額を増やすことが可能です。

ローンを借り入れる際に特に重要な指標となるのが「返済負担率」で、返済負担率とは年収に占める年間返済額の割合のことです。

例えば【フラット35】の場合、利用条件としてすべての借入れに関して総返済負担率が以下の基準を満たしている必要があります。

▼ 【フラット35】の返済負担率の基準

年収

400万円未満 400万円以上
基準 30%以下

35%以下

出典:【フラット35】ご利用条件:長期固定金利住宅ローン

返済額軽減型の繰り上げ返済によって、年間返済額を下げれば、結果として返済負担率が下がるので、新たなローンの借入可能額を増やせます。

簡単に試算してみましょう。以下は年収500万円の場合のシミュレーションです。

▼ 年収500万円の人が、借入金額3,000万円・借入期間35年・固定金利1.2%・元利均等の住宅ローンを、借入れから5年後に300万円を繰り上げ返済した場合のシミュレーション

繰り上げ返済
しなかった場合
繰り上げ返済
した場合
毎月返済額 87,510円 77,583円
年間返済額 1,050,120円 930,996円
返済負担率 21.0% 18.6%

繰り上げ返済したことによって返済負担率が【21.0%→18.6%】と下がり、その分、新たなローンの借入可能額に余裕ができます。

2-3. ライフプランに合わせて返済計画を調整できる

3つめのメリットは「ライフプランに合わせて返済計画を調整できる」ことです。

繰り上げ返済によって、予定よりも早くローンを完済したり、あるいは月々の返済額を減らしたりと、返済計画を調整することでライフプランに合わせた資産形成が可能になります。

例えば、早期にローンを完済して老後資金の形成をスタートする、月々の返済額を減らして家計にゆとりを持たせるなど、柔軟な選択肢が生まれます。

ご自身や配偶者の年齢、子どもの成長、家族の形に合わせて返済計画を最適化できることは、繰り上げ返済のメリットです。

住宅ローンの繰り上げ返済のデメリット

次に住宅ローンの繰り上げ返済のマイナス面を見ていきましょう。

①手元のキャッシュ(現金、預貯金)が減る
②住宅ローン控除(減税)の適用外になるケースがある
③金融機関によっては繰り上げ返済手数料がかかる
④低金利・インフレ下では軽減効果が低い

“繰り上げ返済をするか・しないか”の判断は、個々の状況に照らし合わせてメリットとデメリットのどちらが大きいか次第になります。

あなた自身の状況では、メリット・デメリットのどちらが大きいかイメージしながら読み進めてみてください。

3-1. 手元のキャッシュ(現金、預貯金)が減る

1つめのデメリットは「手元のキャッシュ(現金、預貯金)が減る」ことです。

繰り上げ返済をすると、繰り上げ返済をした分のキャッシュは、当然ながら手元からなくなります。

繰り上げ返済をしてもなお、十分な手元資金がある場合には心配不要ですが、十分とはいえない場合には、以下のリスクが発生します。

▼ 手元資金が減るリスク

  • 病気・けがなど、いざというときの出費に対応できない
  • 想定外の教育費などへ対応できる範囲が狭まる
  • 突然の失業や収入減などがあると困窮してしまう

繰り上げ返済によって手元資金がなくなると、その分「万一のときのための備えの安心感」が減ることは、繰り上げ返済のデメリットといえます。

繰り上げ返済をする場合には「いくらまでなら、万一のときの備えを残したまま、繰り上げ返済ができるのか」を熟慮し、備えがなくなるほど無理して繰り上げ返済はしないことが大切です。

3-2. 住宅ローン控除の適用外になるまたは効果が低くなることがある

2つめのデメリットは「住宅ローン控除(減税)の適用外になるまたは効果が低くなることがある」ことです。

住宅ローン控除(正式名称:住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを利用する際に所得税が減税される制度です。

住宅ローンを借り入れた人の多くが利用している制度ですが細かな要件があり、繰り上げ返済によって適用要件を外れてしまうと、控除が受けられなくなります。

例えば「10年以上にわたり分割して返済する方法になっている新築又は取得のための一定の借入金又は債務」という要件があるため、繰り上げ返済によってローンの返済期間が10年以下になると控除が受けられません。

また控除額は住宅ローンの年末残高の合計額をもとに計算されるため、繰り上げ返済によってローン残高が少なくなると、その分、控除額が減ります。

「住宅ローン控除を優先させたほうがお得か、繰り上げ返済により利息負担の軽減を優先させたほうがお得か」は、借り入れているローンの金利やローン残高、返済期間など、それぞれの状況次第で変わります。事前に必ずシミュレーションしましょう。

参考:No.1213 住宅を新築又は新築住宅を購入した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁

3-3. 金融機関によっては繰り上げ返済手数料がかかる

3つめのデメリットは「金融機関によっては繰り上げ返済手数料がかかる」ことです。

例えば、三菱UFJ銀行の返済手数料は下表のとおりです。

▼ 一部繰上返済手数料(消費税込)

お申込み方法 返済手数料
インターネット 無料
電話・テレビ窓口 5,500円
窓口 16,500円

出典: 三菱UFJ銀行

例えば「少額ずつ小まめに繰り上げ返済を行いたい」と考えて、何度も繰り上げ返済を繰り返していると、利息カット分以上の返済手数料が発生する可能性もあり、注意が必要です。

3-4. 超低金利・インフレ下では軽減効果が低い

4つめのデメリットは「超低金利・インフレ下では軽減効果が低い」ことです。

ここまでにご紹介した住宅ローン控除との兼ね合いや返済手数料という出費と比較しながら検討しなければならないのが、「実際に住宅ローンの繰り上げ返済により、どれだけの軽減効果が得られるのか」という点です。

メリットの章でも解説したように、住宅ローンの繰り上げ返済は、それ単体で見れば、しないよりもしたほうがお得です。前述のとおり、支払予定だった利息分がカットできるためです。

しかし「その効果はデメリットを超えるほどか」は、個々のケース別に慎重に判断しなければなりません。

というのは、近年は超低金利時代です。「超低金利=そもそも支払うべき利息が少ない」ので、住宅ローンの利息カット効果は低くなります。

加えて、インフレ(物価が上がりお金の価値が下がる)が続く状況であれば、元本の返済はできるだけ後にしたほうがお得になります。

日本経済は長きにわたって緩やかなデフレが続いていますが、今後の経済がインフレになるか・デフレになるかは、専門家の間でも意見が分かれるところです。個々人が判断していくしかありません。

なお、ここでは住宅ローンの残額の一部を繰り上げ返済した場合のデメリットをご紹介しました。

全額を一括返済する場合には、住宅ローンに付帯していた団体信用生命保険がなくなるというデメリットもあります。

詳しくは「住宅ローンの一括返済についてまとめたこちらの記事」をご覧ください。

タイミングによって変わる繰り上げ返済の効果 3つのポイント

住宅ローンの繰り上げ返済のメリット・デメリットを解説してきましたが、繰り上げ返済をするか判断するうえでは、もうひとつ押さえておくべきポイントがあります。

それは「繰り上げ返済をするタイミングによって、効果はどう変わるのか」という視点です。

3つのポイントを解説しましょう。

① 時期:早いほど効果が高い
② 金利:高いほど効果が高い
③ 残高:多いほど効果が高い

4-1. 時期:早いほど効果が高い

1つめのポイントは「時期は早いほど効果が高い」ことです。

同じ金額を繰り上げ返済するなら、できる限り早い段階で実行したほうが、利息をカットできる金額が大きくなります。早期に元本を減らせば、その元本に対して将来的にかかる利息を軽減できるためです。

実際にシミュレーションしてみましょう。

「借入金額3,000万円・借入期間35年・固定金利1.2%・元利均等の住宅ローンで、300万円を返済期間短縮型で繰り上げ返済する場合」で、借入れから5年後に繰り上げ返済する場合と、15年後に繰り上げ返済する場合を比較してみます。

▼ 繰り上げ返済の時期による効果の違い

繰り上げ返済
しなかった場合
5年後に
繰り上げ返済した場合
15年後に
繰り上げ返済した場合
総返済額 36,754,200円 35,578,303円 36,030,412円
利息軽減額 0円 ▲1,175,897円 ▲723,788円

カットできる利息の額は、5年後に繰り上げ返済すると【117万円】、15年後に繰り上げ返済すると【72万円】となり、【約45万円】の差額が生まれることがわかります。

このように、繰り上げ返済をするなら、できるだけ早い時期にしたほうが得なことがわかります。

4-2. 金利:高いほど効果が高い

2つめのポイントは「金利は高いほど効果が高い」ことです。

「借入金額3,000万円・借入期間35年・元利均等の住宅ローンで、300万円を返済期間短縮型で5年後に繰り上げ返済する場合」で、金利が1%の場合と2%の場合を比較してみましょう。

▼ 金利による効果の違い
(1)固定金利1%

繰り上げ返済
しなかった場合
繰り上げ返済
した場合
総返済額 35,567,700円 34,613,225円
利息軽減額 0円 ▲954,475円

(2)固定金利2%

繰り上げ返済
しなかった場合
繰り上げ返済
した場合
総返済額 41,738,760円 39,532,630円
利息軽減額 0円 ▲2,206,130円

カットできる利息の額は、金利1%では【95万円】、金利2%では【220万円】と大きな差が出ることがわかります。

上表ではわかりやすく固定金利で計算しましたが、変動金利の場合には、金利が高くなっているときに繰り上げ返済したほうが得となります。

4-3. 残高:多いほど効果が高い

3つめのポイントは「残高は多いほど効果が高い」ことです。

これは1つめのポイントである「時期は早いほど効果が高い」にもつながりますが、繰り上げ返済をする時点での残高が多ければ多いほど、カットできる利息の額は高くなります。

「時期は早いほど効果が高い」という視点とは別に残高についても押さえておくと良いのは、複数のローンを借り入れている場合です。

金利などの諸条件が同じであれば、残高が多く残っているローンから優先して繰り上げ返済したほうが得となります。

住宅ローンの繰り上げ返済をすべき人・すべきでない人の判断基準

ここまでの解説を踏まえつつ、住宅ローンの繰り上げ返済をしたほうが良い人・しないほうが良い人をまとめておきましょう。

5-1. 住宅ローンの繰り上げ返済をしたほうが良い人

繰り上げ返済をしたほうが良い人はこちらです。

  • 繰り上げ返済をしても十分な手元資金が残る
  • 「新たなローンの借入枠を増やしたい」「月々の返済額を減らしたい」など明確な目的がある
  • 控除や手数料などを含めて具体的な金額をシミュレーションした結果、繰り上げ返済したほうがメリットがあることを確認できている
  • 住宅ローンの借入時から日が浅く(目安は10年以内)、残高が多く残っている

まず考慮すべきは「繰り上げ返済をしても、その後の生活や備えに支障が出ないか」という点です。

十分な預貯金がある場合や、遺産相続などで想定外のまとまったお金が入った場合などは、繰り上げ返済をしても良いといえるでしょう。

また、繰り上げ返済に対して明確な目的・意図がある場合(新たなローンの借入れのためなど)も、繰り上げ返済を積極的に検討して良いケースです。

その他には、ここまでにご紹介したメリット・デメリットを踏まえてシミュレーションした結果「繰り上げ返済したほうがメリットが大きい」と判断できており、住宅ローンの借入れから日が浅く多くの残高がある場合には、繰り上げ返済によって後悔するリスクは少ないといえます。

5-2. 住宅ローン繰り上げ返済をしないほうが良い人

次に繰り上げ返済をしないほうが良い人について見ていきましょう。

  • 繰り上げ返済をすると十分な手元資金が確保できなくなる
  • どうしても繰り上げ返済したい理由や事情は特にない
  • 控除や手数料などを含めてシミュレーションすると繰り上げ返済の効果があまり期待できない
  • 住宅ローンの返済年数が残りわずかで残高が少ない

先に述べた「繰り上げ返済したほうが良い人」の裏返しとなりますが、手元資金に余裕がないのに無理して繰り上げ返済をする必要性はありません。

特に現在は低金利が続いています。手元資金をつぎ込んでまで繰り上げ返済する価値はないといって良いでしょう。

控除や手数料を含めてシミュレーションすると「繰り上げ返済しても、自分が期待するほど利息がカットできない」と感じる場合や、残高が残りわずかで効果が低い場合には、繰り上げ返済しない選択肢を検討してください。

住宅ローンの繰り上げ返済のシミュレーションができるページ

正しく判断するためには、ご自身の状況で具体的な数字をシミュレーションすることが大切です。

多くの金融機関のWebサイトでシミュレーションできるページが準備されていますので、まずは住宅ローンを借り入れている金融機関のシミュレーションページを探してみましょう。

なお、主要なシミュレーションページを以下にまとめましたので参考にしてみてください。

▼ 住宅ローン繰り上げ返済のシミュレーションができるページ

注意点として、金融機関のシミュレーションでは住宅ローン控除への影響は試算できません。住宅ローン控除については、それぞれの状況に合わせて各自確認しましょう。

住宅ローンの繰り上げ返済をする流れ 3ステップ

住宅ローンの繰り上げ返済をすることに決めたら、どんな手続きをしたら良いのでしょうか。

実際の手続きの詳細は金融機関によっても異なりますが、ここでは一般的な流れについてご紹介しましょう。

7-1. ステップ1:事前に金融機関に申し出る

1つめのステップは「事前に金融機関に申し出る」です。

窓口で手続きする場合には金融機関の窓口で、インターネットで手続きする場合にはインターネット上から申し出ます。

インターネットの場合には、繰り上げ返済専用の依頼フォームが用意されていることが多いため、借り入れている金融機関のWebサイトやアプリを確認しましょう。

申し出の期限は「繰り上げ返済したい日の1カ月前まで」と定められているのが一般的です。

金融機関に申し出ると、申請書などその後の手続きに必要な書類を受け取ることができます。

7-2. ステップ2:正式に申込みする

2つめのステップは「正式に申込みする」です。

ステップ1で金融機関から指定された日までに、受け取った申請書に必要事項を記入し、金融機関に提出します。

インターネット上から申し出を行った場合も、定められた正式申込み受付期間内に、正式申込みの操作を行います。

正式申込みをする際には、金融機関から提示されたシミュレーション結果をよく確認し、間違いがないことを確認しましょう。

7-3. ステップ3:入金する

3つめのステップは「入金する」です。

金融機関から指定された日までに、繰り上げ返済する金額を、返済指定口座に入金します。

無事に引き落とされたら、繰り上げ返済の完了です。

住宅ローンの繰り上げ返済をする際の注意点

最後に、住宅ローンの繰り上げ返済をする際の注意点をお伝えします。

8-1. 家計を切り詰めてまで繰り上げ返済するのはやめる

1つめの注意点は「家計を切り詰めてまで繰り上げ返済するのはやめる」ことです。

ここまで繰り返しお伝えしてきたことですが、繰り上げ返済において最も避けなければならない失敗は、繰り上げ返済したせいでキャッシュ(現金、預貯金)が減ってしまい、いざというときの備えがなくなることです。

不測の事態が起きてから、
「こんなことなら繰り上げ返済なんかするんじゃなかった」
と後悔しないように、十分な手元資金を残したうえで余剰金で繰り上げ返済を行いましょう。

8-2. 住宅ローン控除との兼ね合いなどを事前に必ずシミュレーションする

2つめの注意点は「住宅ローン控除との兼ね合いなどを事前に必ずシミュレーションする」ことです。

住宅ローンの繰り上げ返済をしたほうが良いのか、しないほうが良いのか、これは一概には断定できないのが現実です。

というのは、個々の状況によってカットできる利息の額や住宅ローンの控除額など、判断のもととなる諸条件に違いが出るためです。

大切なのは、あなた自身が自分の住宅ローンの状況を正しく把握して判断することです。そのために、シミュレーションをしっかり行いましょう。

8-3. 不明な点は借入れ金融機関や専門家に相談する

3つめの注意点は「不明な点は借入れ金融機関や専門家に相談する」ことです。

自分だけでは状況把握がなかなかできない場合は、住宅ローンを借り入れた金融機関の窓口に相談に行きましょう。

現在の家計の状況や今後の資金計画、希望などを伝えて、最も良い繰り上げ返済の方法は何になるのか、相談するのが得策です。

あるいは、お金の専門家であるファイナンシャル・プランナーなどに相談するという選択肢もあります。

例えば日本FP協会のWebサイト「ファイナンシャル・プランナー(FP)に相談しよう」から、相談することが可能です。

必要なサポートを得ながら、ベストな選択肢を検討していきましょう。

まとめ

住宅ローンの繰り上げ返済とは、住宅ローンとして借り入れた金額のうち一部または全部を、月々の返済とは別に、繰り上げて返済することです。

繰り上げ返済として返済した金額は、すべて元本(元金、借入金額)の返済に充てられ、利息をカットする効果があります。

繰り上げ返済のやり方には、毎月の返済額はそのままにして借入期間を短縮する「返済期間短縮型」と、借入期間はそのままにして毎月返済額を少なくする「返済額軽減型」の2タイプがあります。

住宅ローンの繰り上げ返済のメリットは以下のとおりです。

①利息をカットし総返済額を減らせる
②新たなローンの借入可能額を増やせる
③ライフプランに合わせて返済計画を調整できる

住宅ローンの繰り上げ返済のデメリットは以下のとおりです。

①手元のキャッシュ(現金、預貯金)が減る
②住宅ローン控除の適用外になるまたは効果が低くなることがある
③金融機関によっては繰り上げ返済手数料がかかる
④超低金利・インフレ下では軽減効果が低い

タイミングによって変わる繰り上げ返済の効果は変わります。

①時期:早いほど効果が高い
②金利:高いほど効果が高い
③残高:多いほど効果が高い

住宅ローンの繰り上げ返済をしたほうが良い人・住宅ローン繰り上げ返済をしないほうが良い人は以下のとおりです。

◎したほうが良い人 ✕しないほうが良い人
  • 繰り上げ返済をしても十分な手元資金が残る
  • 「新たなローンの借入枠を増やしたい」「月々の返済額を減らしたい」など明確な目的がある
  • 控除や手数料などを含めて具体的な金額をシミュレーションした結果、繰り上げ返済したほうがメリットがあることを確認できている
  • 住宅ローンの借入時から日が浅く(目安は10年以内)、残高が多く残っている
  • 繰り上げ返済をすると十分な手元資金が確保できなくなる
  • どうしても繰り上げ返済したい理由や事情は特にない
  • 控除や手数料などを含めてシミュレーションすると繰り上げ返済の効果があまり期待できない
  • 住宅ローンの返済年数が残りわずかで残高が少ない

住宅ローンの繰り上げ返済をする際の注意点としては以下が挙げられます。

①家計を切り詰めてまで繰り上げ返済するのはやめる
②住宅ローン控除との兼ね合いなどを事前に必ずシミュレーションする
③不明な点は借入れ金融機関や専門家に相談する

この記事の制作体制
  • 大月知香

    ゼロリノベの編集者。大学時代にデンマークへの留学を通して、北欧の人々の住まいに対する美意識の高さに感化される。暮らしにおける「住」の重要性を伝えたいと住宅雑誌の編集を経験。より自分らしく、自由に生きられる選択肢の一つとしてリノ...

  • 茂木 禄人

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