住宅ローン控除の申請は初年度が確定申告、2年目から年末調整が可能に。手続きや必要書類・注意点をわかりやすく解説。
住宅ローン控除の申請は初年度が確定申告が必要で、2年目から年末調整が可能になります。「住宅ローン控除の年末調整について知りたい」「スムーズに年末調整を終わらせたい」という方に向けて、手続きや必要書類、注意点についてわかりやすく解説します。
よくあるご質問
住宅ローン控除の申請をする最初の年は年末調整が必要ですか?
住宅ローン控除の申請をする最初の年(初年度)は、年末調整では申請ができません。そのため、すべての人が、「確定申告」で住宅ローン控除の申請をする必要があります。
住宅ローン控除の確定申告について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
2年目以降の年末調整の際にはどんな書類が必要ですか?
住宅ローン控除を年末調整で行う場合には、会社の年末調整の際に、次の2つの書類を提出します。
- 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
詳細はこちらをご覧ください。
還付金が振り込まれない場合の対処法は?
住宅ローン控除の申請を年末調整で行った場合には、還付金が単体で口座に振り込まれるのではなく、会社から給与と一緒に振り込まれるのが一般的です。確定申告で申請した場合には、税務署から還付金が振り込まれ、金額が記載された通知ハガキが届きます。
しかし、年末調整では、会社から受け取ることになります。具体的な振込の時期は、企業によって異なるため、会社の経理担当者に確認しましょう。
ファイナンシャルプランナー
茂木 禄人
株式会社Mapフィナンシャル において、独立系アドバイザーとして活動。詳細プロフィールはこちら
住宅ローン控除の年末調整とは
まずは住宅ローン控除の年末調整について、基本的な知識から見ていきましょう。
1-1. 1年目は確定申告が必要
住宅ローン控除の申請の方法には、以下の2通りがあります。
- 確定申告
- 年末調整
しかし、住宅ローン控除の申請をする最初の年(初年度)は、年末調整では申請ができません。
すべての人が、確定申告で住宅ローン控除の申請をする必要があります。
なお、住宅ローン控除の確定申告について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
1-2. 2年目以降は年末調整で申告する
住宅ローン控除の1年目を確定申告で申請した後、2年目以降は、確定申告または年末調整のどちらかで住宅ローン控除の申請をしていくことになります。
現在、会社などに勤務していて毎月給与をもらっているなら、毎年11月〜12月頃に会社から年末調整の書類の提出を求められるはずです。
例えば、生命保険に加入している人であれば、保険会社から郵送される生命保険料控除証明書をもとに、保険料控除の申告をしたことがあるでしょう。
または、扶養している家族や配偶者がいる人なら、扶養控除や配偶者控除などの申告をしているはずです。
▼ 年末調整の申告書
同じく住宅ローン控除の必要書類も、年末調整のときに会社に提出すれば、住宅ローン控除の申請は完了です。
自分で必要書類を作成し税務署に提出する確定申告と比較すると、年末調整のほうが簡単に手続きを済ませられます。
1-3. そもそも年末調整とは?
「そもそも年末調整が何かわからない」という方へ、年末調整について触れておきましょう。
年末調整の対象となる人は、会社などに勤務していて毎月の給与を受け取っている人です。実際に振り込まれる給与の金額からは、確定前の大まかな所得税額が天引きされています。
年末調整は、住宅ローン控除をはじめとする控除や一年間の実際の給与金額をもとに、確定の所得税額を算出し、天引きしていた金額との差分を調整する手続きです。
よって、年末調整の対象となっている人は、年末調整の際に会社に住宅ローン控除の必要書類を提出します。
すると、住宅ローン控除を反映した所得税額が算出され、多く天引きされていた分が還付金として返ってきます。
住宅ローン控除の年末調整で提出する書類
住宅ローン控除を年末調整で行う場合には、会社の年末調整の際に、次の2つの書類を提出します。
- 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
2-1. 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」は、確定申告した1年目の10月頃に、税務署から郵送されます。
例えば、2024年2月〜3月に初年度の確定申告をした場合、2024年10月頃に届きます。
このとき、1年分ではなく、住宅ローン控除の対象年分すべてが一括して送付されてきますので、紛失しないように保管しておきましょう。
「住宅ローン控除の適用が13年」であれば、すでに確定申告済みの1年目を除き、2年目以降の12年分の書類が一括して送付されます。
受け取った給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書を、毎年年末調整のたびに1年分ずつ、会社に提出していきます。
2-2. 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」は、年1回、毎年10月頃のタイミングで、住宅ローンを借り入れている金融機関から郵送されてきます。
郵送されてきたら大切に保管し、会社の年末調整のタイミングで提出しましょう。
参考:No.1213-1 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
参考:No.1213-3 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
こんなときどうする?年末調整で住宅ローン控除にまつわるトラブル
年末調整で住宅ローン控除の申告をする際、ありがちなトラブルが3つあります。
- トラブル1:必要書類を提出するのを忘れた
- トラブル2:還付金が振り込まれない
- トラブル3:必要書類を紛失した
それぞれ、ご紹介しましょう。
3-1. トラブル1:必要書類を提出するのを忘れた
1つめは「必要書類を提出するのを忘れた」というトラブルです。
住宅ローン控除の必要書類を添付しないままに年末調整の書類を会社に提出してしまった場合、まずは会社の年末調整の担当者(経理や総務など)に、すぐ確認しましょう。
会社が従業員から必要書類を回収した後、税務署に提出するまでには期間があるので、まだ修正が間に合う可能性があります。
もし会社から税務署へ提出済だった場合でも、諦めることはありません。
1年目と同じように、確定申告を行って、住宅ローン控除の申請を行うという方法があります。
【2月16日〜3月15日】の確定申告の期間中に、忘れずに確定申告で申請を行いましょう。
確定申告による住宅ローン控除について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
3-2. トラブル2:還付金が振り込まれない
2つめは「還付金が振り込まれない」というトラブルです。
まず、住宅ローン控除の申請を年末調整で行った場合には、還付金が単体で口座に振り込まれるのではなく、会社から給与と一緒に振り込まれるのが一般的です。
確定申告で申請した場合には、税務署から還付金が振り込まれ、金額が記載された通知ハガキが届きます。
しかし、年末調整では、会社から受け取ることになります。
具体的な振込の時期は、企業によって異なりますので、会社の経理担当者に確認しましょう。
3-3. トラブル3:必要書類を紛失した
3つめは「必要書類を紛失した」というトラブルです。
「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」を紛失した場合には税務署へ、「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を紛失した場合には金融機関へ、再発行を依頼しましょう。
特に、住宅ローン控除が適用される年数分の書類が一括郵送される「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」は、紛失トラブルが起きやすい書類です。
紛失しないように注意するとともに、紛失した際には、すみやかに再発行の手続きを取りましょう。
手続きの詳細については、以下のページをご覧ください。
参考:[手続名]年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除関係書類の交付申請手続|国税庁
住宅ローン控除の年末調整の注意点
最後に、住宅ローン控除の年末調整の注意点について、お伝えします。
4-1. 年末残高等証明書発行後の繰り上げ返済は証明書の再発行が必要になる
年末残高等証明書は10月頃に金融機関から発行され、発行時から年末までの分は、見込の金額で算出されています。
そのため、年末残高等証明書が発行された後、年末までの間に繰り上げ返済を行うなど、イレギュラーの対応をした場合には注意が必要です。
先に発行されている年末残高等証明書の残高と実際の残高にズレが生じ、再発行が必要になるためです。
多くの金融機関では、9月末時点の情報をもとに、10月以降に年末残高等証明書が郵送されます。
実際の残高とズレる場合には、再発行の手続きをするように注意しましょう。
まとめ
住宅ローン控除の申請は、1年目はすべての人が確定申告で行う必要がありますが、2年目以降は年末調整でも申請できます。
勤務先へ年末調整の書類を提出する際に、以下の書類をあわせて提出します。
- 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
年末調整で住宅ローン控除の書類を提出するのを忘れた場合には、確定申告する必要がありますので、忘れないように注意しましょう。
住宅ローン控除の必要書類について詳しくは、以下の記事でも解説しています。あわせてご覧ください。
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