住宅ローンに必須の火災保険とは?よくあるQ&Aと気を付けたい注意点
多くの住宅ローンでは、融資の条件として、火災保険の加入が必須となっています。そもそも火災保険に入らないと、ほとんどの住宅ローンは契約できません。
ですが、たとえ金融機関から火災保険の加入を指定されていなくても、住宅ローンを契約してマイホームを所有したら、必ず加入すべき保険が火災保険といえます。
なぜなら、住宅が火災や自然災害などによって損害を被ったとき、「住まいを失い、多額の住宅ローンだけが残る」という最悪の事態から身を守るために、火災保険は必要不可欠だからです。
しかし、住宅ローンの契約時には火災保険の詳細まで思慮を巡らす余裕のない人が多く、最適な火災保険を選んでいるとは言いがたい現実があります。
そこで本記事では、住宅ローンを組んで家を買うならしっかり考えたい「火災保険」について、詳しく解説します。
<本記事のポイント>
- 住宅ローン契約時に必要な火災保険の基本がわかる
- よくある疑問・質問をQ&A形式で解説
- 事前に知っておきたい注意点が把握できる
「住宅ローンを組むには火災保険が必要と言われて調べている」
「知識をつけて損しない選択をしたい」
…という方におすすめの内容となっています。
この解説を最後までお読みいただければ、「住宅ローンに必要な火災保険とは何か」はもちろん、実際に火災保険を選ぶポイントや注意点まで把握できます。
結果として、自分と家族にとって最適な火災保険を選べるはずです。ではさっそく解説を始めましょう。
ファイナンシャルプランナー
茂木 禄人
株式会社Mapフィナンシャル において、独立系アドバイザーとして活動。詳細プロフィールはこちら
多くの住宅ローンで火災保険は加入が必須
まずは「住宅ローンを借りるには、火災保険って本当に必須なの?」
という疑問からクリアにしていきましょう。
結論からお伝えすると、“多くの住宅ローンで火災保険は必須”となります。
1-1. 火災保険に入らないとほとんどの住宅ローンは契約できない
住宅ローンを融資している多くの金融機関が、融資の条件として「火災保険の加入」を指定しています。
例えば、住宅金融支援機構が扱う「フラット35」では、火災保険について以下のとおり定めています。
- 返済終了までの間、借入対象となる住宅については、火災保険(損害保険会社の火災保険または法律の規定による火災共済)に加入していただきます。※1
- 建物の火災による損害を補償対象としていただきます。
- 保険金額は、借入額以上※2としていただきます。
※1 保険期間および火災保険料の払込方法は、取扱金融機関により異なります。 また、取扱金融機関によっては火災保険金請求権への質権設定が必要な場合があります。
※2 借入額が損害保険会社の定める評価基準により算出した金額(評価額)を超える場合は評価額とします。
* 火災保険料は、お客さまの負担となります。
* 火災保険に関する要件は、お申込みの取扱金融機関にご確認ください。
出典:フラット35
このように、火災保険が住宅ローンの必須条件とされる背景には、金融機関が対象住宅に対して抵当権を設定していることが挙げられます。
抵当権とは、住宅ローンの返済ができなくなった場合に備えて、家を担保にとるということです。
金融機関としては、担保にとっている住宅が損害を受けたときのリスクに備えて、火災保険の加入を借り入れ条件としているのです。
1-2. 保険金請求権に質権設定されることもある
金融機関によっては、火災保険の加入を借り入れ条件とするだけでなく、住宅ローンの借入金の担保として、火災保険の保険金請求権に対して質権設定することもあります。
これは、住宅ローンの完済前に住宅が火災などの損害を受けて、保険会社から火災保険の保険金が支払われることになった場合、その保険金を金融機関が請求できる権利です。
なお、近年では、火災保険の加入は必須でも、質権設定されるケースは減っていますので、それぞれ確認が必要です。
1-3. 金融機関で指定されなくても加入すべき保険が火災保険
ここまで見てきたとおり、住宅ローンを契約する条件として必須となるのが火災保険ですが、
「必須でなかったら入らないでOKか?」
というと、そうとはいえません。
たとえ金融機関から指定されていなかったとしても、住宅ローンを契約してマイホームを購入するなら、これから起こり得るリスクに備えるために加入すべき保険が火災保険です。
もし火災保険に加入していなかったら、火事、台風、洪水などで家を失ったとき、住まいはなくなって住宅ローンの返済だけが残り、非常に苦しい状況に陥ってしまいます。
実際、内閣府の資料によれば、82%の世帯(2,880万件)が火災保険に加入していると試算されています(出典:内閣府)。
火災保険は、住宅を購入して所有するすべての人にとって不可欠な保険です。
具体的に、火災保険によってどんなリスクに備えることができるのか、詳しくは次章で解説しましょう。
そもそも火災保険とは何か
さて、ここからは「そもそも火災保険とは何か」を、改めて詳しく見ていきましょう。
2-1. 火災保険とは火災や自然災害などに備える損害保険
火災保険とは、火災や自然災害などにより生じた損害を補償する保険です。
「火災保険」という名称から、“火災保険=火災に備える保険”と思いがちですが、火災保険によって補償される損害は火災だけではありません。
例えば、台風、竜巻、突風、大雨によって発生した洪水、土砂崩れ、大雪などによる自然災害も、火災保険によって補償される範囲です。
ほかにも、外部から車が飛び込んでくる交通事故、水道管の破裂による水漏れ、強盗や盗難による損害などにも、火災保険によって備えることができます(詳しくは後述します)。
2-2. 火災保険の対象は「建物」「家財」
より具体的に火災保険の内容を見てみましょう。まず火災保険をかけられる対象は「建物」と「家財」です。
▼ 火災保険の対象にできるもの
建物 | 被保険者が所有している住居にのみ使用される建物と、その建物に付属する門や塀など |
家財 | 保険の対象となる建物の中にある、被保険者または被保険者と生計を共にする親族が所有する家財例:家具、家電製品、食器、絵画、骨董品、自転車など |
参考:ソニー損保
簡単にいえば、“建物=私たちが住居と呼んでいる建物そのもの”、“家財=住居の中に置いてある財産”となります。
金融機関からの指定で火災保険に加入する場合、必須となるのは「建物」です。火災保険に加入する際には、対象を「建物のみ」とするか、「建物+家財」にするかを、選択することになります。
2-3. 火災保険で補償できる損害
火災保険で補償できる損害は、どの火災保険に加入するかによって異なりますが、ここでは基本的な補償内容を見てみましょう。
▼ 火災保険の補償対象となる損害(ソニー損保の例)
保険金が支払われる事由 | |
火災、落雷、破裂・爆発 | 火災、落雷、破裂・爆発により建物や家財に損害が生じた場合 |
風災、雹(ひょう)災、雪災 | 台風などの風災、雹(ひょう)災、または豪雪などの雪災で建物や家財に損害が生じた場合 |
水災 | 台風や暴風雨などが原因で起こる洪水・高潮・土砂崩れなどにより、建物や家財に再調達価額の30%以上の損害が生じたとき、または建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmを超える浸水となった結果、損害が生じたとき |
水濡れ、外部からの物体の衝突など | 給排水設備の事故や他の戸室からの水漏れにより水濡れが生じた場合や、建物外部からの物体の飛来・落下・衝突、車の飛び込みや、騒擾(そうじょう)等に伴う破壊行為で建物や家財に損害が生じた場合 |
盗難 | 強盗や窃盗(これらの未遂も含まれる)により損害を受けた場合 |
参考:ソニー損保
上記は一例となります。ほかにもオプションや特約によって、補償の範囲をカスタマイズできます。
2-4. 地震保険は別途加入が必要になる
火災保険において注意すべきポイントがひとつあります。それは「地震による損害」に備える地震保険の扱いです。
火災保険では、地震を原因とする火災や倒壊は、補償の対象外となります。地震のリスクに備えるためには、地震保険に加入しなければなりません。
地震保険は、政府と保険会社が共同で運営している保険で、地震や噴火、またはこれらによる津波を原因として損害が生じた場合に、保険金が支払われます。
- 地震により火災(延焼を含む)が発生し、家が焼失した。
- 地震により家が倒壊した。
- 噴火により家が損壊した。
- 津波により家が流された。
- 地震により家が埋没した。
地震保険は、単独で契約することはできず、火災保険とあわせてセットで契約する決まりになっています。
よって、火災保険を契約するタイミングで、地震保険もセットにするか・しないかを決め、火災保険の申込書に記載する段取りとなります。
という方もいるでしょう。
地震保険はつけたほうが、もちろん安心です。可能な限り、地震保険にも加入しましょう。
ただし、地震保険を付帯すれば、当然ながら保険料が高くなるというトレードオフの関係にあります。予算上、厳しいという場合には、それぞれの住宅の状況にあわせて判断が必要です。
例えば、“マンションで、共用部分は管理組合で地震保険に加入している”といったケースであれば、個人での地震保険の加入は見送るという選択肢もあります。
より詳しく知りたい方は、マンションの地震保険について解説しているこちらの記事もご覧ください。
火災保険の保険料の相場
ここで「火災保険に加入すると支払う保険料の金額が知りたい」という方もいるでしょう。
火災保険は、対象物件の評価額や構造(木造/鉄筋など)、補償内容、所在地などによって大きく変動しますので、一概にはいえません。
例えば、東京都内・木造・新築一戸建て(100平米)で、火災・風災を補償した場合であれば、【年間8万円〜10万円程度】が目安となります。
自分が購入する物件での相場を知るためには、シミュレーションサイトを利用するのがおすすめです。条件を入力するだけで、その場で相場が表示されます。
▼ 火災保険の保険料がシミュレーションできるサイト
住宅ローンの火災保険でよくあるQ&A
次に、住宅ローンの火災保険でよくあるQ&Aにお答えします。
4-1. 【Q1】火災保険の加入は絶対に強制ですか?入らないことはできますか?
火災保険の加入が借り入れ条件になっている住宅ローンを申し込みたい場合には、必ず火災保険の加入が必要になります。
住宅ローンを契約する際に、火災保険の申込書や保険証券などの必要書類の提出を求められます。
火災保険の加入が必要な住宅ローンにもかかわらず、火災保険に加入しなかった場合には、住宅ローンの契約が締結できないので、融資を受けられません。
4-2. 【Q2】住宅ローンの借入金額に保険料を組み込みできますか?
住宅ローンの借入金額に、火災保険の保険料を組み込みできるかどうかは、住宅ローンの種類によって異なります。
諸費用込みで、物件価格以上の金額を借りられる「オーバーローン」のうち、諸費用に火災保険料が含まれている住宅ローンであれば、住宅ローンの借入金額に保険料を含むことができます。
より詳しく知りたい方は、住宅ローンのオーバーローンについて解説しているこちらの記事をご覧ください。
4-3. 【Q3】火災保険にはいつまで加入する必要がありますか?
火災保険の加入が借り入れ条件になっている場合、基本的に住宅ローンの返済期間中は火災保険に加入し続ける必要があります。
例えば、住信SBIネット銀行の商品概要説明書では、以下のとおり記載されています。
※ 火災保険料は、お客さまのご負担となります。
出典:住信SBIネット銀行
4-4. 【Q4】後から火災保険を解約や見直ししても良いですか?
火災保険の加入が借り入れ条件となっている場合には、住宅ローンを完済するまでは、火災保険を解約できません(完済後であれば解約可能)。
火災保険の内容の見直しや保険会社の変更は可能ですが、保険金請求権に質権設定されている場合には、金融機関の同意が必要になります。
住宅ローンを組むときの火災保険の選び方 3ステップ
実際に住宅ローンを組むときには、どのように火災保険を選んだら良いのでしょうか。簡単に流れをご紹介しましょう。
- ステップ1:災害リスクの情報を入手する
- ステップ2:保険の対象・補償内容を検討する
- ステップ3:見積もりを取り予算に合わせて調整する
5-1. ステップ1:災害リスクの情報を入手する
1つめのステップは「災害リスクの情報を入手する」です。
住宅ローンを申し込んでマイホームを購入するときには、土地勘のない新たな地域へ引っ越すケースも多いはずです。
まずは、新居の所在地で発生する可能性が高いリスクを理解し、どんな損害に備えるべきなのか把握することから始めましょう。
災害リスクの情報を入手するうえで役立つリンクを以下にまとめましたので、ご活用ください。
5-1-1.災害リスクに関する情報リンク一覧
風水害・土砂災害リスクに関する情報
地震リスクに関する情報
火山リスクに関する情報
その他自然災害全般に関するリスク情報など
5-2. ステップ2:保険の対象・補償内容を検討する
2つめのステップは「保険の対象・補償内容を検討する」です。
新居にどんなリスクがあるのか把握できたら、次は火災保険の内容を検討していきます。
▼ 保険の対象
▼ 補償内容
・風災、雹(ひょう)災、雪災
・水災
・水ぬれ
・外部からの物体の衝突など
・盗難
・その他
家計と相談しながら、ステップ1で調べたリスク情報に基づき、発生する可能性が高いリスクから優先してカバーしましょう。補償は多くつけたほうが安心感がありますが、その分、支払う保険料が高くなります。
5-3. ステップ3:見積もりを取り予算に合わせて調整する
3つめのステップは「見積もりを取り予算に合わせて調整する」です。
ある程度、加入したい火災保険の内容が固まってきたら、早めに見積もりを取りましょう。
どの保険会社も、公式サイトから見積もり依頼ができるようになっていますので、複数の保険会社の見積もりを取り寄せて、比較検討することをおすすめします。
また、火災保険は住宅ローンを組む金融機関を経由して契約すると割引適用されることが多いため、金融機関にも見積もりを依頼しましょう。
住宅ローン契約時に火災保険を選ぶうえでの注意点
住宅ローン契約時に加入する火災保険では、あらかじめ知っておきたい注意点があります。
2.地震が原因の火災や倒壊に備えるためには地震保険に加入する
6-1. 住宅ローン利用者専用の火災保険にはメリットとデメリットがある
1つめの注意点は「住宅ローン利用者専用の火災保険にはメリットとデメリットがある」ことです。
先ほど“火災保険は住宅ローンを組む金融機関を経由して契約すると割引適用されることが多い”とお伝えしたのですが、住宅ローン利用者専用の火災保険を検討する際には、メリットとデメリットを把握しておくことが大切です。
6-1-1.メリット:団体割引で割引率が高い(最大20%程度)
住宅ローンを借りる金融機関で火災保険に加入するメリットは、割引率が高いことです。団体扱いにより保険料が割安になり、最大20%程度の割引が適用になります。
同等の補償内容であれば、保険会社の代理店などを経由して申し込むよりも、金融機関で申し込んだほうが保険料を節約できます。
6-1-2.デメリット:パッケージになっておりカスタマイズが難しい
住宅ローンを借りる金融機関で火災保険に加入するデメリットは、カスタマイズが難しいことです。
決められたパッケージの中から選択する方式になっていることが多く、自分の状況に合わせた細かいカスタマイズはできないことがあります。
「金融機関が紹介している火災保険のなかに、自分のニーズに合う火災保険がない」というケースもありますので、注意しましょう。
6-2. 地震が原因の火災や倒壊に備えるためには地震保険に加入する
2つめの注意点は「地震が原因の火災や倒壊に備えるためには地震保険に加入する」ことです。
繰り返しになりますが、地震によって発生した火災や倒壊、津波による損害などは、火災保険では補償の対象外となります。
地震が原因の被害に備えるためには、地震保険に加入しなければなりません。地震保険は単体で加入することはできず、地震保険に加入するには、火災保険にセットする形で加入する必要があります。
地震保険料は、以下のページで簡単に試算できます。
参考:地震保険 地震保険料の試算|日本損害保険協会
大地震の発生が予測される昨今です。保険料をシミュレーションして、可能な限りは地震保険も付帯しておくと良いでしょう。
まとめ
多くの住宅ローンで火災保険は加入が必須となっています。火災保険に入らないとほとんどの住宅ローンは契約できません。
ただ、たとえ金融機関で指定されなくても、マイホームを所有したら加入すべき保険が火災保険といえます。
火災や自然災害などによって損害を被ったとき「住まいを失い住宅ローンだけが残る」という最悪の事態から身を守るために必要不可欠なのが、火災保険です。
住宅ローンを組むときの火災保険の選び方は以下のとおりです。
- ステップ1:災害リスクの情報を入手する
- ステップ2:保険の対象・補償内容を検討する
- ステップ3:見積もりを取り予算に合わせて調整する
住宅ローン契約時に火災保険を選ぶうえでの注意したい点はこちらです。
- 住宅ローン利用者専用の火災保険にはメリットとデメリットがある
- 地震が原因の火災や倒壊に備えるためには地震保険に加入する
住宅ローンを組むときには、火災保険についても十分に吟味して、可能性が高いリスクには万全の備えをしましょう。それが、安心して住宅ローンを契約することにつながります。
なお、火災保険のほかに住宅ローン借り入れ時に加入が必要な保険については、以下の記事をご覧ください。