MENU

住宅ローンの抵当権|設定・抹消に必要な書類と手続きの流れを解説

住宅ローン 抵当権 アイキャッチ

「住宅ローンの抵当権ってどういうもの?」
「抵当権を抹消する手続きをしたいけれど、どうすればいい?」

家の抵当権について、そのような疑問や悩みを持っている人は多いのではないでしょうか。

「抵当権」とは、「住宅ローンなどを組んで不動産を購入した際に、融資する側(銀行など)がその不動産に対して設定する権利」です。
いわゆる「担保」として、もし住宅ローンを長期間滞納した場合には、強制的に家を競売にかけてお金を回収することができます。

この抵当権は、住宅ローンを組むときにはほぼ必ず設定され、ローンを完済したときには抹消する手続きをしなければなりません。
なぜなら、抵当権が残ったままの不動産は売却しにくく、相続の際にも面倒な手間が増えてしまうからです。

そこでこの記事では、抵当権とは何か、どのように設定してどのように抹消するのかをわかりやすく解説していきます。

まず最初に、

  • 「抵当権」とは何か
  • 住宅ローンの返済が滞るとどうなるか

を説明し、その上で、

  • 抵当権の設定に必要な書類、手続きの時期、費用、流れ
  • 抵当権の抹消に必要な書類、手続きの時期、費用、流れ
  • 抵当権の抹消手続きをしないとどんな不都合があるか

について、詳しく実践的に解説します。

最後まで読めば、抵当権の設定や抹消の手続きを迷わず進められるようになるでしょう。
この記事で、あなたの家の抵当権が適切に処理されることを願っています。

この記事の監修者
【監修】ファイナンシャルプランナー茂木禄人

ファイナンシャルプランナー
茂木 禄人

株式会社Mapフィナンシャル において、独立系アドバイザーとして活動。詳細プロフィールはこちら

目次

住宅ローンの抵当権とは

住宅ローンの抵当権とは住宅ローンの抵当権と聞くと、どのようなイメージを持つでしょうか?まずはこの言葉の意味から考えてみましょう。

1-1.「抵当権」とは何か?

最初に知っておきたいのは、「抵当権」とは何なのか、ということです。
簡単にいえば、

◎住宅ローンなどを組んで不動産を購入した際に、融資する側(銀行など)がその不動産に対して設定する権利。融資を受けた人が返済できなくなった場合、所定の手続きを取り抵当権を持つ債権者が建物と土地を競売にかけることができる。

というものです。
「担保」とも言われ、抵当権のついたローンは「有担保ローン」、抵当権なしのものを「無担保ローン」と呼んでいます。

実際にローンを組む際には、融資をしてくれる金融機関側から抵当権の設定を求められます。司法書士に依頼して手続きしてもらうのが一般的です。
また、ローンを完済した際には、抵当権を抹消する手続きが必要になります。

ちなみに民法では、抵当権について以下のように定義されています。

ノート
【民法】第三百六十九条

抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

また、抵当権を設定できるのは「不動産」ですが、厳密には以下のものが含まれます。

抵当権が設定できるもの
不動産 土地、建物それぞれに設定
付合物 不動産に従として付合したもの 雨戸などの建具、ドア、取り外せない庭石、立ち木、石垣など
従物 不動産に附属するもの 建物の場合:畳、ふすま、エアコンなど土地の場合:石灯籠、取り外せる庭石など
従たる権利 建物の所有にもとづく権利 借地権
果実 天然果実:物の用法に従い収取するもの法定果実:物の使用の対価として受けるべき金銭その他のもの 天然果実:農作物、鉱石など法定果実:家賃、地代など

1-2.住宅ローンの返済が滞るとどうなるか

では、抵当権付き住宅ローンの返済が滞ると、その不動産やローン残債はどうなるのでしょうか?

ローンを組んだ人=債務者が、たとえば失職したり、借金ができてしまったりして、返済が難しくなることもあるでしょう。その場合、融資をした金融機関=債権者は抵当権を行使することになります。その流れは、おおむね以下の通りです。

ノート
【抵当権行使の流れ】1)債務者が住宅ローンを3~6カ月以上滞納

2)金融機関から「督促状」が届く

3)それでも支払われなければ、「期限の利益喪失通知」が届く

4)保証会社が代位弁済

5)債務者が一括返済できなければ、抵当権が行使される

抵当権が行使されると、その不動産は差し押さえられ、強制的に競売にかけられます。その売却代金を、ローン残債の補填として金融機関が受け取る流れになっています。

ただ、競売は多くの場合、その不動産が通常の不動産売買で取引される評価額よりもかなり安い金額で落札されます。そのため、競売で売れてもローン残債に足りないケースが多いのです。

具体的に、売却額が残債を超える場合と足りない場合にどうなるのかを説明しましょう。

ノート
①ローン残債が2,000万円ある不動産が、競売で2,500万円で売れた場合
→2,000万円は債権者である金融機関が受け取り、残りの500万円は、競売の手数料など諸費用を引いたのち、ローンを借りていた債務者が受け取る②ローン残債が2,000万円ある不動産が、競売で1,000万円でしか売れなかった場合
→1,000万円はすべて債権者である金融機関が受け取るが、まだローン残債が1,000万円残る
そのため、債務者は家を失ったあとも、1,000万円の返済を続けなければならない

実際は、②のように、不動産を競売で失った後もローンを支払い続けるケースがよくあります。つまり、家を失った上に、手放した家のローンを払い続けなければならないというわけです。

このようなことにならないために、抵当権を行使される前に自分で家を売却する「任意売却」という方法もあります。もしローンの返済が滞り始めたら、まずは融資元の金融機関に相談しましょう。

抵当権の設定

抵当権の設定抵当権の設定は、住宅ローンを組む際にはほぼ必ず必要な手続きです。そこでこの章では、抵当権は誰がどのように設定するのか、その手続きをわかりやすく説明しましょう。

2-1.「抵当権設定登記」とは

抵当権を設定するには、法務局で不動産登記のひとつである「抵当権設定登記」をする必要があります。

不動産登記は、法務局が管理する「登記簿」に、

・その不動産がどこにあるか
・どのような不動産か
・どこの誰が所有しているか
・その不動産に対して、どの金融機関からいくら融資を受けているか

などを記載し、公に明らかにするものです。

その登記簿に、抵当権がついたことを記載するのが「抵当権設定登記」です。

登記をすると、登記簿の「権利部 乙区」という欄に、抵当権について、

・いつ設定されたか
・債権者(=銀行など金融機関)は誰か
・債権額はいくらか
・ローンの利息は何%か

などが記載されます。

この登記は、ローンを完済して、登記抹消の手続きをするまで記載され続けます。

2-2.抵当権設定に必要な書類

抵当権の設定に必要な書類は、主に以下の通りです。

ノート
■抵当権設定登記申請書
■登記原因証明情報、または抵当権設定契約書:金融機関が用意する
■不動産の権利書:登記済証、または登記識別情報通知
不動産購入にあわせて抵当権を設定する場合は不要
■不動産所有者の印鑑証明書:発行から3カ月以内のもの
■不動産所有者の実印
■身分証明書:運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど

「抵当権設定登記申請書」は、法務局のホームページからダウンロードできます。

ほかに、ケースによって

・司法書士への委任状
・金融機関の資格証明書
・住宅用家屋証明書

などが必要になる場合もあります。

2-3.設定手続きは誰が行うか

抵当権設定登記は、司法書士に依頼して手続きしてもらうのが一般的です。

ただ、登記の手続き自体は、特に資格がなくても誰でも行うことができます。ですから、「司法書士に手続き費用を払うのがもったいない」という人は、自分で手続きすることも可能です。

しかし、登記の手続きは複雑で、申請書の記入には専門知識が必要ですし、必要書類を集める手間もかかります。法務局の審査で不備が見つかれば、申請しなおさなければなりません。そのため、登記の専門家である司法書士に依頼するケースが多いのです。

その際は、不動産業者やローンを組んだ金融機関が司法書士を紹介してくれますので、そこに依頼するといいでしょう。もし、「少しでも費用を安くしたい」という場合は、複数の司法書士事務所から相見積もりをとって選ぶという方法もあります。

2-4.設定手続きを行う時期

抵当権の設定は、「金銭消費貸借契約」、つまり住宅ローンの契約を締結した日に登記を行います。

ただし、登記は申請当日に完了するわけではなく、登記簿に記載されるまでにおおむね1~2週間かかります。

2-5.設定手続きの費用

抵当権の設定登記にかかる費用は、以下の通りです。

ノート
◎登録免許税(登記料):債権額 × 0.4% (ただし、軽減税率が適用されるケースでは、債権額 × 0.1%)
◎司法書士に支払う報酬
◎印紙税その他実費

2-5-1.登録免許税(登記料)

登記を行う者=不動産の所有者は、国に「登録免許税」を納める必要があります。これは、

債権額(住宅ローンの借入額) × 0.4%

の額が定められています。

ただし、一定の条件を満たした場合は、2022年3月31日までの特例措置として軽減税率 0.1%が適用されます。

その条件は、以下の通りです。

新築住宅の場合 ・個人の住宅用の家屋であること
・取得後1年以内の登記であること
・床面積50㎡以上であること
中古住宅の場合 ・個人の住宅用の家屋であること
・床面積50㎡以上であること
・築後25年以内の耐火建築物(木造は20年以内)であるか、
または一定の耐震基準に適合するもの
・不動産取得後1年以内の登記であること

たとえば、5,000万円のローンを組んだ不動産なら、

■通常の場合:5,000万円 × 0.4%=20万円
■軽減税率:5,000万円 × 0.1%=5万円

が登録免許税額になります。

2-5-2.司法書士に支払う報酬

司法書士の報酬には金額の規定がないため、どの司法書士に依頼するかによってかかる費用が異なります。また、ローンを組む金額によっても変動しますので、一概にいくらとは言えません。

相場としては、おおむね10~15万円程度と考えてください。

2-5-3.印紙税その他実費

ほかにも、
・印紙税
・各種必要書類の取得費用
などがかかります。

印紙税額は、以下の表を参照してください。ただし、2022年3月31日までの間は、印紙税額が軽減されます。

【印紙税額一覧】

契約金額(抵当権の設定額) 印紙税額 軽減税額
~500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超~1,000万円以下 1万円 5,000円
1,000万円超~5,000万円以下 2万円 1万円
5,000万円超~1億円以下 6万円 3万円
1億円超~5億円以下 10万円 6万円
5億円超~10億円以下 20万円 16万円

2-6.設定手続きの流れ

では、抵当権設定登記はどのように行うのでしょうか?その流れは、おおよそ以下の通りです。

 1)住宅ローンの契約:住宅ローンの契約(金銭消費貸借契約)を、金融機関との間で結ぶ

▼▼▼

 2)抵当権設定の契約:不動産に対して抵当権を設定することを、金融機関との間で合意する契約を結ぶ

▼▼▼

 3)必要書類を揃える:抵当権設定登記に必要な書類を揃える(多くのものは司法書士が揃えてくれる)

▼▼▼

 4)抵当権設定登記の申請:不動産の所在地を管轄する法務局に登記の申請をする

▼▼▼

 5)登記事項証明書の取得・提出:登記が完了したら登記事項証明書を取得し、ローン契約をした金融機関に提出する

登記の申請書は、その不動産がある場所を管轄する法務局に提出します。直接窓口に出向いて提出する以外に、郵送での申請も可能です。

登記申請からおおよそ1~2週間で登記が完了しますので、完了後に法務局で登記事項証明書を取得し、ローンを組んだ金融機関に提出すれば、すべての手続きは終了です。

登記申請を司法書士に依頼する場合は、書類を揃えるところからの手続きを代行してもらえますので、不動産所有者は、印鑑証明など一部の書類を用意するだけで大丈夫です。

抵当権の抹消

抵当権の抹消住宅ローンを契約する際に設定した抵当権の登記は、ローンが完済すれば自動的になくなるのでしょうか?

いいえ、そうではありません。ローン完済時には、「抵当権抹消登記」という手続きをして、登記簿に掲載された抵当権を抹消しなければなりません。

そこでこの章では、その手続きについて説明していきましょう。

3-1.「抵当権抹消登記」とは

住宅ローンを完済すれば、「抵当権」という権利自体はその効力を失います。ですが、法的な効力はなくなっても、登記簿上にはまだ抵当権の記載が残ったままです。また、法務局やローンを組んだ銀行などは、抵当権の登記を消す手続きをしません。

そこで、ローンを組んでいた人=不動産の所有者自身が、登記簿から抵当権の記載を抹消する手続きをする必要があります。この手続きを「抵当権抹消登記」といいます。

もし手続きをしなくても、すでに抵当権自体は効力を失っていますから、銀行が勝手にその不動産を売買することはできません。「それなら、抹消登記をしなくてもいいのでは?」と思うかもしれませんが、登記情報は公開されていて、誰でも閲覧できるものです。

もし、完済後にまた新たなローンを組もうとした場合などには、金融機関が登記を確認します。そこで、抵当権の記載が残ったままだと、まだローンを返済中なのだとみなされ、新たなローンが組めなくなる恐れがあるのです。

そんなリスクを避けるためにも、ローン完済後にはすみやかに抵当権抹消登記をする必要があるのです。

ちなみに、ローン完済以外にも、

◎その不動産を売却するとき
◎新たに住宅ローンを組むとき
◎ローンは完済しているのに、登記簿上に抵当権の記載が残っている不動産を相続したとき

などにも、抵当権抹消登記は必要になります。

3-2.抵当権抹消に必要な書類

では、抵当権抹消の登記をする際に、どんな書類が必要でしょうか?
それは以下のリストを見てください。

ノート
 ■抵当権抹消登記申請書
 ■登記済証または登記識別情報
 ■抵当権解除証書(登記原因証明情報)
 ■抵当権設定契約証書
 ■登記事項証明書
 ■金融機関の資格証明書
 ■委任状(抵当権抹消の申請を、金融機関にかわって債務者が行うよう委任する書面)

「抵当権抹消登記申請書」と「登記事項証明書」以外の書類は、ローンを完済してからおおよそ10日前後の間に、金融機関から送られてきますので、内容を確認しましょう。

「抵当権抹消登記申請書」は、法務局のホームページからダウンロードできます。

3-3.抹消手続きは誰が行うか

抵当権設定登記と同様、抹消登記もまた特に資格は必要なく、誰でも手続きできます。ですが、やはり申請書の作成は煩雑で、法務局の審査で間違いが見つかれば、申請しなおしになります。

一方で、司法書士に依頼した場合の報酬は、抵当権設定登記の際よりも安く、おおむね1万~1万5,000円程度ですみます。そのため、一般的には司法書士に依頼するケースが多いようです。

3-4.抹消手続きを行う時期

抵当権抹消登記の手続きは、いつまでに行わなければいけないという規定はありません。そのため、いつまでも手続きせずにおいても、法的に問題になることはないのですが、前述したように、抵当権の登記が残ったままだと、次のローンを組むときなどに障害になります。

できれば、ローンを完済して銀行から必要書類が届いたら、なるべく速やかに手続きを行ってください。また、ローン完済とは別に、以下の場合にはすぐに抹消手続きが必要になります。

◎その不動産を売却する場合

ローンを完済した不動産を売却する際に、まだ抵当権の登記が残ったままだと、「ローンが残っているのでは?」と疑われてしまい、買い手がつきにくくなります。

また、ローンが残っている不動産を売却する場合も、前の持ち主に対する抵当権が残ったままでは、新しい持ち主はローンが組めません。そのため、いずれの場合でも、売却時には抵当権の抹消手続きが必要です。

◎ローンの借り換えをする場合

別の金融機関にローンの借り換えをしたい場合、新たに借り換える先の金融機関があらためて抵当権を設定することになります。そのため、前の金融機関の抵当権を抹消した上で、新しい金融機関との抵当権設定登記を行う必要があります。

上記ふたつの場合は、抵当権抹消登記が済まないうちは、売却や借り換えができませんので、ただちに手続きを行ってください。

3-5.抹消手続きの費用

抵当権抹消登記の手続きにかかる費用は、以下の通りです。

ノート
◎登録免許税(登記料)
◎司法書士に支払う報酬
◎その他実費

3-5-1.登録免許税(登記料)

抵当権抹消の登録免許税は、不動産ひとつ当たり1,000円です。
一般的には、

・戸建て:土地 1 + 住宅 1=不動産2つ=2,000円
・マンション:敷地権 1 + 住宅 1=不動産2つ=2,000円

という計算になることが多いでしょう。
もし、土地の登記が複数に分かれている場合は、その数×1,000円の登録免許税がかかります。

3-5-2.司法書士に支払う報酬

抵当権抹消登記の報酬は、おおむね1万~1万5,000円程度が相場です。司法書士によって多少の違いがあるので、事前に確認しましょう。

3-5-3.その他実費

登記記録の閲覧費用や、登記事項証明書の取得費用などがかかります。

以上をあわせても、抵当権設定登記に比べて抹消登記にかかる費用はわずかなので、面倒がらずに早めに手続きしましょう。

3-6.抹消手続きをしないとどんな不都合があるか

では、もし抵当権抹消登記の手続きをしないと、どんな不都合があるのでしょうか?
それは、主に以下の3点です。

3-6-1.物件が売却しにくい

まず、抵当権がついたままの不動産は、買い手がつかずに売却しにくくなります。

もしローンを完済していても、登記簿に抵当権が残っていれば、見かけ上は「まだローンを返済中」と思われてしまいます。

そのため、もしその不動産を購入しても、前の所有者がローンを滞納すれば、この家が差し押さえられたり、競売にかけられてしまうリスクがあると考えられ、売れにくくなるわけです。

3-6-2.新たな融資が受けられない

住宅ローンを完済後に、自宅を担保にまた新たなローンを組もうというケースもよくありますよね。
ですが、そこで抵当権が残ったままだと、金融機関は「まだ前のローンを返済中」と捉え、新たな融資が受けられない恐れがあります。

たとえば、「事業のための資金を、急に調達しなければならない」となっても、抵当権抹消登記をするのを忘れていたせいで、融資の審査に通らない、という困った状況に陥るかもしれないのです。

3-6-3.相続手続きが煩雑になる

抵当権が残ったままの不動産を相続すると、その際の手続きが煩雑になります。

ローン完済時に銀行から送られた必要書類が揃っていればよいですが、亡くなった方が長年放置していた場合は、書類も紛失している恐れがあります。まず、それらを抵当権を持っていた金融機関から取り寄せなければなりません。

また、抵当権抹消の手続きは、亡くなった方にかわって相続した人が行うことになります。

そのため、まず相続の手続きが完了して、その不動産の所有者が確定してから、抹消登記を行います。

相続の手続きには時間と手間がかかることも多いものですが、そこに抵当権抹消手続きも加わって、さらに面倒になってしまうのです。

このような不都合なことを未然に防ぐために、やはり抵当権抹消登記は、ローン完済後なるべく速やかに行うべきでしょう。

3-7.抹消手続きの流れ

では、抵当権抹消の手続きは、どのように行えばいいのでしょうか?
その流れを図にまとめましたので、以下を見てください。

 1)金融機関から必要書類を受け取る:ローン完済後、金融機関から抵当権解除証書、委任状などが郵送されてくる

▼▼▼

 2)その他必要書類を揃える:登記事項証明書など、自分が用意する必要書類を揃える

▼▼▼

 3)抵当権抹消登記の申請:不動産の所在地を管轄する法務局に登記の申請をする

▼▼▼

 4)登記完了証を受け取る:登記完了後、法務局で登記完了証を受け取り、登記済証も返還してもらう

登記の申請書は、その不動産がある場所を管轄する法務局に提出します。直接窓口に出向いて提出する以外に、郵送での申請も可能です。申請時には、「補正日」を確認してください。補正日とは、「法務局が書類や申請内容に不備がないか確認して、もし不備があればこの日までに連絡する」という期限です。

もし補正日までに連絡があれば、法務局に出向いて指示通りに補正します。補正日まで待っても連絡がなければ、問題なく手続きは完了していますので、その日以降に法務局から「登記完了証」をもらってください。

その際に、申請時に提出した登記済証の原本も返還してもらいます。これで抹消手続きは完了です。

よくある質問

ここまで、住宅ローンを組んだ際の抵当権について、くわしく解説してきました。この章では、上記の内容以外の「よくある質問」について回答していきます。

4-1.抵当権付きの不動産は相続できるか

まず、「抵当権が付いたままの不動産は相続できるか?」という質問があります。亡くなった親族が不動産を所有していて、自分に相続権があるが、その不動産に抵当権が付いていた、というケースです。

結論からいえば、「抵当権付きの不動産でも相続できます」

ただ、この場合、以下のようなパターンが考えられます。

◎ローンは完済していて、抵当権抹消登記を怠っていた場合

このケースは、「3-6-3.相続手続きが煩雑になる」でも説明しました。相続自体は通常の手順で行い、不動産を誰が相続するか、所有者が確定したところで、抵当権抹消登記を行ってください。

◎ローンが残っているが、亡くなった人が団体信用生命保険に加入していた場合

住宅ローンを組む人は、ほとんどの場合で団体信用生命保険、いわゆる「団信」に加入します。その場合、もしローン返済中に債務者が亡くなれば、残債は保険金で完済され、遺族や相続人にローンが残ることはありません。

完済とともに抵当権も効力を失うため、不動産はそのまま相続することができます。ただし、抵当権抹消登記は忘れず行ってください。

◎ローンが残っていて、相続財産などでは完済できない場合

もし万が一、ローンが残っている上に団信にも加入しておらず、不動産以外の遺産でローン残債を完済することができない場合はどうでしょうか?つまり、相続するのが抵当権付きの住宅とそのローン=借金のみ、というケースです。

その場合は、

・借金を完済して抵当権を抹消する
・相続放棄をする

など、対処法を考えなければなりません。まずはローンの残債がいくらかなど、金融機関に確認しましょう。

4-2.抵当権付きの物件は売却できるか

次に、「抵当権付きの不動産を売却することはできるか?」という質問です。住宅ローンを組んで家を買い、まだ返済途中なので抵当権は付いているが、事情があって家を手放したい、というケースです。

こちらも回答は、「抵当権付きの物件でも売却できます」。

しかし、実際は物件を引き渡す前には、住宅ローンを完済して抵当権抹消の手続きまで済ませるのが一般的です。なぜなら、

・住宅ローンを組んだ際の金融機関との契約に、「家を売却する際には、ローンが完済されていること」という条件が盛り込まれている
・抵当権付きの物件を購入すると、もし前の所有者がローン支払いを滞納した場合、その物件が差し押さえされ、競売にかけられてしまうリスクがある

という2つの理由があるからです。

そのため、この場合の解決法は以下の2つです。

◎ローンは完済していて抵当権が残っている場合は、抵当権抹消登記をしてから売却に出す
◎ローンが残っていて売却したい場合は、その家を売った代金をローンの残債返却にあてる

どちらにしろ、売却時には抵当権抹消登記を済ませている必要があります。

まとめ

いかがでしたか?
住宅ローンの抵当権について、知りたいことがわかったかと思います。

では、あらためて記事の要点をまとめてみましょう。

◎抵当権とは、住宅ローンなどを組んで不動産を購入した際に、融資する側(銀行など)がその不動産に対して設定する権利
◎抵当権設定の流れは、
 住宅ローンの契約→抵当権設定の契約→必要書類を揃える→抵当権設定登記の申請→登記事項証明書の取得・提出
◎抵当権抹消の流れは、
 金融機関から必要書類を受け取る→その他必要書類を揃える→抵当権抹消登記の申請→登記完了証を受け取る

以上をもとに、あなたが抵当権を適切に処理できるよう願っています。

この記事の制作体制
  • 大月知香

    ゼロリノベの編集者。大学時代にデンマークへの留学を通して、北欧の人々の住まいに対する美意識の高さに感化される。暮らしにおける「住」の重要性を伝えたいと住宅雑誌の編集を経験。より自分らしく、自由に生きられる選択肢の一つとしてリノ...

  • 茂木 禄人

    株式会社Mapフィナンシャル において、独立系アドバイザーとして活動。詳細プロフィールはこちら

SHARE ME!
目次