採光と通風が特徴的なリノベーション3例|魅力と設計デザインのポイント
快適な住空間にするためには、「採光」と「風通し」は必要不可欠なものです。
そのため、リノベーションでもっと自然光が入る部屋にしたい、1年を通して風が通り抜ける清々しい住環境にしたい、と考えている方も多いのではないでしょうか。
リノベーションは、間取りを大きく変えたり壁を自由に作り変えたり、工夫次第で空間全体に光を届けたり、風が通り抜ける部屋に変えられます。
今回は、採光や風通しが良い部屋の魅力やリノベーションでできる工夫やポイント、実際にリノベーションで採光・風通しを良くした事例をご紹介します。
快適な住まいの計画にぜひお役立てください。
一級建築士
西村 一宏
東洋大学ライフデザイン学部講師。リノベーション・オブ・ザ・イヤーを受賞した設計・施工部門の責任者としてゼロリノベ建築を担う。
採光・風通しが良い部屋の魅力
そもそも採光や風通しが良い部屋とは、どのような条件下にあることを指しているのでしょうか。建築基準法も含めて確認するとともに、採光・風通しの良い部屋の魅力もご紹介します。
1-1.採光・風通しとは?
「採光」とは
採光とは、窓などの開口部から自然光を室内に取り入れることを指します。住宅において「採光」は重視されており、建築基準法で一定の採光が必要と定められています。
具体的には、居室の床面積の1/7以上の有効採光面積を確保しなければなりません。有効採光面積は主に開口部の面積を指しており、採光は北側からの自然光でも可能です。
有効採光面積が定められるのはリビングや寝室、子供室などあくまで「居室」であり、納戸やトイレなどの部屋は対象から除かれます。
「風通し」とは
風通しとは、部屋の空気の流れやすさのことを指します。一般的に「風通しが良い」条件は、窓が複数あり外から新鮮な空気を取り込んで、室内の汚れた空気を吐き出してくれる、常に循環できる環境にあることです。
今は換気システムを導入することも多いため、窓が少ない場合でも効率的に空気の入れ替えができますが、マンションの場合、限られた面積の中で個室を無理に確保しているケースもあり、採光も通風も十分に確保できていないことも多いものです。
そのため、リノベーションで間取り変更することより、劇的な改善が可能になります。窓から自然の風が通り抜けられると、清々しくより心地よい住空間となるでしょう。
健やかな暮らしを育むためには、一定の「採光」や「風通し」が欠かせません。
リノベーションは、効果的に自然光を取り込んだり、部屋の奥まで風通しのよい環境にしたりすることができます。機能性やデザインと一緒に採光や風通しも計画しながら進めることをおすすめします。
【出典】「昭和二十五年法律第二百一号建築基準法」(e-gov)
1-2.採光・風通しが良い部屋の魅力
採光が良い部屋は、「明るく」「暖かい」ことが魅力です。自然光が降り注ぐ部屋では日中に照明を付けなくても過ごせるため、電気代の節約にもつながります。
また、室内に日差しが届くと暖かくなりやすいため、寒い時期は暖房の使用頻度を少なくできるメリットもあります。
風通しが良い部屋の魅力は、「衛生的」で「清々しい」ことでしょう。風が通り抜けて空気の循環も良好であれば、「カビ」の原因にもなる湿気が溜まりにくくなります。
風が通ることで湿気がこもらずカビに限らず雑菌が繁殖しにくい環境となりますから、衛生的で気持ちの良い空間が期待できます。
「採光」と「風通し」の両方の条件が整うことで、思わず深呼吸してしまうような心地よさを感じられるでしょう。
リノベーションで部屋の採光・風通しを生かすポイント
既存の部屋の採光・風通しの条件が整っていなくても、リノベーションによって採光や風通しを良くすることが可能です。この章では採光・風通しを生かせるリノベーションのポイントをご紹介します。
2-1.光と風を取り込む壁や天井の工夫
間仕切り壁や天井部分を少なくすることで、開放感のある空間になり全体に光が届きやすくなります。
マンションであれば、個室の間仕切りにガラスなどを用いた室内窓を設けたり、開口部を大きく設けたりすると、部屋の奥まで明るさが確保できますし、風の通りも良くなります。
リビングに室内窓を設けたリノベーション事例
戸建てやメゾネットタイプの住宅であれば、吹き抜け部分を設けたり階段はスケルトン仕様にしたりすると、多方面から光や風を取り込むことができます。
スケルトン階段で風通りのよい住空間の事例
寝室や子供室、ワークスペースなど個室の間仕切りに透明ガラスやアクリル板など透ける素材を使うと、採光が確保しやすく見た目にも開放感が得られます。
透明素材を使うことに抵抗がある場合は、すりガラスなど不透明な素材を使うことや、スクリーンやカーテンでシーンによって隠せる仕様にすることも良いでしょう。
透明感のある素材で壁や建具をつくることで明るさが確保された事例
2-2.室内を明るく演出する内装の工夫
壁紙や床、家具など内装の色を白系に統一することで、室内を明るい空間にすることが可能です。
白は光を反射する特徴がありますから、限られた採光で最大限に空間を明るくできます。とはいえ、すべての内装を白にすることに抵抗がある方もいるでしょう。この場合は、アイボリーやベージュなど白の近似色でも効果が期待できます。
採光は家具の置き方も影響します。窓際に背の高い家具を置いてしまうと、その分自然光が遮られるため、採光が弱くなってしまいます。
背の低い家具を選べば、部屋全体に自然光が入り、奥の方まで光も届きやすくなるでしょう。
2-3.【戸建ての場合】窓の工夫
戸建てリノベーションなら、窓を大きくしたり、取り付け箇所を増やしたりすることで採光も風通しも良くなります。
窓の位置や方角や高さによって採光や風通しの効率も異なります。南側に窓を設ければ1日の中で光が入る時間帯が長く続きやすくなります。
天窓は高い位置から効率的に光を取り込める窓です。開閉できるタイプなら風が容易に通り抜けることができて換気にも役立ちます。
マンションの場合、窓は基本的にリノベーションができません。窓、エレベーター、エントランス、玄関の外側などは共有部分となるため個人で手を掛けることができないことに注意しましょう。
部屋の採光や風通しを工夫したリノベーション2例
ここからは、部屋の採光や風通しを良くする工夫を取り入れたリノベーション事例をご紹介します。
3-1.柔らかい光が部屋全体に広がる開放感あるLDK
■間取り Before&After
連続した3つの窓から自然光がたっぷりと入るように、ひとつながりにリノベーションしたLDK空間。間仕切りを極力押さえて部屋の奥まで光が届く設計です。
床や壁は優しいペールトーンで統一されているため、光を反射して曇りの日でも十分な明るさを確保しています。
3-2.ガラスの間仕切りで明るく清々しい寝室
■間取り図 Before&After
心地よい光が差し込む空間の一等地には、寝室を配置しています。自然光と風が通り清々しい朝を迎えられる場所です。ガラスの間仕切りを活用することで、寝室側もリビング側も圧迫感を感じない工夫をしています。
3-3.白でまとめた内装と開口部で明るさを確保した事例
■間取り図 Before&After
バルコニーの窓と通路側にある窓の採光、風通しを最大限に活かしたプランニング。
個室の壁に大きく開口部を設けることで、光と風が通る空間に。内装は白を基調として光を反射させ、全体に開放感を生み出しています。
まとめ
リノベーションで壁を取り払ったり、開口部に工夫したりするなどで、既存の間取りでは光と風が届かなったエリアにも、明るさが十分に確保され風通しもよくなります。
最後に、この記事のおさらいをしましょう。
◎採光や風通しがよい家のメリット
- 日中はいつでも明るく暖かい
- 空調の効率がよくなり、電気代の節約につながる
- 衛生的で清々しい空間を保てる
- 湿気が溜まりにくく、カビや雑菌が繁殖しにくくなる
◎光と風を取り込む壁や天井の工夫
- 個室の間仕切りにガラスなどを用いた室内窓を設ける
- 開口部を大きく設ける
- スケルトン階段を設ける
◎室内を明るく演出する内装の工夫
- 内装の色を白系(白/ベージュ/アイボリー)に統一する
- 窓際に置く家具は背の低い家具を選ぶ
◎【戸建ての場合】窓の工夫
- 窓を大きくしたり、取り付け箇所を増やしたりする
- 南側に窓を設ける
- 開閉できる天井窓を設ける
ゼロリノベでは、窓の方角や配置などを考慮しながら最適なリノベーション計画を提案しています。内装カラーから開口部のつくり方など経験に基づき理想の住空間づくりを後押しします。
プロの採光アイデアを取り入れて、お家のポテンシャルを引き出してみませんか?心地よい光と風がとおる空間で過ごせば、きっと朝が気持ちよく迎えられるはずですよ。