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和室リノベーションで間取りがもっと自由になる!ヒント満載な3事例と費用について

和室リノベーション
この記事の監修者

一級建築士
西村 一宏

東洋大学ライフデザイン学部講師。リノベーション・オブ・ザ・イヤーを受賞した設計・施工部門の責任者としてゼロリノベ建築を担う。

ご訪問ありがとうございます。

中古マンションの間取りに見られる和室は、リノベーションを進める上で、鍵を握るスペースと言っても過言ではありません。

ここでは、和室をリノベーションする方法やメリット、コスト面から見た考え方までを和室リノベーションの事例と共にご紹介します。

目次

和室のリノベーションとは?

リノベーションって大変ですね。もうすべて設計士さんにお任せします!と言いたくなるけど、そうもいかないから。

たしかに物件選びから家づくりの工程すべてにおいて、さまざまなことを決定していかなくてはなりませんから、あなたのように思った以上に大変だと感じられる方は多いですよ。でも具体的なお悩みを一つずつ解決していけば大丈夫です。今はどんなことで困ってらっしゃるのですか?

「和室をどうするか問題」なんです。中古のマンションにはたいてい和室がありますよね。場合によっては和室が2部屋だったりする物件も多いので。リノベーションといえば和室を洋室に変更するというイメージだったのですが、いざプランを考えるとなると予算のこととかも気になりますし。

なるほど、和室のリノベーションについてのお悩みですね。では、事例も見ながら、具体的にあなたのイメージが明確になるように進めていきましょう。

よろしくお願いします。

そもそもなぜ和室をリノベーションするのかというと、私たちのライフスタイルが大きく影響しています。寝室は布団からベッドになり、食事はダイニングテーブルでするのが一般的ですよね。

そうですね。キッチンのすぐ横にダイニングテーブルがあるのが今は普通だけど、おばあちゃん家は、台所で作った料理を食事をする部屋に運んで、畳に座って食べていました。

マンションをリノベーションする場合、住まい手のライフスタイルに合わせた造りにすることが重要なので、和室より洋室仕様が人気なのです。また、開放感を感じる住まいづくりを希望される方が圧倒的に多いので、四畳半や六畳といった細かく区切られた和室を改装するのは効果的なプランといえます。

はい、やっぱり開放感は重視したいです。賃貸で暮らしていた時は、和室を洋風にアレンジしながら使っていたりもしたので、今度住むなら和室とリビングを一体化して広い空間で暮らしたいという思いが強かったんです。

では具体的に和室をリノベーションする際に、何が必要かみていきましょう。

和室を洋室にする

1.床を張り替える

まずは床の張り替えです。

畳からフローリングに、ですよね。

はい。フローリングのほかにクッションフロアやカーペット敷きにする方法もあります。

私はフローリングに憧れますね。なにか注意点はありますか?

防音や断熱について確認することが必要です。築年数が経過している物件は、防音材や断熱材が入れられていない場合もあるからです。

上の階なら防音機能がないと足音や椅子の出し入れの音など、迷惑になってしまうのでそれは防がなくては。

フローリング材自体には防音性能はないものがあるので、そうした場合は下地でカバーしなくてはなりません。マンションの管理規約の防音基準も把握して工事を進めることが必要です。

断熱材がなければ冬はかなり寒いでしょうね。

元の床をはがして、新しく床を施工しますので、必要な機能を踏まえた上での工事が必要です。例えばリビングのフローリングはそのまま使うとしたら、色あせがあったり、すでに廃盤になっていて同じ素材が手に入らなくなっていたりすることもあるので、和室だけを変更すればいいわけでもないということを知っておくといいですよ。

和室とリビングをひと続きにしたいなと思ったりしていますが、境には段差があったりしますよね。

見切り材ですね。畳の厚みとの差があるため、下地木工事も必要になります。

和室だけ新しくすればいいというわけでもないというのはこういうことか。結構かかりそうだなぁ。

費用や工期については、後で見ていきましょう。

2.壁を張り替える

和室の壁と洋室の壁も種類が違いますよね。

はい、和室の場合、真壁といって柱を露出させた造りです。洋室に変更する際には、真壁の上に石膏ボードを重ねて上からクロスを張るのが一般的です。間取りによっては和室と洋室を仕切る壁や建具の撤去も必要です。

洋室と和室の仕切りをなくして一部屋にするなら、壁紙も揃っていないとおかしいから、洋室も全体に張り替えが必要になったりもしそうですね。

そうですね。住まい全体のリノベーションの場合、既存の壁紙をそのまま使用する例は少ないでしょう。

3.天井を張り替える

天井も和室と洋室では異なります。一般的に和室の天井は合板にラミネートされた板目の紙を貼ったラミネート天井が使われています。

ということは、これも洋室に合わせたクロスに変更ですね。

はい、既存の下地を利用して天井材の上にベニヤを直張りしてパテ処理し、クロスで仕上げます。下地が傷んでいれば、補修が必要な場合もあります。

よくリノベーションした物件の事例で、梁を生かした格好いい天井とかを見たことがあるんですけど、それは?

あらわし天井ですね。梁や構造体をデザインに生かす方法で、下地が撤去される分、天井が高くなり開放感が増すという利点もあって人気です。

あらわし天井、いいですねぇ。

4.建具を交換する

和室といえば襖や障子がつきものです。これらも洋風のものに変更が必要です。

押し入れはよく収納の活用で襖を外して使うというのを見たことがあります。そういうイメージでしょうか。

はい、洋室仕様にする場合はクローゼットとして使う事例がありますね。ベッドを入れて寝室として利用する場合や、子ども部屋用に洋室仕様する例も多いので、収納スペースとして利用しやすくします。和室の出入口の襖は、扉を外さず部屋をそのまま使用する場合は、襖を洋室用の引き戸にする方法があります。

たしかにそれだけでイメージがガラリと変わりそう。

押し入れの襖もそうですが、障子は外してカーテンやロールスクリーン、ブラインドに変えるのも人気です。

和室を洋室にリノベーションするポイントはなんとなく理解できました。マンションのリノベーションだと、和室をなくしてLDKにするというイメージがあるんですが。

そうですね。和室とリビングを一体化する場合についてもポイントを見ていきましょう。

開放的なLDK空間を造る

和室リノベーション01

1.床の高さを合わせる

和室は畳の厚さがある分、床が他の部屋より低く設計されています。

それだとLDKに段差ができちゃいます。

マンションの場合、構造体は共用部分にあたりますので、床レベルは勝手に削ったりすることはできません。ですから床レベルは高い方に合わせます。

2.天井の高さを合わせる

天井の高さも合わせないといけませんよね。先ほどお話にあったあらわし天井ならいいですけど。

その通りです。揃える場合は下地の組みなおしが必要です。この場合、配管が影響する場合があります。梁のように天井の一部が下がっている造りは排気ダクトの配管があるためです。

リノベーション物件ではよく見かけます。

3.間仕切り撤去時の制限

和室の壁を壊す場合、耐力壁の存在は無視できません。建物を支えるために筋交いや構造合板が入っている壁をいいます。これを撤去すると建物の歪みや倒壊の恐れがあるので撤去できません。これは主に木造住宅に見られる造りです。

マンションの場合はどうですか?

ラーメン構造という言葉を聞かれたことがありますか?柱と梁で支えるタイプの構造で、マンションは主にラーメン構造が採用され撤去が制限されます。

ここはプロにしっかり見ていただくポイントですね。

はい、リノベーション会社は取り扱い物件の構造をしっかり把握した上で設計しますので、できること、できないことをお知らせしながら設計を進めます。

和室リノベーションのコストの考え方

1.コストを優先する場合

ここまでお話を聞いてきて、やはり費用のことが気になってきました。

はい。では、和室とリビングを一体化してLDKにする費用を考える場合に何を優先するか、3つの項目で考えていきましょう。

3つの項目とは?

コストを優先するか、バランス優先するか、クオリティを優先するかの3項目です。コストを抑えることを優先する場合は、壁、天井ともに必要最低限の箇所の張り替えにとどめます。この場合、床工事が約20万円、壁工事に約4万円、天井工事は約5万円、その他の工事には約10万円と見積もります。概算で40~45万円程度と考えられます。

2.バランスを優先する場合

コスト以上に和室とリビングの調和を重視したい場合は、床工事は同様に約20万円、壁と天井のクロスは和室とリビングのすべてを張り替えることで、調和をはかります。そのため壁工事にも約20万円、天井工事は約6万円、その他の費用は約16万円と見積もり、概算で60~70万円程度と考えられます。

うーん、そうですよね。でもLDKってたぶん一番長い時間を過ごす場所になるから、バランス重視、調和は大事かなって思います。

はい、LDKは生活の中心となる場所で、その家の顔になるわけですから慎重に検討したいですね。

3.クオリティを優先する場合

ということは、クオリティ優先は「全部のせ」みたいな考え方ですよね。

アハハハ、そうですね。床工事に約40万円、壁と天井のクロス張り替えに約20万円、天井の解体や高さ調整が約15万円、その他に約20万円かかるとして、総額約95万円、リノベーション費用としては100万円前後は見ておいた方がいいでしょう。

あ、ちなみに先ほどから見積もりで出てきているその他の費用とは?

壁を撤去する際にそこにコンセントがあれば電気工事が必要になります。また、洋室にリノベーションする際にかかる建具の費用などがこのその他に含まれます。こだわればこだわるほど、費用は当然かかりますが、例えば押し入れの中やカーテンレールの取り付けなど、一部をDIYで仕上げるなどすれば、費用を抑えることもできます。

なるほど。基礎となる部分は、しっかりとしたクオリティで仕上げてもらい、暮らしながらメンテナンスできる部分は自分たちで工夫して作っていくのもいいですね。

和のスペースを生かしたリノベーション

和室リノベーション02

1.リビングの一部に畳スペースを作る

今さらなんですが、伺ってもいいですか?

もちろんです。疑問点はなんでもおっしゃってください。

実は夫婦でいろいろプランニングしている中で、夫がチラッと「少しは畳のスペースも欲しいんだよな」とつぶやいたんです。その場はスルーしたんですけど、ちょっとその気持ちもわかるよなって思っていまして。

畳、いいですよね。実はそういうお声は多いんですよ。リビングの一角に畳のスペースを用いるのはいかがですか?

例えば、どんな使い方がありますか

最近は縁のない琉球畳なども人気なので、フローリングの床の続きに畳を敷き詰めて3帖程度の和スペースを作ります。お子さんのプレイスペースに使ったり、お茶や生け花、着付けなど和の趣味をされている方からのリクエストもあります。

2.使いやすい小上がりの畳スペースを設ける

小上がりの畳スペースも人気です。

一段高くなっている感じですか?

はい、高さもいろいろですが、ちょっと腰掛けられるベンチのような高さで造作された畳スペースは、親御さんが遊びに来る機会がある方や、まだお子さんが小さいうちはお昼寝スペースに出来るという点でも人気です。

大人にもお昼寝スペースは必要だわ(笑)。

これにはもう一つメリットがあって、床下を収納にできることからも好評です。あまり表に見せたくない生活用品のストック品や季節ものの寝具などをこうしたところに収納したりできます。

それ、いいですね。

和室のリノベーション事例

1.和室をフローリングにまるごとリノベーション

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ではいくつかの事例をご紹介していきましょう。

この事例は?

この写真に写っているダイニングテーブルのあるスペースとソファのあるリビングスペースは、4.5帖(手前)と6帖(奥)の和室でした。それをまるごとフローリングで大きなLDKにリノベーションした事例です。

言われなかったら絶対にわからない。これこそリノベーションマジックですね。憧れるわー。

中古マンションのリノベーションの場合、和室を大胆に洋室に変更する事例は多いですし、とても人気です。

https://www.zerorenovation.com/blog/埼玉県-武蔵浦和-a邸-リノベーション事例

2.畳とソファ、和と洋が共存する空間

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こちらはフロアの一部に畳スペースを用いているお宅です。

わぁ、洋のスペースに和が溶け込んでいますね。

畳の色の濃淡を市松にして並べているので、モダンですよね。

キッチンのすぐ近くだなんて信じられない。

ソファとダイニングテーブルを腰壁で仕切ることで、開放感のある空間なのに、しっかりとゾーン分け出来ているのも効果的ですよね。

3.機能性抜群の小上がり和スペース

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これはまさしく小上がりの畳スペース!

はい。キッチンからお子さんがここで遊ぶ様子も見える造りです。

しかも床下収納はたくさん入りそう~。リビングの真ん中だから、いろんなもの入れたくなっちゃいます。

雑然としがちなリビングや子ども用のスペースにとって、ありがたい造りですよね。

まとめ

和室のリノベーションは奥が深いことがわかりました。でも、いろいろな可能性があってとても楽しみになってきました。

北欧家具は畳と相性がいいとか、畳みにテーブルをセットすると和モダンな空間を演出できるなど、インテリアコーディネートとしても和の魅力はさまざまな広がりを見せています。和室のリノベーションに目を向けると、理想の暮らしのスタイルが見えてくるかもしれません。

本当にそうですね。これからは和室のある中古マンションもどんどん探して、リノベーション計画を進めていきたいと思います。

この記事の制作体制
  • 大月知香

    ゼロリノベの編集者。大学時代にデンマークへの留学を通して、北欧の人々の住まいに対する美意識の高さに感化される。暮らしにおける「住」の重要性を伝えたいと住宅雑誌の編集を経験。より自分らしく、自由に生きられる選択肢の一つとしてリノ...

  • 西村 一宏

    リノベーション・オブ・ザ・イヤーを受賞した設計・施工部門の責任者としてゼロリノベ建築を担う。

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