【事例付き】倉庫リノベーションとは?目的や費用相場、メリット・デメリットを完全解説
「倉庫リノベーションのイメージが湧かない…」
「倉庫リノベーションのメリットや費用相場、使い勝手ってどのようなもの?」
倉庫リノベーションですが、倉庫の雰囲気とオリジナリティのある空間に憧れる方が多く、倉庫リノベーションの需要が高まっています。
そもそも倉庫リノベーションとは、使われなくなった倉庫を住宅やカフェなどの店舗、オフィス用に再利用する設計・工事です。
本記事では、リノベーションの現場に数多く携わる一級建築士として、どのような人が倉庫リノベーションに向いているのかを紹介します。
- 住宅
- カフェなどの店舗
- オフィス
の3つの用途に分けて内容や特徴を解説しています。
倉庫リノベーションの目的やメリット・デメリット、事例などに触れているため、読み終える頃には、自分たちに倉庫リノベーションが向いているかどうかがわかるでしょう。
それでは、ぜひこの記事を自分たちの今後のためにお役立てください。
一級建築士
西村 一宏
東洋大学ライフデザイン学部講師。リノベーション・オブ・ザ・イヤーを受賞した設計・施工部門の責任者としてゼロリノベ建築を担う。
倉庫リノベーションとは?=「使われていない倉庫を再活用・再利用する取り組み」
倉庫リノベーションとは、使用されていない倉庫を住宅や住居、カフェなどの店舗、オフィスに再利用するためにリノベーションをすることです。
不要な倉庫を取り壊すのではなく、改修して別の目的で利用します。
倉庫を違った用途で利用すれば、倉庫の雰囲気を活かした独特の空間演出とデザインを実現できます。
そのため、あえて中古で倉庫を購入し、店舗や住宅などに目的を変更して利用するケースも多く見られます。
倉庫リノベーションをする3つの目的とは?
使用されていない倉庫をリノベーションする場合、どのような目的で利用することが多いのでしょうか。
多くの場合は、下記の3つの使い方が挙げられます。
- 住宅・住居
- カフェなどの店舗
- オフィス
それぞれどのような特徴があるのか、詳しくみていきましょう。
2-1.住宅・住居にリノベーション
倉庫の雰囲気や名残を活かしつつ、倉庫を住宅・住居として使用する場合があります。
無骨さを演出しつつも、外装や設備は新しく現代的な住まいを再現できます。
倉庫は通常のマンションや一戸建てと比較し、天井高を確保しやすい建物です。
そのため、広々とした開放的な空間を作り出しやすくなっています。
また、倉庫は物を運びやすくするために、間仕切りが少なく、1つの大空間となっています。
間取りもライフスタイルに合わせて高い自由度で変更できるでしょう。
2-2.カフェなどの店舗にリノベーション
倉庫には、無骨な骨組みや時を経た古い木材など、独特の構造物が存在します。
それらを活かしながらうまく店舗のイメージをミックスできれば、ゼロから作る新品の空間には出せない昔ながらの空間の演出が可能です。
また、天井高によって開放的な空間を実現できるので、間取りも店舗のイメージ・コンセプトに合わせて自由度高く仕上げられます。
2-3.オフィスにリノベーション
他のオフィスにはない独特の雰囲気を倉庫リノベーションによって生み出すことで、デザイン性へのこだわりを表現したりSDGsへの貢献も実現できます。
また、間取りの自由度の高さも魅力的です。
オフィスには、働きやすい環境が求められます。
少しでも働きやすいと感じる環境作りのために、リラックスして仕事ができるスペースや、独自の会議室など、世の中に出ているさまざまなアイデアを取り入れたオフィスづくりも可能でしょう。
倉庫リノベーションの費用はどのくらいかかる?パターン別の費用相場を紹介
倉庫リノベーションにかかる費用は、工事の規模やリノベーションの目的によって異なります。
では、具体的にどのくらいの費用が必要なのでしょうか。
今回は、下記の3つの目的で必要な費用の相場を解説します。
- 住宅・住居
- カフェなどの店舗
- オフィス
それぞれ詳しくみていきましょう。
3-1.住宅・住居にリノベーションする場合
倉庫の広さや材料によるため、ここで紹介する費用は目安となりますが、電気・ガス・水道・断熱・防音などが揃っており、内装工事だけで済む可能性があるなら、200万円〜500万円程度のリノベーションで収めることも可能です。
ただし、各種設備を整えるとなると、1,000万円程度を想定しておく必要があります。
また、内装だけでなく、外側の屋根や壁などを補修したり、耐震補強や入り口を変更したりなどの工事をする場合は、1,500万円以上を想定しておきましょう。
倉庫のリノベーションではありませんが、費用別のリノベーションで何がどこまでできるかを下記記事にてまとめています。
3-2.カフェなどの店舗にリノベーションする場合
店舗の場合、住宅やオフィスにリノベーションするよりも、費用がかかる傾向にあります。
50平方メートルを内装も外装もリノベーションするならば、1,500万円程度は想定しておきましょう。
住宅やオフィスの場合は、1平方メートルあたり、12~18万円程度を想定しておけば、ある程度のリノベーションは可能です。
ただし、物販を行う店舗の場合は、オフィスと金額はそこまで変わりません。
しかし、店舗でも飲食店などの場合は、水まわりに費用が大幅にかかるため、上記の金額以上を想定しておいたほうがよいでしょう。
3-3.オフィスにリノベーションする場合
オフィスの場合、特殊なリノベーションを実施することは少ないため、1平方メートルあたり、12~18万円程度を想定しておけばある程度のリノベーションは可能となります。(60平方メートルで720万円〜1080万円)
ただし、耐震補強や防音、外壁や屋根などの補修などが必要な場合は、+ 500万円程度を想定しておくと安心です。
内装に関しても、充実した水回りが必要であったり、高級なテイストに仕上げる必要があったりすると、費用はどんどん上がっていきます。
オフィスだからといって、必ずしも安くリノベーションをできるわけではないので、勘違いしないようにしましょう。
倉庫リノベーションする5つのメリットとは
リノベーションによって倉庫を他の用途で活用することで、さまざまな魅力やメリットを感じられます。
そこで今回は、メリットとして、下記の5つを紹介します。
- 独特のデザインによるおしゃれな空間を作り出せる
- 天井を確保しやすく開放感がある
- 間取りの自由度が高くなる
- 解体費用・購入費用が高くなる
- 既存建物によっては耐久性がすでに高い場合がある
それぞれ詳しくみていきましょう。
4-1.独特のデザインによるおしゃれな空間を作り出せる
倉庫リノベーションでは、コンクリートが見える躯体現しなどによって、シンプルモダンな雰囲気や無骨でレトロな雰囲気を活かした独特のデザイン空間をつくり出せます。
新築の建物では生み出せない雰囲気が演出でき、商品のプラスになったりデザイン性をアピールできます。
他にはない個性的なアイデア満載の空間を演出できるでしょう。
4-2.天井を確保しやすく開放感がある
倉庫は、通常の戸建てやマンション、テナントと比較して天井高が確保しやすい傾向にあります。
倉庫本来の目的は多くの荷物を保管することです。そのため、天井が高くなっています。
天井が高いことで、開放的な空間にできます。
そのため、床面積が限られた空間でも、開放感を得られるでしょう。
4-3.間取りの自由度が高くなる
倉庫は、もともと仕切りのない1つの大きな空間となっている場合が多いです。
そのため、リノベーションで間取りを決める際に邪魔する構造的要素が少ないため、間取りの自由度がかなり高くなっています。
倉庫をリノベーションする目的、用途はさまざまです。
構造部分さえ残せば後は自由なため、それぞれが希望する間取りを実現しやすくなります。
4-4.解体費用・購入費用が安くなる
倉庫は、居住用や店舗用の建物よりも販売価格が低い傾向にあるため、購入費用を抑えられます。
そのため、金額的に届かないエリアであっても、倉庫の場合は購入できる可能性もあります。
また、倉庫室内が最初から開けている場合が多く、いらないものを取り除く解体費用が、安く抑えられます。
4-5.既存建物によっては耐久性がすでに高い場合がある
一般的な倉庫のほとんどは鉄骨造のため、耐震性や耐久性の面で強固な構造が多くなっています。
しかし、耐震性や耐久性が高くても、開口部を設ける場合には注意しなければなりません。
構造によっては開口部を入れられない場合があるので、プロとしっかり相談して配置や設置場所・方法を考えましょう。
倉庫リノベーションする6つのデメリットとは
倉庫リノベーションには魅力的なメリットがある一方、デメリットも存在します。
今回は、下記の6つのデメリットを紹介します。
- 水道・ガス・電気などのインフラ設備に費用がかかる
- 断熱性・防音性・気密性が低い場合がある
- 建物の補強や性能の向上が必要
- 採光や換気が必要
- 立地が悪い場合がある
- 用途変更の手続きをしなければならない
それぞれ詳しくみていきましょう。
5-1.水道・ガス・電気などのインフラ設備に費用がかかる
多くの倉庫では、水道やガスなどの必要なインフラは揃っていないことがほとんどです。
もちろんインフラ関係は、リノベーションの工事内で設置できますが、その分費用がかかってしまいます。
中には、使われていない倉庫であっても、倉庫内の照明に電気が通っている場合が多数あります。
ただし、倉庫から住宅などに用途を変更する場合には、照明箇所やコンセント箇所を増やす必要があるため、追加の電気工事が必要です。
5-2.断熱性・気密性が低い場合がある
倉庫の目的は商品や材料、道具などの保管のため、断熱材が使用されていない場合がほとんどです。
また、気密性が低く冷暖房も効きにくいため、気密性に関しても対策が必要です。
そのため、リノベーション時に追加費用を払って断熱・気密対策をしなければなりません。
ただし、倉庫によっては食品の保管に使用されているものもあるため、あらかじめ断熱対策がしっかり施されている場合もあります。
5-3.建物の補強や性能の向上が必要
これから新しく倉庫を購入する場合も、今所有している倉庫をリノベーションする場合も、建物の耐震などを調査してくれるホームインスペクションへの依頼、リノベーション会社に用途を伝えて設備で何が足りていないかなどを確認してもらったうえで、購入・リノベーションの依頼をしましょう。
ホームインスペクションは10万円程度で調査してくれます。
建物購入前の場合には、調査や工事費用概算をリノベーション会社の担当に算出してもらいましょう。
倉庫の現状によっては、想定外に費用がかかる可能性があります。例えば、耐火被覆の除去費用に数百万円かかるケースもあります。耐火被覆とは、建物が燃えないために特殊な材が鉄骨などを覆っているもので、古いものの場合、アスベストが使われている場合もあります。その場合は除去しなければ使用できないため、除去費用をはらって工事する必要があります。
規模にもよりますが、数百万円程度の金額がかかる場合もあるため、これから倉庫を購入するならば、問題がない物件かどうか、売り主側に確認をとるか、リノベーションの会社の担当者に見てもらうなどのステップをふみましょう。
5-4.採光や換気が必要
倉庫には最低限の窓や扉だけが設置されている場合がほとんどです。
窓や扉が少ないと光がなかなか入らず、風も抜けにくいため圧迫感のある空間となってしまいます。
居心地のよい空間を生み出すためにも、窓や扉を増やさなければなりません。
また、建築基準法では、換気回数や採光の基準が定められています。
非居室の場合は関係ありませんが、住宅や店舗、オフィスなどには関係してくるため、建築基準法を満たすために窓や扉を増やさなければなりません。
5-5.立地が悪い場合がある
大規模な倉庫の多くは商業地域や工業地域に設置されています。
そのため、戸建てやマンションなどと比較すると立地があまりよくありません。
そもそも倉庫は居住や集客などを目的としておらず、物の収納がメインのため、アクセスがよくなくスペースのある場所に設置されています。
目的を変更するとなった場合は、立地の悪さがネックとなるでしょう。
5-6.用途変更の手続きをしなければならない
倉庫を店舗に改装する場合や住宅ローンを利用する場合には、用途変更手続きが求められるケースがあります。
具体的には、下記の条件に当てはまる場合に手続きが必要です。
- 倉庫から特殊建築物に変更する場合
- 床面積が200平方メートルを超える場合
知らないうちに法令違反となってしまうと、罰金などのペナルティを受けることになるため、注意しましょう。
用途別!倉庫リノベーション事例6選
ここまで目的やメリット・デメリットなどを解説してきました。
では、実際に倉庫リノベーションによって変化した建物はどのような完成形なのでしょうか。
今回は、倉庫をリノベーションした建物に関して、6つの事例を紹介します。
6-1.住宅|倉庫モダンな住まい
出典:リノベーションスープ
実家の倉庫部分をリノベーションした事例です。
倉庫の特徴でもある天井が高く確保できていることから、子供部屋にもロフトを作っています。
構造部分の筋交いは、アクセントとして倉庫のなごりを感じさせます。
6-2.住宅|趣味をとことん楽しむ倉庫住宅
農業用倉庫をまるごと住まいに変えた大人の秘密基地。
目指したのは、”倉庫で趣味をとことん楽しむ”暮らし方だそうです。
開放的でワクワクさせてくれる住まいとなっています。
6-3.店舗|rub luck cafe/ラブ・ラック・カフェ
和歌山県有田市にある倉庫をリノベーションしたカフェ。
室内にはオーナーが集めたアンティーク家具が多く用意されており、ゆったりとした時間を過ごせます。
カフェには「海を見て食べる」をコンセプトに数種類のカレーやタコライス、サンドなどをご用意されています。
また、目の前の海でとれた釜揚げ仕立てのしらす丼は、観光客・地元の人の人気メニューです。
6-4.店舗|イリヤプラスカフェ@カスタム倉庫
出典:イリヤプラスカフェ@カスタム倉庫フェイスブックページより
東京都台東区寿にあるカフェ。
二階建ての古い木造倉庫を改装し、オーナーがポートランドから買い付けてきた家具を並べた空間となっています。
柱や梁を見せることで、倉庫の雰囲気を感じられる仕上がりになります。
6-5.オフィス|THE NATURAL SHOE STORE
出典:東京R不動産
靴の製造および輸入を行っている企業の新しいブランド「THE NATURAL SHOE STORE」の倉庫オフィス。
断熱もない巨大空間をすべて空調しようとすると、光熱費がかかってしまうため、倉庫の中にガラスのキューブを置いて、室内だけを空調する方法を採用した開放的なオフィス空間です。
天井高を最大限に確保することで、倉庫のなかにもう1つの建物がある空間が可能となっています。
6-6.オフィス|ゼロリノベオフィス
出典:ゼロリノベ
こちらは、ゼロリノベ駒込店の旧オフィスです。
1961年築の二階建て木造倉庫をリノベーション会社のオフィスとしてリノベーションしました。
1Fはカフェのようなミーティングスペース。
2Fはワークスペースとミーティングスペースとなっており、木造倉庫の雰囲気が残りつつもデザイン性のある空間となっています。
倉庫リノベーションの流れ・工事期間とは
倉庫の購入からスタートする場合、倉庫を購入後、リノベーション設計の打合せや工事を行い、用途変更確認申請手続きの流れになります。
また、リノベーションして工事が完了するまでは、規模に応じてですが3ヵ月〜6ヵ月程度かかります。
打合せ期間はこだわり方にもよりますが、1ヵ月〜2.5ヵ月程度を想定しておきましょう。
また、工事期間も2.5〜3ヵ月程度を想定しておきましょう。
ただし、大規模な店舗やオフィスの場合はさらに工事期間を要する場合があります。
通常の住宅よりも規模が大きくなりそうな場合は、事前に工事期間を確認しておくことをおすすめします。
なお、倉庫から用途変更する場合、建物の「用途変更確認申請手続き」を行う必要があります。
申請をしないまま建物を新たな用途で使うと、法律違反になってしまいます。
建物の用途によって、設けられた基準が異なるため、新たな用途として使っていくためにも、用途変更確認申請手続きをしなければなりません。
倉庫リノベーション物件だと税金はどうなる?=「全体的に税金があがる」
倉庫から住宅や店舗、オフィスとして用途変更をした場合、税金面での変化は固定資産税・都市計画税にあらわれます。
リノベーションを実施した場合、基本的に倉庫のときに納めていた固定資産税や都市計画税よりも上がると考えておきましょう。
固定資産税などは3年ごとに評価額が変更となり、経年によって評価額は下がっていきます。
しかし、倉庫から住宅や店舗などにリノベーション(改築)し、新品に近づくと、評価が上昇します。
そのため、倉庫をリノベーションした場合は、税金は上がることも想定しておきましょう。
事前にどの程度税金が上がるかは、東京都主税局の担当の方から「計算は不可能に近い」と教えていただきました。
というのも、変更される用途と改築後の内容によって評価をゼロから計算するためです。
より詳しい内容や用途変更手続きについては、リノベーションの設計や工事がスタートするタイミングで税務署に確認しましょう。
まとめ
用途によって、少しずつメリットが異なる倉庫リノベーションですが、独特の空間はやはり魅力的です。
倉庫リノベーションのデメリットとしては、倉庫によって、必要な設備が整っておらず、工事費用がかかる場合があることです。
これから倉庫を購入する際、どの程度の工事が必要になるのかを事前に把握するためにも、インスペクションで既存建物の調査をしてもらったり、リノベーション会社の担当に見てもらったりすることをおすすめします。
倉庫リノベーションの設計・工事期間は状況と規模によりますが、3ヵ月〜6ヵ月程度を想定しておきましょう。
ただし、住宅以上のスケールの倉庫はもっと期間が必要になることもあるため、事前に依頼先に確認してください。
以上のことをふまえ、自分たちだけの素敵な倉庫リノベーションを実現させましょう!
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倉庫のリノベーションをご検討中の方であっても、疑問点や不安なことがあれば、お気軽にご相談いただけます。
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