築30年の中古マンションはあと何年住める?購入時に知っておきたいポイントを解説
鉄筋コンクリート(RC造)マンションの寿命は117年以上と言われています。築30年前後のマンションでも、80年以上の寿命が残されているわけです。
ただし、すべてのマンションが該当するわけではありません。大切なのは「どう管理されてきたか」です。
逆に言えば、そこさえしっかり確認できれば、築30年のマンションは立地がよく安価で下落しにくい宝石物件になりうるのです。
築30年マンションの特徴やメリットや見極め方の知識を身につけ、ぜひ満足のいくマンション購入に役立ててください。
宅地建物取引士/元銀行員
鰭沼 悟
宅地建物取引士、不動産投資家歴15年、元銀行員。不動産仲介からリノベーション設計・施工をワンストップで提供する株式会社grooveagent(ゼロリノベ)代表取締役。
築30年の中古マンションはあと何年住める?
最初にお伝えした通り、鉄筋コンクリート造のマンションの法定耐用年数は47年です。
国土交通省の「中古住宅流通促進・活用に関する研究会報告書取りまとめ後の取組紹介」によれば鉄筋コンクリート造のマンションの耐久実態は50年以上あると認められており、鉄筋コンクリート造建物の寿命を「117年」と推定されると発表しました。
そのため、築後50~117年の間がマンションの寿命といえ、築30年のマンションは20~90年ほどは住める可能性もあります。少なくとも築30年のマンションが10年で住めなくなる可能性は低いといえるでしょう。
築30年の中古マンションの4つの魅力
築30年のマンションの魅力は、以下の5つです。
- 価格が新築よりも安く、比較的下落しにくい
- 築古マンションは立地条件がよいものが多く物件も多い
- 新築マンションと異なり管理の状態をチェックできる
- 寿命的に、長く住めるマンションかどうかジャッジできる
- 新耐震基準で建てられている
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1.価格が新築よりも安く、比較的下落しにくい
最初に触れておきたいのが価格面です。どんなに気に入った新築物件があっても、予算に合わなければ購入できません。
上の東京カンテイ調べのグラフを見てわかる通り、築20年以上の物件は新築に比べて価格が安く、首都圏で同じ広さ条件であれば半額以下となることも珍しくありません。
なおかつ、価格の下落幅も築20年以降から安定し、ほぼ横ばいになります。つまり将来売却することになったとしても購入時との価格差が少なく、経済的リスクも抑えられるメリットがあるのです。
2-2.築古マンションは立地条件がよいものが多く物件も多い
次に注目したいのが立地条件です。長く住むからには、駅やスーパー、コンビニ、学校、子どもが遊べる公園が近くにあるといった、便利に生活する上での立地条件は欠かせません。
ところが、新築マンションでこういった好立地の物件を探してみると、なかなか見つからないことに気づくでしょう。希望するエリアが限られていると、更に数は絞られます。
理由は、立地の良い場所にはすでに開発済みで、そこには中古マンションが建っていることが多いからです。つまり築年数が古いほど、好立地の物件も多くなります。
物件を探しているとき、このエリアは少し予算オーバーだから隣の駅にしてみよう!と、つぶしがきくのは非常にありがたいことです。
どんなに新しく豪華な新築マンションも、立地条件と物件の多さではなかなか中古マンションに勝てません。
2-3.新築マンションと異なり管理の状態をチェックできる
新築マンションの魅力は、やはりこれまで誰も住んだことがなく、ピカピカの状態であることです。しかしそれは、「今後どう管理されるかわからない」ということでもあります。住み始めた当初は良くても、10年、20年先まで適切に管理してくれるかは賭けになるということです。。
その点、築30年以上の中古マンションであれば、すでに長い管理の歴史があります。これまでにどのような管理がされているのかをチェックできるのは、住まい選びにおいて心強い要素となるでしょう。
2-4.寿命的に、長く住めるマンションかどうかジャッジできる
さて、管理に関してもう一点重要なポイントとなるのが、マンションの外壁塗装や下地補修、防水、設備工事などの内容を始めとした大規模修繕工事です。
最初にお伝えした通り、国土交通省のまとめた「RC造(コンクリート)の寿命に係る既往の研究例」によるとマンション寿命は117年と言いましたが、マンションが寿命を全うするには、定期的な大規模修繕工事が欠かせません。
国交省のガイドラインでは、大規模修繕工事は12年に1度行うのが適切とされており、一般的なマンションであれば20年目くらいまでに1回は終わらせています。築30年のマンションであれば、2回目が行われているか、今後の計画が進んでいるはずです。
そのため、大規模修繕工事の実施状況によって、マンションの残り寿命がどうなっているのか判断しやすいです。
2-5.新耐震基準で建てられている
最後に注目したいポイントは新耐震基準で建てられていることです。
築30年のマンションであれば、基本的に新耐震基準に基づいて建てられています。新耐震基準とは、1981年に施行された基準のことで、新耐震基準を機にマンションの耐震性は大きく変化しました。
そのため、2023年現在は築42年あたりが耐震基準の新旧の境目となり、築30年のマンションは耐震性について安心感があるといえるでしょう。
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築30年の中古マンションの3つのデメリット
築30年の中古マンションのデメリットは以下の通りです。
- 築30年の中古マンションは売れない可能性がある
- 建物・設備が老朽化している可能性がある
- 定期的な修繕が行われていない可能性がある
順に解説します。
3-1.築30年の中古マンションは売れない可能性がある
まず、築30年のマンションは、売れない可能性があることに注意しましょう。建物の耐震性や防音性にも不安が生じる可能性があり、最新の建築基準に適合していない場合、地震や隣人の騒音などに対して十分な対策が取られていないかもしれません。
また、築30年のマンションは、周辺環境の変化によって価値が下がる可能性もあります。例えば、駅や商業施設の開発が進んだ場合、新しい物件が増えることで需要が減少する可能性があります。
そのため、資産価値を目的に購入することを検討している場合は、過去の取引から市場価格を調べるようにしましょう。
3-2.建物・設備が老朽化している可能性がある
築30年というと、外壁や屋根にひび割れや浮きが生じている可能性が高いです。また、防水性能や断熱性能も低下している可能性があります。
さらに、設備についても注意が必要です。築30年のマンションでは、配管や配線の老朽化が進んでいる可能性があり、水漏れや電気トラブルのリスクが高まるため、定期的な点検やメンテナンスが必要です。
また、老朽化した建物や設備は、修繕費用がかさむ可能性もあります。予期せぬ故障やトラブルが発生した場合、修理や交換に多額の費用がかかることも考えられるでしょう。そのため、購入前に建物の状態や設備の状況をしっかりと確認し、将来的な負担を見越した購入判断を行いましょう。
3-3.定期的な修繕が行われていない可能性がある
何度もお伝えしているとおり、建物の寿命には大規模修繕と呼ばれる適切なメンテナンスがなされているかが大きく影響します。
国土交通省のガイドラインによると、マンションの大規模修繕は12年に1度実施するべきとされています。
そのため、定期的な見直しがされていないマンションには注意が必要です。築30年の中古マンションを購入する際は不動産会社を通じてマンションの管理状況を確認しましょう。
良いか悪いか?中古マンションを見極める3つのポイント
もちろん全ての築30年マンションが良い物件というわけではありません。チェックすべきポイントは以下の3つです。
- 修繕計画の実施と修繕積立金の貯蓄があるか
- マンションの管理がしっかりされているか
- 建て替えが起きそうかどうか
それぞれ見ていきましょう。
4-1.修繕計画の実施と修繕積立金の貯蓄があるか
まず、大規模修繕工事が適切に行われているかどうかは、修繕履歴を見ることで確認できます。さらに「長期修繕計画書」も必ずチェックしましょう。今後どのように修繕を行うつもりなのか、将来の計画がわかります。
また、大規模修繕工事には多額の費用が必要です。国交省の調べによれば、一戸あたりの目安として一番多いケースは75~100万円で30.6%、次が100~125万円で24.7%と言われています。マンションの戸数に対して相応の修繕積立金が毎月徴収されているか、そして積立金の貯蓄はどの程度残っているのかもポイントになるでしょう。
4-2.マンションの管理がしっかりされているか
マンションの管理において共用部分のチェックは欠かせません。エントランスや廊下、郵便受け、自転車置き場などの共用部分はきちんと掃除が行き届いているかなどで、管理組合が機能しているかを見極めましょう。
ゴミ捨て場が荒れていないかどうかも重要なチェックポイントです。ゴミが散乱していたり、分別がきちんと行われたりしていなければ、住民のマナーが悪そうだということもわかります。
4-3.建て替えが起きそうかどうか
あまり意識されない点ですが、築30年以上のマンションは建て替えの可能性があるかどうかも判断のポイントになります。
上記でご紹介したように管理状況が悪い、耐震性に問題がある、住民の不満が高いといった場合は、建て替えを検討することがあります。建て替えが実施されると住民が費用を負担するケースもあるため、家庭にとっては非常に重要な問題です。
管理状況に加えて、建て替えの可能性はあるのかも必ず確認しましょう。
とはいえ、一般的なマンションの場合、建て替えを実施するには住民の5分の4以上の賛成が必要で決定のハードルが高く、建て替え実行に至るまでも非常に長い時間がかかります。
実際に、2022年4月1日時点で国内における建て替えをしたマンションは1年間でわずか7件のみでした。
参考:マンション建替えの実施状況|国土交通省
築30年の中古マンション購入時にかかる税金と節税制度
ここでは以下の内容について解説します。
- 中古マンション購入時にかかる税金
- 中古マンション購入時に利用できる節税制度
順に解説します。
5-1.中古マンション購入時にかかる税金
中古マンション購入時にかかる税金は以下の3つです。
- 印紙税
- 不動産取得税
- 登録免許税
印紙税とは住宅の購入金額によって左右される税金で、1,000万円から1億円の場合は2~6万円程度かかります。
不動産取得税とは不動産を取得する際にかかる税金で、固定資産税評価額×4%で計算できます。
登録免許税とは不動産の登記に必要な税金で、固定資産税評価額×0.30%で計算できるため、それぞれどれくらい税金がかかるのかを事前に計算しておくことが重要です。
5-2.中古マンション購入時に利用できる節税制度
中古マンション購入時に利用できる節税制度には以下の3つがあります。
- 住宅ローン控除
- 不動産取得税の減税措置
- 登録免許税の軽減措置
住宅ローン控除とは、住宅ローンを使って住宅を購入した際に利用できる控除制度のことです。従来は築25年以内とされていましたが、2022年以降は築30年でも利用可能になりました。
築30年の中古マンションの住宅ローン控除の計算方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事でわかりやすく解説しているのであわせてご確認ください。
関連記事:【2023年最新】住宅ローン控除額の最もわかりやすい計算式とは?シミュレーション方法も解説
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築30年の中古マンションを買った後の3つの選択肢
長く安心して住まえる建物で、しかも好立地かつ安価という条件が揃う可能性の高い築30年のマンションは非常に魅力的です。
しかし、実際に暮らすのはマンションの部屋です。中古マンションが新築マンションに劣る大きなポイントは、やはり部屋が古いということにほかなりません。
そこで登場する選択肢に、以下の3つがあります。
- 自分らしい空間にリノベーション
- 見えるところだけをリフォーム
- そのまま住むという手も
それぞれ見ていきましょう。
6-1.自分らしい空間にリノベーション
もしも物件価格を抑えることで予算に余裕ができそうなら、間取りや排水管などをすべて一新できるリノベーションを行うと良いでしょう。ライフスタイルに合わせてプランできるので、新築マンションよりも生活満足度が高くなるかもしれません。
6-2.見えるところだけをリフォーム
選んだ物件がある程度綺麗だと思えるのなら、水回りや壁紙など、気になる場所だけをリフォームしたりクリーニングする、表層リフォームがおすすめです。
ただしこの場合は、部屋の排水管の寿命に注意してください。排水管は遅かれ早かれ交換が必要になりますが、一度目に見える部分をリフォームしてしまうと、後から交換するのはコストが余計にかかってしまいます。
6-3.そのまま住むという手も
リフォーム済みの物件であればそのまま住むという選択肢もあり得ます。ローンも物件費用だけ組めば良いのでシンプルです。ただし、現状の設備に問題がないかしっかりチェックをした上で購入しましょう。
いずれの住まい方をする場合も、ポイントは予算との兼ね合いによって判断することです。
銀行に住宅ローンの相談をすると、年収をもとに借りられる額を提示されますが、これはあくまで「借りられる額」であって「返せる額」ではありません。
ゼロリノベでは、「返せる額」の目安は年収の約5倍、返済比率は20%をおすすめしています。
ここから自分のライフスタイルや将来設計も鑑みて無理のない予算を決定し、自分に合った住まいづくりをしてください。
築30年の中古マンションに関するよくある質問
最後に、築30年の中古マンションに関するよくある質問を紹介します。
- 築30年の中古マンション購入後に固定資産税はいくら?
- 築30年の中古マンションの売却相場は?
それでは、詳しく解説します。
<h3>7-1.築30年の中古マンション購入後に固定資産税はいくら?</h3>
築30年の中古マンション購入後の固定資産税は、新築時に比べて3割程度となっています。固定資産税は土地と住宅の両方にかかり、具体的な計算方法は以下の通りです。
中古マンションの場合の固定資産税の計算式 |
建物一戸の固定資産税評価額×税率=(a) マンションの敷地面積を戸数で割った土地の固定資産税評価額×税率=(b) |
(a)+(b)=固定資産税合計額 |
また、マンションの敷地を戸数で割った場合の敷地面積が200㎡以下の場合は、軽減措置が適用されます。
一般的に自治体での税率は1.4%となっており、敷地面積が200㎡を超えることはほとんどないため、軽減措置が適用されることが多いです。
以下で築年数別の減価率をまとめたので、あわせてご確認ください。
経過年数 | 減価率 |
1年 | 0.9579 |
3年 | 0.9038 |
5年 | 0.8569 |
10年 | 0.7397 |
20年 | 0.5054 |
30年 | 0.3059 |
45年以上 | 0.2000 |
7-2.築30年の中古マンションの売却相場は?
築30年の中古マンションの売却相場は新築購入時の35%が目安といわれています。
以下は築0~5年のマンションに対して、築25~30年のマンションがどれぐらい値段が下がるのかをまとめた表です。
築0~5年 | 築6~10年 | 築16~20年 | 築26~30年 | 値下がり率 | |
首都圏 | 6,638万円 | 6,193万円 | 5,250万円 | 2,832万円 | 57% |
西日本 | 3,664万円 | 3,190万円 | 2,476万円 | 1,274万円 | 65% |
近畿圏 | 4,619万円 | 4,070万円 | 3,172万円 | 1,543万円 | 67% |
中部圏 | 4,132万円 | 3,696万円 | 2,579万円 | 1,263万円 | 69% |
表の通り、首都圏では値下がり率が57%であるのに対して、その他の地域では65%以上となっていることがわかります。
まとめ
築30年の中古マンションを購入する際、注目すべきは管理状況です。
必ず修繕履歴や長期修繕計画書を確認しましょう。管理状況が良好であれば、安心して暮らせて好立地、かつ資産価値の高い住まいを手に入れられる可能性が高まります。
中古マンションのデメリットである部屋の古さは、表層リフォームやリノベーションを行うことでカバーできますし、特にリノベーションは満足度の高い住まいを実現することも可能です。
ただし、その場合に忘れてはいけないのが予算との兼ね合い。返済比率20%以下の無理のない範囲で予算を組むことが、中古マンション購入で失敗しないもう一つの条件となります。
予算より高かったり、自分たちの理想と異なる物件を選んでしまっては本末転倒です。
自分たちがより良く暮らせるための方法を、予算と照らし合わせながら考えてみてくださいね。