リノベーション向きの物件とは?探し方や選ぶ際の3つのポイント
マンションや戸建てには、リノベーションに向いている物件とそうでない物件があることをご存じですか?
リノベーション向き物件とは、「長く住める状態が管理によって保たれており、かつ工事の制約が少ない物件」を指します。
どんなマンションや戸建てであっても、リノベーション自体は可能です。しかし選ぶ物件によって、リノベーションできる範囲や自由度は大きく異なります。
何千万円ものお金を支払って購入した物件が、希望のリノベーションを実現できないものだったらあまりに残念ですよね。
今回は、そんな失敗を避け、理想のリノベーションを実現できる物件の探し方をご紹介します。マンションと戸建てごとに、リノベーションに向いている物件の選び方も解説しますので、ぜひご参考にしてください。
一級建築士
西村 一宏
東洋大学ライフデザイン学部講師。リノベーション・オブ・ザ・イヤーを受賞した設計・施工部門の責任者としてゼロリノベ建築を担う。
リノベーション向きの物件の探し方
リノベーション向きの物件を探すときには、以下の2点を意識すると失敗しにくくなります。
- 物件購入+工事費用で予算に合った物件を探す
- 適切な管理や点検が行われているかで探す
- リノベーションの専門知識がある不動産会社を探す
それぞれどのような内容かご説明します。
1-1.予算に合った物件を探す
中古物件を探すときには、沿線や駅、駅からの距離といった立地面や広さなど、条件ばかりが気になるものです。
しかし、どんな物件を選ぶかは、リノベーションを含めてどれくらいの費用をかけられるかによって大きく左右されるため、まずは予算を明確にする必要があります。
予算を検討するときの注意点は、以下の2つです。
注意点①ローンはリノベ費用の余裕を持たせる
ローンを組むときには、物件購入費だけでなく、リノベーションの費用も含めた予算を立てることが重要です。
予算の見積りを誤ってしまうと、物件費用にローンのほとんどを費やしてしまい、リノベーションにかける費用がほとんど残らなかった!といったことになりかねません。
そうなると、手持ちの資金でできる範囲のリノベーションしかできない、あるいはリノベーションをあきらめるしかなくなってしまいます。
住宅ローンを組むときは、上限ギリギリの額ではなく、無理なく返済できる金額にしましょう。なぜなら、想定外の病気やケガなどによって休職せざるを得ない場合、月々の返済が重くのしかかってしまうことがあるからです。
余裕のある返済計画が組める額なら、月の余ったお金で旅行や余暇を楽しむ余裕も生まれます。
予算を検討するときには、現在の経済状況や将来のライフプランを考慮するために、ファイナンシャルプランナーに相談するのもおすすめです。
予算の決め方について詳しく知りたい方は、年収別に住宅ローンの安心予算を解説しているこちらの記事をご覧ください。
注意点②諸費用を含んだ予算を立てる
予算を立てるときには、諸費用を考慮することも重要です。
リノベーションに必要になるのは、物件の購入価格や工事費だけではありません。ほかにも以下のような費用がかかります。
- 仲介手数料
- 保証料
- 事務手数料
- 印紙税
- 引っ越し代
諸費用は、中古物件価格の8〜10%が目安と言われています。2,000万円の物件の場合、200万円が必要になる計算です。さらに中古戸建ての場合は、物件の状態を確認するためのホームインスペクション費用(5〜8万円)も必要です。
すべて合わせると決して小さな金額ではないので、あらかじめ予算に組み込んでおきましょう。
費用内訳や支払いタイミングなど、諸費用について詳しく知りたい方は中古マンション購入にかかる諸費用について解説したこちらの記事をご覧ください。
1-2.適切な管理や点検が行われているかで探す
管理の状況は、建物の寿命に大きく関与します。築年数が経過している戸建てやマンションを、リノベーションして住もうとしている場合には、これまでの管理状況や修繕履歴を確認しましょう。
戸建てとマンションのそれぞれで、どのような点に注意してチェックすればいいのかご紹介します。
1-2-1.戸建てのチェックポイント
戸建てについては、以下の2つを確認します。
<①劣化状況>
劣化状態は、工事規模に影響するので必ず確認しましょう。とくに築年数が古く、劣化状況がひどい場合は、耐震補強や建物全体の断熱工事など、大掛かりな工事が必要になる可能性があります。
その場合、工事費が高額になり「新築したほうがよかった」となる可能性も否めません。できる限り、住宅診断士のホームインスペクションを受けることを検討しましょう。
<②敷地の状態>
境界は確定しているか、隣地とトラブルがないかを確認します。とくに1981年(昭和58年)5月31日以前に建てられた物件の場合、現行の建築基準法に適合しておらず、セットバックが必要になる可能性がある点に注意が必要です。
<③設計図面や完了検査済証の有無を確認>
増改築工事をするときには、現在の家の設計図面や完了検査済証が必要になります。
これらは今の家が、当時の建築基準法に沿って建てられたものであることを証明するための書類です。設計図面や完了検査済証がない場合には、リノベーションでできることや費用が大きく変わる可能性があるため注意が必要です。
完了済証がない場合には、自治体で建築計画概要書の写しや建築確認台帳記載証明書を取得したり、建築基準法適合状況検査を受けたりする必要があります。
完了検査済証がない物件の購入を検討するときには、リノベーションを依頼する会社に相談すると良いでしょう。
出典:「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドラインについて」(国土交通省)
1-2-2.マンションのチェックポイント
マンションは、以下の4つをチェックしましょう。
<①工事可能な範囲>
マンションは区分所有となるため、リノベーション対象は専有部分のみとなります。またマンションによっては、できること、できないことが細かに決められていることも少なくありません。やりたい工事ができるかどうか、事前にワンストップリノベーションの会社に依頼をして管理規約の内容を調べておきましょう。
ワンストップリノベーションとは、物件探しから設計施工までを1つの窓口で行える会社のことです。さらにワンストップの中でも、不動産仲介からリノベーションの設計、施工まですべての工程を自社で管理している会社なら、社内でノウハウ共有できるため不動産の仲介担当も工事の知識があるため、内覧時にリノベーションの工事イメージを相談できます。
<②修繕記録や修繕計画>
建物全体の修繕は、マンションの管理会社や管理組合主体で進められます。今後どのような修繕計画が立てられているのか、それに見合う修繕積立金が集められているのかを調べます。不動産会社を通じて、長期修繕計画を確認しましょう。このとき、過去にどのような修繕が行われたのかも、あわせてチェックしましょう。
<③メンテナンス状況>
現地を内覧するときに、大きな修繕だけではなく、細かいところまでメンテナンスが行われているかも観察しましょう。
長期修繕計画がしっかり運用されているかどうか、修繕積立金は不足なく集金できているか、全ては住民の管理意識にかかっています。
そのため、目に見える共用部分の管理状況を確認することに加え、長期修繕計画や修繕積立金の残高などを不動産と設計施工2つのプロの目でチェックしてもらうことで、マンション全体のメンテナンス状況が推測できるのです。
エントランスや植木などまで、きちんと手入れされているマンションなら安心です。
<④住民の様子>
マンションは多くの人と共有するため、どのような住民が住んでいるのかも可能な限りチェックしたいところです。現地内覧時に共同玄関などにある掲示板を確認すると、トラブルの有無や住人の雰囲気などを把握できる場合があります。
中古マンション内覧時のポイントや注意点について、こちらの記事の2章、3章でも詳しく解説しています。気になる方はぜひご覧ください。
1-3.リノベーションの専門知識がある不動産会社を探す
リノベーション向きの物件を探すには、予算計画を立てたうえで、戸建てであれば劣化状況を確認し、マンションであれば過去の修繕状況などを確認するなどやるべきことがたくさんあります。
これらをすべて個人でこなすのは意外と大変です。とくに物件がリノベーション向きかを判断するのは、専門知識がないと難しく、不安を感じた人も多いのではないでしょうか。
購入してから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためには、予算立てから物件選び、リノベーション工事までワンストップで対応してくれるリノベーション会社に依頼すると安心です。リノベーションの最初の一歩から完成まで、気持ちに寄り添い一緒にワクワクした体験を楽しんでくれる担当者のいるリノベーション会社を選びましょう。
ワンストップリノベーション会社の選び方について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
【マンション】自由にリノベーションできる物件のポイント
マンションは戸建てと異なり、外観や建物の構造そのものに手を入れる必要がないため、間取りや内装にお金をかけられるのが特徴です。その一方、マンションは区分所有となるため、工事内容にいろいろな制約とルールがあります。
ここからは、少しでも自由度の高いリノベーションをするために、マンション選びで押さえておきたいポイントを3つご紹介します。
2-1.構造の確認
マンションは、構造によって間取りの自由度が大きく変わります。マンションの構造は、主に以下の2種類に分かれます。
- ラーメン構造
- 壁式構造
多くのマンションでは、ラーメン構造が採用されています。それぞれの特徴を、一覧にまとめてみました。
表からわかるように、間取りを好きに変えたいときには、壁を壊せるラーメン構造のマンションが向いています。
基本的に、部屋を見たときに室内に出っ張りが多ければラーメン構造の可能性が高くなります。しかし最近はラーメン構造であっても、柱や梁を部屋の外に配置されて出っ張りがない場合もあります。
間取り図を見て柱があれば判断しやすくなりますが、最終的にはリノベーション会社の担当者などに見てもらうと安心です。
2-2.管理規約の確認
同じ建物を複数人が区分所有するマンションのリフォームやリノベーションは、管理規約によって定められた範囲内で、ルールに沿って行う必要があります。管理規約では、以下の2点をチェックすることで、「希望の工事ができない」といった失敗を未然に防ぐことができます。
2-2-1.リノベーション可能な範囲
基本的には、マンションでリノベーションできるのは専有部分だけに制限され、共有部分のリノベーションはできません。
マンションの共有部分には、以下のようなものがあります。
<マンションの共用部分の例>
- 戸境壁や天井などのコンクリートの躯体部分
- 玄関ドア
- 窓ガラスやサッシ
- パイプスペース
- バルコニー
マンションによっては、玄関ドアの内側は専有部分とされ色を変えてもいいなど、細かなルールが決められています。また騒音の観点からフローリングの種類を限定している、あるいはそもそもカーペットからフローリングへの張り替えを許可していない物件もあります。
ルールは個々の物件によって違うので、やりたいリノベーションが禁止されていないかは管理規約でよく調べておきましょう。
2-2-2.用途の制限
マンションによっては、事務所として使用してはいけない、楽器の使用は禁止するなど、用途を制限していることがあります。
なにか特別な目的をもってリノベーションを計画している場合は、その内容が管理規約に触れないかよく調べ、不明なときには管理組合に確認しておきましょう。
2-3.配管の確認
マンションは、思うように配管を移動できない場合があります。キッチンやトイレ、浴室といった水回りの移動を計画している場合には、配管の移動が可能かも確認しましょう。
ただ、配管は床下にあるため、どのような状態になっているかは購入時に確認するのは困難です。配管に関しては、以下の2点に注意が必要です。
2-3-1.パイプスペースは動かせない
パイプスペースとは、間取り図で「PS」と書かれた部分です。パイプスペースには、排水管や配給管がまとめられていて、共用部分に指定されているため動かせません。
2-3-2.排水管に十分な勾配が取れるか
水回りの移設を予定している場所から、排水管まで十分な勾配が取れない場合は、移動はできません。
勾配が十分に取れないと、スムーズに排水できなくなり、逆流や漏水が発生する可能性があるためです。パイプスペースから距離が長くなるほど勾配が緩やかになり、排水が難しくなります。
しかし排水管の位置を大きく変えられなくても、アイデア次第で使い勝手の良い間取りにすることは可能なので、リノベーション会社の担当者と相談しながらプランを考えると良いでしょう。
【戸建て】自由にリノベーションできる物件のポイント
戸建ては土地も建物もすべて専有するため、マンションよりはリノベーションの自由度は高めです。しかしその分、リノベーションする範囲が広がりやすく、とくに建物本体が大きく劣化している場合には、工事費用が高額になる可能性があります。
建物のハード面にかける費用を抑えつつ、自由なリノベーションを楽しめる物件を選ぶポイントを2つご紹介します。
3-1.築年数が築15〜20年の物件を選ぶ
それまでのメンテナンス状況にもよりますが、基本的に戸建ては築年数が古いほど劣化は進んでいると考えられます。劣化状況によっては、耐震補強や断熱工事にかかる費用が高額になり、希望するリノベーションが行えない場合があります。
自由にリノベーションするのにおすすめなのは、築15年から20年の物件です。理由は2つあります。
理由①補強工事や耐震工事の費用を抑えられるから
戸建てはどの耐震基準に沿って建てられたかによって、必要になる補強工事や耐震工事の規模・範囲が違います。
建築年による耐震性の違いは以下のとおりです。
このように、2000年6月1日以降に建築された築15年から20年の物件は、現行の耐震基準に沿っています。そのため耐震補強工事にかかる費用を抑えられる可能性が高くなります。
ただし、戸建ての状況は個々によって違います。そのため基本的には、住宅診断士によるインスペクションを受けることをおすすめします。
理由②築15年から20年で物件の価値が安定するから
築15年から20年の物件をおすすめするもう1つの理由は、戸建てはこの年数になると物件の価値が安定し、資産価値が落ちにくくなることです。
戸建て住宅の価値は新築時から年々落ちていき、築後20年で資産価値はゼロとなり、土地の価格のみで評価されるようになります。
つまり、のちのち家を手放すことになったときでも、購入したときと近い価格で売却できる可能性が高いのです。
もちろん、資産価値がゼロになるといっても、売買取引での評価上の問題であり、建物自体に価値がないことを意味するものではありません。
実際、最新の調査結果では、木造住宅の寿命は65年と報告されています*。ホームインスペクションを受けて問題なければ、安心して購入を検討して良いでしょう。
*【参考】国土交通省「中古住宅の建物評価の実態 参考資料|7頁」
3-2.完了検査済証の有無
中古住宅を購入するときには、売主へ完了検査済証の有無を確認しましょう。
完了検査済証とは、建築基準法に沿って建てられた物件であることの証明証です。完了検査済証の有無により、リノベーションできる内容や費用が変わる可能性があるため注意が必要です。
3-2-1.完了検査済証がない場合
完了検査済証がない場合、増築や大規模なリノベーションができない可能性があります。
建築基準法では、既存の住宅が現行の建築基準法に沿って建てられたものでなければ、増改築や大規模なリノベーションを認めていません。完了検査済証がなければ、現行の建築基準法に適合した住宅なのかを判断できないためです。
完了検査済証がないと、ほかにもローンが組めない、補助金や減税を受けることができない可能性もあります。
もし完了検査済証がない場合には、建築計画概要書の写しや建築確認台帳記載証明を確認する、あるいは建築基準法適合状況調査を受けて、合法性を証明する必要があります。
逆にいえば、きちんと合法性を証明できれば問題なくリノベーションできるので、完了検査済証がないときには、不動産会社やリノベーション会社に相談しましょう。
まとめ
リノベーション向きの中古マンションや中古一戸建てを探すときには、以下の点を意識すると失敗を防ぎやすくなります。
- 予算は物件費用、リノベーション費用、諸費用まで含めて余裕を持たせる
- 適切な管理がされてきた物件を探す
- マンションは構造や管理規約によるリノベーションの制限を事前に確認する
- 戸建ては築15〜20年で検査済証のある物件を選ぶようにする
- 予算立てからリノベーション工事までワンストップで対応してくれる会社に物件選びから依頼する
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