バリアフリーリノベーションの費用相場と工事内容は? 注意点と使える4つの補助金
「バリアフリーリノベーションの費用相場はどれぐらい?」
「リノベーションでバリアフリーにする場合どんなことができる?」
将来のことを考えてバリアフリーの家へのリノベーションを検討している方のなかにはこのような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
年をとったり、病気やケガで身体が不自由になった時でも暮らしやすく工夫されているのが、バリアフリー住宅の特徴です。
リノベーションでできるバリアフリーには、主に次のようなものがあげられます。
リノベーションでできるバリアフリー | |
バリアフリーでない家で起こる問題 | リノベーションでできること |
足腰が弱って転倒しやすくなる | 家の中の段差をなくす |
家の中では車いすが使えない | 通路や扉の幅を広げる |
ヒートショックで命の危険がある | 家の中の温度差をなくす |
バリアフリーのリノベーションは「現在困っていることや住みづらさ」を解消できるだけでなく、あらかじめバリアフリーを施しておくことで「将来的な住みやすさ」に繋げることができます。
本記事では、バリアフリーリノベーションの費用相場を紹介します。また、バリアフリーな家にするためにやっておきたい工事内容や注意点、リノベーション会社の選び方などを解説するため参考にしてください。
一級建築士
西村 一宏
東洋大学ライフデザイン学部講師。リノベーション・オブ・ザ・イヤーを受賞した設計・施工部門の責任者としてゼロリノベ建築を担う。
バリアフリーリノベーションとは?
バリアフリーリノベーションとは、住まい手が安全に快適な生活を過ごせる環境を作るリノベーションのことです。
歳をとったり怪我や病気で足腰が不自由になったりすると自宅のちょっとした段差や階段が大きな事故の原因となることがあります。
バリアフリーリノベーションをすることで、転倒や転落など自宅で起こる可能性の高いリスクを防げます。
歳をとってからのことを考えて早めにバリアフリーリノベーションを検討することで生涯にわたって安全に暮らせる環境を整えることができるでしょう。
バリアフリーリノベーションの費用相場とは? 工事内容も紹介
リノベーションでバリアフリーにするといっても、具体的にどれぐらいの費用がかかり、どのようなことができるのか疑問を持たれる方も多くいます。
実際、リノベーションによってできることはさまざまあります。また、リノベーションではなく簡易的なリフォームで対応できることもあります。
ここでは、バリアフリーリノベーションの工事内容と費用相場を紹介します。
2-1.リフォーム・リノベーション両方でできるバリアフリー工事内容
バリアフリーの家にすることは、大幅な変更を伴うリノベーションだけでなく、簡易的なリフォームでもある程度行うことができます。
リフォーム・リノベーション両方でできるバリアフリー工事は次のようなものが挙げられます。
- 通路やトイレに手すりをつける
- スロープをつけで段差をなくす
- 滑りにくい床に張り替える
- ドアを開き戸から引き戸に変える
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
2-1-1.通路やトイレに手すりを付ける
主な設置場所 | 廊下、トイレ |
費用の目安 | トイレ:25,000円〜40,000円 廊下:10.000円〜15万円 |
解消できるリスク | 転倒を防止する |
おすすめな人 | 足腰が弱ってきた人 |
足腰が弱くなり、転びやすくなった人のために、リフォームで手すりをつけられます。
手すりの設置はバリアフリーのリフォームの中でも手軽であるため、行う方が多い工事です。
設置する場所は、廊下、トイレ、お風呂、寝室などで、費用は場所や設置した手すりの長さによって変わります。
2-1-2.スロープをつけて段差をなくす
主な設置場所 | 扉の下や部屋と部屋の境 |
費用の目安 | 10〜20万円 |
解消できるリスク | 段差につまづくことによる転倒を防止する |
おすすめな人 | 足腰が弱ってきた人 |
廊下と部屋の間にあるドア部分など家の中にあるちょっとした段差は転倒の原因になるため、リフォームで解消しておきたいポイントです。
段差にスロープを付けてなだらかにすることで、段差を解消し、転倒を予防することができます。
2-1-3.滑りにくい床材に張り替える
主な設置場所 | 廊下やリビングの床 |
費用の目安 | 10〜25万円 |
解消できるリスク | 足を滑らせることによる転倒を防止する |
おすすめな人 | 足腰が弱ってきた人 |
転倒は大きなケガや寝たきりにつながるため、なるべく家の中を転びにくい環境にすることが大切です。
リフォームでは、床材を滑りにくいものに張り替えることで転倒しにくい家にできます。
床の張り替えの費用は張り替える広さや選んだ床材の価格によって異なります。
2-1-4.ドアを開き戸から引き戸に変える
主な設置場所 | リビングやトイレのドア |
費用の目安 | ドア一ヶ所につき10〜15万円 |
解消できるリスク | ドアの開口部を広げて車いすでも使いやすくする |
おすすめな人 | 車いすが必要になった人 |
車いすでの生活になった場合開き戸は使いにくいため、室内のドアを開き戸に変えることもリフォームで可能です。
ドアの間口が狭い場合、車いすで通るのが大変になってしまうため、開き戸にするだけでなく間口を広げることができます。
一カ所だけでなく、リビング、トイレ、お風呂など車いすの方が出入りするドアすべてをリフォームすることが必要になると費用が上がります。
2-2.リノベーションだからできるバリアフリーの工事内容
リフォームではなく、家全体の間取りを大きく変えるリノベーションだからこそできるバリアフリーもあります。
リノベーションだからこそできることは次の通りです。
- 家全体をバリアフリーにする
- 間取りからバリアフリーにする
それぞれについて詳しくみていきましょう。
2-2-1.家全体をバリアフリーにする
段差がまったくないフルフラットな家にするなど、家全体を見直すことができるのはリノベーションだからこそできるバリアフリー住宅です。
例えば床の場合、リノベーションでは、床材を一度すべて剥がしたうえで、新しく床をつくります。
その際、構造上高くなっている部分に合わせて家全体の床を上げることで、フルフラットな家にできるのです。
特にお風呂は水勾配を付けるため、築古の物件だと他の部屋よりも高くなっていることも多いのですが、リノベーションで玄関から高さをつけることで脱衣所とお風呂の間の段差をなくし、フルフラットにできます。
家の一部だけに工事をするリフォームでは、ここまでのバリアフリーを実現することはできません。
家全体を一度躯体だけにして、新しいものに変えていくリノベーションだからこそできるバリアフリーなのです。
住宅の広さによっても費用は異なりますが、家全体をバリアフリーにするリノベーションをするためには500万円〜1500万円ほどの費用が相場となります。
2-2-2.間取りからバリアフリーにする
壁を取り払い、間取りを大きく変更することができるリノベーションなら、間取りもバリアフリーにできます。
スケルトンリノベーションでは部屋を仕切る壁を壊し、新しい間取りに変えていきます。
そのため、暮らす人に合わせた動線や、通路幅、壁やドアのあるなしを自由に変えられるのです。
例えば、以下のように間取りや設計段階からバリアフリーを意識することで、家全体の暮らしやすさをアップすることが可能です。
- 廊下の幅を広くとり車いすでも通りやすくする
- スイッチの位置を低くして車いすでも使いやすくする
通路幅や間取りは後からリフォームで変えたいと思っても、なかなか変えることが難しいところまでバリアフリーにできるのは、リノベーションならではと言えるでしょう。
スケルトンリノベーションをするためには、500万円〜1000万円ほどの費用が相場となります。
バリアフリーリノベーションで活用できる補助金制度とは?
バリアフリーリノベーションは国や自治体の補助金制度を活用することで予算を抑えた工事が可能となります。ここでは、バリアフリーリノベーションの際に活用できる補助金制度を5つ紹介します。
- 介護保険
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業
- こどもみらい住宅支援事業
- 各自治体の補助金制度
- リフォーム減税制度も利用可能
コストを抑えてリノベーションできるように参考にしてください。
3-1.介護保険
家族の中に要支援者・要介護者がいる場合のバリアフリーリノベーションは一定の条件を満たすことで介護保険が適応されます。
介護保険が適応されるリノベーションには以下のものがあります。
- 手すりをつける
- 段差を取り除く
- 滑りを防止するための床材の変更
- 洋式便器への取り替え
なお、リノベーションの際に介護保険が適用されると、支給限度額20万円の9割である18万円を上限として、かかった費用が償還されます。
家庭内の要支援者・要介護者を対象にバリアフリーリノベーションをする場合は適応されるか確認してみましょう。
3-2.長期優良住宅化リフォーム推進事業
長期優良住宅化リフォーム推進事業とは、国土交通省が提供する住宅の性能を向上させるリノベーションに対する補助金制度です。
手すりの設置や段差の解消、滑りにくい床材への変更などバリアフリーリノベーションも補助金の対象となります。
なお、長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助金を受けるためにはリノベーションの前に専門家による住宅の診断を受けて、工事後に一定の性能基準を満たさなければなりません。
そのため、制度を活用する際は事前に補助事業者として登録しているリフォーム業者に相談することをおすすめします。
3-3.こどもみらい住宅支援事業
こどもみらい住宅支援事業は、子育て世帯や若者夫婦世帯を対象にリノベーション費用の補助金が降りる制度です。
条件を満たすことで1戸あたり30万円を上限とした補助金の申請ができます。
こどもみらい住宅支援事業で補助金の支給の対象となるのは「開口部の断熱リフォーム」「外壁、屋根・天井の断熱リフォーム」「床の断熱リフォーム」「エコ住宅設備の設置」の4つですが、これらいずれかのリフォームと同時に、「バリアフリーリノベーション」を行えば問題なく補助金が支給されます。
3-4.各自治体の補助金制度
バリアフリーリノベーションに対する補助金制度は各自治体が提供している場合があります。
例えば、東京都大田区は区民が居住する住宅において「耐震リフォーム」や「新生活様式への対応工事」をする場合に10〜20万円を上限に、対象費用の0.5〜2割以内を補助する制度を設けています。
このように、各自治体が独自に補助金制度を提供している場合があるため、バリアフリーリノベーションをする際は自身が住む自治体の補助金制度を確認しておきましょう。
3-5.リフォーム減税制度も利用可能
リフォーム減税制度を利用することで、所得税と固定資産税などの減税を受けられます。
例えば、10年以上の住宅ローンを組んでバリアフリーリノベーションをした場合、年末のローン残高の0.7%の所得税が控除されます。
住宅ローン減税は最長で10年間に渡り所得税の控除が受けられるため、リノベーション費用の負担軽減につながるでしょう。
リフォーム減税制度を利用することで、お得にバリアフリーリノベーションができるため、工事の際は条件に合う減税制度がないか確認しておきましょう。
リノベーションでバリアフリーへの意識がおすすめな重要な2つの理由
バリアフリーというと年を取ってからや必要になってから考えればいいと思いがちですが、リノベーションする際にバリアフリーを意識しておくことは実はとても大切です。
リノベーションする時にバリアフリーを意識するのがおすすめな理由は次の2つです。
- バリアフリーな家はみんなが暮らしやすい家だから
- リノベーション費用はほとんど変わらないから
リノベーションする時にバリアフリーを意識しておくことで、先を見据えた長く暮らしやすい家をつくることができます。それぞれ詳しくみていきましょう。
4-1.家族全員が暮らしやすくなるため
リノベーション時にバリアフリーを意識するのがおすすめな理由のひとつめは、バリアフリーな家は年を取って足腰が弱ってきた人だけでなく、すべての人が暮らしやすい家だからです。
家の中の段差につまづくこと、うっかり床で足を滑らせることは、子どもから大人まで多くの人に起こります。
リビングと廊下、脱衣所、お風呂に温度差があると、小さな子どもをお風呂に入れる時に湯冷めが心配になりますし、風邪を引く可能性があります。
車いすでも押しやすいようスイッチの位置を低めにすると、子どもも押しやすく使いやすくなります。
バリアフリーを意識した家は、年を取った人や車いすで生活する人だけのものではなく、すべての人が暮らしやすい家になるのでおすすめです。
4-2.リノベーション費用は大きく変わらないため
リノベーション時にバリアフリーを意識するのがおすすめな理由のふたつめは、リノベーション費用は大きく変わらないからです。バリアフリーにあとからリフォームする場合はそれぞれの工事に費用がかかります。
しかし、リノベーションする時にバリアフリーを意識した間取りや建材を使う場合、リノベーション費用は普通にリノベーションする場合と大きくは変わりません。
なぜなら、フルリノベーションの場合は間取りをガラリと変え、床もすべて張り替えるため、廊下を広めにする、段差をなくすなどのバリアフリーは、通常のリノベーション工事の内容で実現できるからです。
リノベーションでは新しい床材や扉などの建材は必ず必要になります。滑りにくい床材などは、通常の床材とそれほど変わらない価格のため、リノベーション費用が大きく上振れしてしまうことも避けられるでしょう。
あらかじめバリアフリーを意識してリノベーションをしておくほうが費用面でもお得になるのです。
実施するべきバリアフリーリノベーションの3つのアイデア
バリアフリーを意識した家にリノベーションしたいと思った場合、どのようなポイントに気を付けてリノベーションすればよいか悩む方も多くいます。
次の3つのポイントを押さえておきましょう。
- 家全体をフルフラットにする
- 通路幅を広めにとっておく
- 家全体の温度差をなくす間取りにする
リノベーションの時なら追加費用はほとんど必要なくできるバリアフリー対策です。
しかし、一旦リノベーションが終わった後に、リフォームなどで対応したいと思った場合は難しく、費用がかなりかかってしまいます。
そのため、リノベーションの際にあらかじめ行っておくのがおすすめです。それぞれについて詳しく紹介します。
5-1.家全体をフルフラットにする
場所 | 各部屋ごとの入り口 |
効果 | 段差に足をつまずいて転倒するのを防ぐ 車いすでの移動をスムーズにする |
方法 | 下に敷居のないドアを選ぶ 部屋ごとの段差をなくす |
家全体の段差をなくしフルフラットにすることは、バリアフリーを意識したリノベーションの中で最も押さえておきたいポイントです。
トイレ、リビング、寝室などそれぞれの部屋の境に段差がないように施工します。
廊下とリビングとの境や、脱衣所とお風呂の境など、小さな段差がある家は多いのですが、小さな段差であっても車いすの方や小さな子どもの場合は、つまづいてケガをする原因になります。
リフォームではフルフラットにすることは難しく、スロープなどを付けて段差をなだらかにできません。
フルフラットにしたい場合は、家全体の床をすべて貼り直す必要があり、費用がかなり高くなります。
特にお風呂は、スラブ(躯体の床面)の高さよりも20センチほど高くなっていることがほとんどで、段差を解消するとなるとかなり大掛かりな工事が必要になります。
しかしスケルトンリノベーションをするのなら、床をすべて張り替えるため、段差をすべてなくしてフルフラットにすることができるのです。
一度床を全面剥がした後、お風呂の高さに合わせて玄関からすべて床面を上げることで、全面フルフラットにできます。
◎フルフラットにしたい場所
【トイレ】
【脱衣所】
【お風呂】
【玄関】
5-2.通路幅を広めにとっておく
場所 | 廊下の各部屋の入り口 |
効果 | 車いすでの移動をスムーズにする |
方法 | 通路幅を90cm以上に設計する |
通路幅を広めにとっておくことも、バリアフリーを意識したリノベーションのポイントです。
廊下の幅を広げるのを後々リフォームで行おうと思うと、壁を壊すなどかなり大掛かりな工事となるため難しく、費用も高くなります。
リノベーションの間取りを決める時点で通路幅を広めにとっておけば、後々介護が必要になった時にも暮らしやすくなります。また、リノベーション費用も余計にかかることはありません。
人がすれ違うのに最低限必要な通路の幅は78㎝とされていますが、バリアフリーを意識した場合は車いすも通れる90㎝以上を目安にすると良いでしょう。
通路幅を広めにとっておけば、体格の大きい方や子どもを抱っこした時、大きな荷物を運びたい時も通りやすく、暮らしやすさがアップしますのでおすすめです。
5-3.家全体の温度差をなくす間取りにする
場所 | 廊下の各部屋の境 |
効果 | 部屋ごとの温度差を少なくしてヒートショックを防ぐ |
方法 | 各部屋の仕切り壁をなくして温度差がない間取りにする |
間取りを考える時、家全体の温度差をなるべくなくす間取りにするのもリノベーション時に押さえておきたいポイントです。
寒い冬、リビングは暖房で20℃前後まで暖めているのに、脱衣所やお風呂は10℃前後と寒い、温度差のある家ではヒートショックが起こる可能性があります。
ヒートショックとは、急激な温度の変化によって血圧が大きく変動するなどすることで、身体に大きな負担がかかり、失神や不整脈などの体調不良が起こることを言います。
最悪の場合、心筋梗塞や脳梗塞など、命に係わることがあり、注意が必要です。ヒートショックを防ぐには、家全体の温度差を少なくすることが有効です。
バリアフリーを意識するなら、玄関とリビングの間に壁を作らない、廊下を作らずリビングから直接脱衣所に入れるようにするなど、間取りを工夫することで家全体の温度差を少なくできます。
【部屋別】バリアフリーリノベーションのポイント
以下の部屋別のバリアフリーリノベーションをする際のポイントを紹介します。
- リビング
- お風呂
- トイレ
- キッチン
- 玄関・廊下
介護の必要性が高まった場合などは、よりバリアフリーを意識した家へとリノベーションすることが必要になります。それぞれ確認していきます。
6-1.リビング
リビングのバリアフリーに必要なポイントは次の2つです。
場所 | タイミング | ポイント | 効果 |
床 | リノベーションした時 | 床材を滑りにくいものにする | 転倒を防止する |
傷がつきにくい床材を選ぶ | 車いすでも使いやすくする | ||
壁 | 介護が始まる前 | 手すりをつける | 転倒を防止する |
擦り傷がつきにくい壁紙にする | 手すりを使うことによる傷を防止する |
リビングは、転倒防止のために床材を滑りにくいものにしておくのがおすすめです。介護だけでなく、子育て中の方にも滑りにくい床はピッタリですので、リノベーション時に最初から床材を滑りにくいものにしておきましょう。
また、なるべく傷が付きにくいものにしておくと、車いすが必要になった時に安心です。
本格的な介護が始まったら、手すりを付けることを検討しましょう。こちらは足腰が本格的に弱り、介護が始まる前で大丈夫です。
一緒に壁紙を擦り傷が付きにくいものに変えるのもよいでしょう。
6-2.お風呂
お風呂のバリアフリーに注意したいポイントは次のものがあります。
場所 | タイミング | ポイント | 効果 |
床 | リノベーションをした時 | 入り口の段差をなくす | 転倒を防止する |
床材を滑りにくいものにする | 転倒を防止する | ||
壁 | リノベーションをした時 | 手すりをつける | 転倒を防止する |
バスタブ | リノベーションをした時 | またぐ高さが低いバスタブを選ぶ | 転倒を防止する |
お風呂と脱衣所の境の段差は、リノベーション時点で解消しフラットにしておきます。
ユニットバスは床材をすべりにくいものにする、手すりを付ける、高さが低いバスタブを選ぶといった点を注意しておくと長い期間使いやすいお風呂にできます。
これらは高齢者だけでなく、子どもと一緒にお風呂に入る時にも生活しやすくなるため、リノベーションする時点でやっておくのがおすすめです。
6-3.トイレ
トイレをバリアフリーにするには次のような点が必要になります。
場所 | タイミング | ポイント | 効果 |
床 | リノベーションした時 | 入口の段差をなくす | 転倒を防止する |
床材を滑りにくいものにする | 転倒を防止する | ||
壁 | 介護が始まる前 | 手すりをつける | 転倒を防止する |
ドア | リノベーションした時 | 引き戸にする | 車いすでも使いやすくする |
トイレ全体 | 介護が始まる前 | スペースを広げる | 車いすでも使いやすくする |
トイレの入り口も、段差をなくしてフルフラットにしておきます。
手すりは介護が必要になってからつける方がよいでしょう。ドアは最初から引き戸にしておくと、間口が広く使いやすくなります。
車いすで生活する必要が出てきた場合は、トイレ全体を広げて車いすでも入ることができるリフォームを考えましょう。
6-4.キッチン
キッチンのバリアフリーポイントは次の2つがあります。
場所 | タイミング | ポイント | 効果 |
コンロ | リノベーションした時 | 安全装置のついたものにする | 火事や事故を防ぐ |
キッチンカウンター | 車いすを使用する時 | カウンター下に足が入るものにする | 車いすでも使いやすくする |
コンロは安全装置のついたものにしておくと、高齢者はもちろん子どもがいても安心です。
ガスコンロではなくIHにすることで、袖口などに火がついてヤケドする事故を防げます。
キッチンカウンターは車いすを使用するようになった場合、下にスペースがあり足が入るものに交換することで使い勝手がよくなります。
6-5.玄関・廊下
玄関と廊下をバリアフリーにするポイントは次のようなものが挙げられます。
場所 | タイミング | ポイント | 効果 |
玄関 | リノベーションをした時 | 段差を低くする | 転倒を防止する |
廊下の幅 | リノベーションをした時 | 幅広く(90cm以上)にする | 車いすでも使いやすくする |
廊下の壁 | 介護が始まる前 | 手すりをつける | 転倒を防止する |
玄関は段差をなるべく低くすることで、転倒を防止できます。リノベーションする時に最初から段差を低くしておきましょう。
廊下の幅は広めにしておくと、車いすなどはもちろん、様々なシーンに対応できます。目安は90㎝以上です。
手すりを付けるのは介護が始まる前でよいでしょう。
バリアフリーにリノベーションする際の会社の選び方
バリアフリーにリノベーションする時は、リノベーションを依頼する会社の選びかたも重要です。
なぜなら、バリアフリーに対する知識が少ない会社に依頼してしまうと、間取りや設備に不備があり、使いにくい家になってしまうためです。
バリアフリーにリノベーションする時におすすめの会社を選ぶポイントは次の3つです。
- バリアフリーのリノベーション事例がある
- プラン決定までに十分な打ち合わせができる
- アドバイスが的確で信頼できる
それぞれについて詳しく紹介していきます。
7-1.バリアフリーのリノベーションの実績がある
リノベーション会社をいくつかピックアップしたら、まずはサイトにある事例をチェックしましょう。
サイトの事例にバリアフリーを意識した事例がある会社を選ぶのがおすすめです。
リノベーション会社を探す場合は、「リノベーションしたい物件があるエリア+リノベーション会社」とインターネットで検索するとピックアップできます。
バリアフリーを意識した事例があるということは、ある程度バリアフリーに対する知識や経験がある証明となります。
まずは事例をチェックし、バリアフリーを意識したリノベーションができる依頼先を選んでおきましょう。
7-2.プラン決定までに十分な打ち合わせができる
プラン決定まで何度も打ち合わせできる会社を選ぶのも、バリアフリーリノベーションする時には大切です。
一部だけをバリアフリーにするリフォームとは違い、バリアフリーリノベーションでは家全体を大きく変えます。
間取りやデザインの自由度が高い分、プランを最終決定するまでには何度も打ち合わせをして希望を取り入れてもらう必要があります。
打ち合わせ回数に制限がある会社などもあるため、納得のいくプランにできるリノベーション会社を選びましょう。
まずは実際にリノベーション会社に足を運び、プラン決定まで平均何回くらい打ち合わせが必要なのかを確認してみましょう。
7-3.アドバイスが的確で納得できる
ここならいいかも、と思った会社があれば、バリアフリーリノベーションを希望していることを伝えてどんなプランが提案してもらえそうか聞いてみましょう。
バリアフリーを意識していることを伝えた上で、今までの事例ではバリアフリーにするためにどのようなプランにしてきたのか、どんな点を気を付けるとバリアフリーになるのかを聞いてみます。
すべてのアイデアが採用できるわけでなくても、バリアフリーにするためのアドバイスや提案が的確で、納得できると感じたリノベーション会社を選ぶと満足度の高いリノベーションになりやすいですし、安心してお任せできます。
バリアフリーにリノベーションをする場合の3つの注意点
バリアフリーにリノベーションをする場合は以下の3つの注意点を紹介します。
- 介護するためのスペースも確保する
- 照明の明るさにも気を遣う
- 家族で十分に話し合う
リノベーション後に快適な生活を送るためにそれぞれ確認しておきましょう。
8-1.介護するためのスペースも確保する
バリアフリーの住宅にリノベーションする際は、介護や介助する人のスペースも考えて工事をしましょう。
例えば、足腰が不自由で車いす生活を送る人がいる場合はトレイの空間を広く設計しておくなど介助者が動きやすいスペースを確保することで快適な生活につながります。
バリアフリーリノベーションはケアを受ける方の生活をメインに建物の設計が行われがちです。
ケアを受ける方だけでなくケアをする方にも配慮された設計でバリアフリーリノベーションをするように注意しましょう。
8-2.照明の明るさにも気を遣う
加齢にともない視覚の変化を感じる方もいます。
視覚の機能が低下すると段差が見にくくなったり、明暗順応に時間がかかったりするようになります。
また、照明の明るさも若い方と比べて暗く見えるようになる方もいます。
視覚機能の変化を理解して明るい照明へとリノベーションすることもさまざまなリスクを減らすために重要です。
8-3.家族で十分に話し合う
バリアフリーリノベーションの際は、家族全員で十分に話し合いをして設計を検討することが大切です。
大規模なリノベーションをすると日常生活が大きく変化する場合があります。
その結果、リノベーションをしたことにより生活が返って不便になる可能性もあるのです。
建物に住む家族全員が快適な空間で生活を送れるように、高齢者や子供、配偶者などそれぞれの要望をしっかり聞いてリノベーションをするようにしましょう。
バリアフリーにリノベーションした事例3選
ここまで紹介してきたバリアフリーのポイントを押さえてリノベーションをした場合の事例を3つ紹介します。
- スロープで巡る我が家
- おしどり夫婦のシェアハウス
- ゆるく繋がるプライベート空間
バリアフリーにリノベーションする際にぜひ参考にしてください。
9-1.スロープで巡る我が家
家の種類:マンション
専有面積:86.92 平米
築年月:1974年
居住人数:2人
バリアフリーのポイント:
◎車いすでも快適に暮らせるスロープやフルフラットの回遊動線
◎二人ですれ違っても十分な通路幅や広さのあるトイレ
◎車いすでも使いやすい水回りの仕様やワークスペース
車いすでの生活ということを軸に、「暮らしにくさ」を解消してプランニングしていった事例です。
十分な通路幅を確保したり、サニタリーに回遊動線をつくることで行き止まりをなくしたりすることで、日々の生活も快適に送れるよう工夫した。
物件の決め手にもなったルーフバルコニーに車いすでも出やすいよう、家の中にはルーフバルコニーへ続く全長4.5mのスロープを設けました。
以前の賃貸暮らしの時には「トイレが物理的に狭い」と感じていたというお施主さま。リノベーションではトイレスペースは十分な広さを確保し、フルフラットに設計しました。
また、これまでは洗面台やキッチンの前では体を捻り、車いすを横向きにして使う不便さがあったことから、ワークスペースや洗面台の下はオープンにして車いすを正面向きのまま入れられるように工夫しました。
実際のお客様の声
販存の物件では、床がフラットだったり、引き戸であったり物理的にバリアフリーと言われる部屋であったとしても、車いすで暮らすにはどうしても住みづらさがあったので、リフォームよりも間取りごと変えられるリノベーションに魅力を感じました。
例えば、車いすで洗面台やキッチンは腰を捻りながら使うこと、通路や玄関等の二人でぶつかる動線、トイレの物理的な狭さなどの「今まで工夫しながら生活をしていた部分」は、リノベによって解決されて暮らしやすくなると思いました。
バリアフリー面を考えるとどうしても実用性を重視した内容になってしまうのではないかと不安だったのですが、自分達の理想の雰囲気とバリアフリーが調和した素敵な提案をたくさんしていただけてとても楽しかったです。
車いすで生活するために必要な通路の幅は?旋回するためのスペースはどれくらいか?スロープの傾斜は?扉の形状は?電気スイッチの高さをどうするか?ハンガーパイプの高さは?など、一つ一つのパーツを細かく調整していきました。
また、水回りの下はオープンにすることで、座ったままでも作業ができるようにしていだきました。
9-2.おしどり夫婦のシェアハウス
家の種類:マンション
専有面積:77.76 平米
築年月:1982年
居住人数:2人
バリアフリーのポイント:
◎家全体をフルフラットにして転倒しにくく、車いすでも移動しやすい家に
◎車いすでの生活を視野に、廊下は広く、部屋と部屋の間にドアは付けない造り
◎リビングの一角の畳は小上がりにせず段差をなくした
子どもが独立した後に、夫婦二人で暮らす終の棲家して、バリアフリーを意識してリノベーションした事例です。
リノベーションした時点では元気ですが、今後年齢を重ねて車いすになった時のことを想定し、扉の幅、廊下の幅を広めにとってあります。
通路幅を広くとることで、車いすになった時も動きやすくなっているのはリノベーションだからこそできるバリアフリーです。
また、部屋と部屋の間にはなるべくドアを付けないことで、さらに車いすでの移動をしやすくする工夫もあります。
お風呂の入り口にも段差がなく、扉の幅も広くとってあります。
介護が必要になった時に、なるべく負担のない間取り、つくりを考えているのがポイントです。
子ども家族が泊まりに来た時に布団を敷けるよう、リビングの一部は畳にしてありますが、あえて小上がりにせず、フラットにすることで転倒を防止できるのもポイントです。
トイレも引き戸にして間口を広くとってあります。
さらに吊り戸にすることで、床にレールもなくまったく段差のない状態にできました。
トイレと廊下にまったく段差がないため、つまづく可能性が低く転倒防止になります。
この事例を詳しく知りたい方は、こちらのページをご覧ください。
9-3.ゆるく繋がるプライベート空間
家の種類:マンション
専有面積:70.79平米
築年月:1974年
居住人数:3人
バリアフリーのポイント:
◎スラブより20㎝床を上げて実現したフルフラットな住まい
◎それぞれの個室には扉を付けず車いすでも移動しやすい造り
家全体の床の高さを上げてフルフラットすることで、年をとっても転倒しにくく、車いすでも暮らしやすいバリアフリーの住まいにリノベーションした事例です。
もともとは浴室に段差がありましたが、フルフラットにするために玄関から床を上げてリノベーションしました。
玄関からリビングまで壁がなく、フラットな空間が続きます。通路の幅もなるべく広めにとることで、さらに車いすでも暮らしやすい家になりました。
玄関とキッチン、リビングダイニングとの境は、壁やドアではなくカーテンで仕切ります。
壁とは違い簡単に開けることができるので、車いすや、介護する人が身体を支えても移動がしやすくなります。来客からの目線が気になる時は、さっと閉めればよいので手軽です。
浴室と脱衣所の段差がなくフラットなので、転倒の心配が少なくなりました。
それぞれの個室には扉がなく、ゆるくつながった空間になっています。
あえて扉を付けないことで、車いすになったとしても間口が広く移動しやすいというメリットがあります。
リビングは広くとることで、暮らしやすさもアップしました。
まとめ
バリアフリーリノベーションでできる工事内容や費用の相場についてご紹介しました。
バリアフリーの家にすることで、高齢者や介助が必要な方だけでなく、子育て中の方などどんな人にも住みやすくなります。
後からリフォームでバリアフリーにするのは制限もあり費用も掛かります。
しかし、リノベーションする時にバリアフリーにしておけば、リノベーション費用が追加でかかることもなく、誰でも住みやすい家にできるでしょう。
ぜひ、バリアフリーを意識したリノベーションで、住みやすい家を手に入れてください。
なお、ゼロリノベではリノベーションの実績が豊富にあり、物件の選定から間取りプランのご相談、施工までワンストップでバリアフリーリノベーションのサポートが可能です。
また、資金計画やリノベーションのアイデアなど、はじめてリノベーションされる方向けの無料オンラインセミナーを毎週開催しています。顔出しなし&ミュートのまま聞くことができるので、ご自宅から気軽にご参加ください。