マンションの耐用年数は47年、寿命は100年!建て替えや減価償却について解説
- マンションの耐用年数ってどれくらい?
- 耐用年数を過ぎたマンションってどうなるの?
マンションの耐用年数は、鉄筋コンクリート造の場合47年と税法で定められています。
これはあくまで減価償却費計算のための数値で、マンションの物理的な寿命とは関係がありません。耐用年数を過ぎていても、安心して住むことができます。
この記事では、次のような内容を解説しています。
- 構造別のマンション耐用年数一覧
- マンション寿命を決める要素と長寿命マンションの見極め方
- 耐用年数を用いた減価償却の計算方法
- 耐用年数を過ぎたマンションがどうなるか
本記事を読み終わる頃には、マンションの耐用年数と物理的な寿命の違いが分かり、長く住めるマンションを見極めることができるようになるでしょう。
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コンクリート造のマンションの法定耐用年数は47年
上の表は、構造別で建物耐用年数を一覧にまとめたものです。鉄筋鉄骨コンクリート造、鉄筋コンクリート造のマンションは、耐用年数が47年に定められています。
現存する多くのマンションはコンクリート造であるため、ほとんどが耐用年数47年と考えることができます。
1-1.【減価償却】マンションの残存耐用年数の計算方法は2種類ある
減価償却を計算する際には、残存耐用年数が必要です。この残存耐用年数の計算方法には2種類あります。
①築年数が耐用年数を超えない場合
中古マンションの耐用年数=47年−(築年数×0.8)
②築年数が耐用年数を超えている場合
中古マンションの耐用年数=47年×0.2
投資用物件は減価償却で節税できる
居住用物件で購入する場合はローン減税があるため、あまり関係がありませんが、投資用にマンションを購入する場合は減価償却で節税ができます。
減価償却の計算方法は2通りあります。
①定額法
減価償却の対象額を利用可能期間(耐用年数)、毎年同じ金額を配分していく方法。
②定率法
定率は、利用可能期間(耐用年数)の初めの方に多額の減価償却費を計上して、耐用年数の後期になるほどその金額が減少していく方法。
減価償却費は、次の計算式で求められます。
[減価償却費=建物の購入価額×償却率]
より詳しく知りたい方は、投資用中古マンションにおける減価償却額の計算方法を説明したこちらの記事もご覧ください。
関連記事:【保存版】中古マンションの減価償却費を簡単に計算する方法!メリット解説
マンションの耐用年数=寿命ではない
耐用年数は、マンションの物理的な寿命とは関係がありません。耐用年数(法定耐用年数)とは、減価償却が利用できる期間のことを指します。
これは、減価償却資産が利用できる期間を税法で定めたものであり、マンションそのものの耐久性に関わるものではないのです。
2-1.鉄筋コンクリート造マンションの物理的寿命は117年
国土交通省がまとめた「RC造(コンクリート)の寿命に係る既住の研究例」によると、マンションの物理的な寿命は117年と言われています。
・「鉄筋コンクリート造建物の物理的寿命を117年と推定」飯塚裕(1979)「建築の維持管理」鹿島出版会)
・「鉄筋コンクリート部材の効用持続年数として、一般建物(住宅も含まれる)の耐用年数は120年、外装仕上により延命し耐用年数は150年」(大蔵省主税局(1951)「固定資産の耐用年数の算定方式」)
100年を超えても、物理的なマンションの耐久性には問題ありません。
技術革新によって、築年数の浅いマンションの寿命は今後さらに伸びる可能性もあります。環境への影響を考え、国や自治体も長期優良住宅の支援に力を入れていることに加えて、サスティナブルな価値観への世界的な変遷もあり国全体でマンションの長寿命化を図っているといえます。
国土交通省が発表した資料によると、20年後には築30年以上のマンションストックが現在の4.2倍になるといわれています。築年数の経過したマンションのストック戸数が増加するということは、購入する際に中古マンションの選択肢が増えるということです。
すぐに戸数が増加するわけではありませんが、築年数の古いマンションを検討している人は、後悔しないマンション購入のために、中古マンション購入車の体験ブログを読んでおくと注意点などが事前に把握できるため参考になります。
関連記事:リアルな体験談・後悔、失敗がわかる中古マンション購入ブログ12本
鉄筋コンクリート造マンションの耐震性
マンションには、新耐震基準のマンションと、旧耐震基準のものがあります。新耐震基準の建物かどうかは、昭和56年6月1日以前に「建築確認申請」を役所に提出したとしても、昭和56年6月1日以降の基準法で証明書が発行されているかどうかで判断されます。
次の表は、それぞれの基準をまとめたものです。
旧耐震基準では、大規模の地震災害について基準を設けていませんでしたが、新耐震基準では大規模の地震が起きた場合に倒壊しないことを性能の基準としています。
実際の被害状況を調べてみました。東京カンテイの調査によると、東日本大震災で被害を受けたマンションのうち、旧耐震・新耐震の差は特に無かったということです。
もちろん、現在の法律の基準を適用している新耐震基準のものを選ぶほうが精神的にも安心かと思います。しかし、旧耐震=危険ということではありません。修繕・管理がしっかり行われていれば、結果的に長持ちするため旧耐震のマンションでも問題なく住むことができます。
耐震性の高いマンションに住もうと金銭的に無理をするよりも、ご自身の予算と相談しながら、耐震性についても考えてみてください。
寿命を過ぎても建て替えは現実的でない理由
マンションが建て替えられる可能性は、現状では非常に低いという課題があります。実際に、国土交通省の調査によると、マンションストックは全国で約685万戸(2021年末時点)あり、そのうち建て替えが行われているのは265件(2021年現在)、戸数で言うとおよそ20,500戸です。
戸数を元に計算すると、全国にある約685万戸のマンションのうち、建て替え済みのマンションはわずか0.3%であることが分かります。
なぜ建て替えが起こりにくくなっているのでしょうか。理由は二つあります。
- 一戸あたり1,000万円以上の高額な費用がかかる
- 住民の5分の4以上の賛成が必要
それぞれについて、詳しく説明していきます。
【理由1】一戸あたり1,000万円以上の費用がかかる
現在の建物を取り壊し、一度更地にして新しくマンションを建設する場合、一戸あたり1,000万円以上、多い場合だと2,000万円以上の費用負担がかかります。
建て替えの可能性を左右するポイントが、余剰容積率です。敷地内にスペースがある場合、そこに新しい棟を建設することができます。
このケースでは、住民が持ち出し資金で建て替えを行うのではなく、新しく建設したマンションの販売利益や家賃利益をもとにマンション建て替えが可能になります。
そうした余剰スペースが無い場合は、現在住んでいる建物の取り壊し、新しい建物の建設費用、設備費用など、高額な予算を住民から集める資金で賄わなければなりません。
【理由2】住民の5分の4以上の賛成が必要
建て替えを実現するためには、住民の5分の4以上の賛成が必要になります。
高額な費用が必要になる場合や、住民の多くが高齢者である場合、建て替えの賛同を得ることが難しくなります。
建て替えの合意形成は、建物が大規模になればなるほど難しくなる傾向にあります。実際に、建て替えを行った物件の約8割は100戸以下のマンションです。
これらの理由から、耐用年数を過ぎた場合であっても、建て替えが実現しにくくなっています。
【結論】持ち出し資金がなしで建て替えられるなら賛成でOK
もし、自分の所有するマンションで建て替え案が出てきた場合、その後の選択肢は3つあります。
- 持ち出し資金がなしで建設できるなら賛成でOK
- 持ち出し資金あり、自己資金もあるなら賛成または売却
- 持ち出し資金あり、自己資金がなければ反対または売却
持ち出し資金が必要なく建設できるケースというのは、マンションの余剰容積が十分にある場合です。
このケースでは、新しく建設したマンションの売却益から資金を回収できる可能性があります。
気を付けなければならないのは、持ち出し資金がある場合です。特に、持ち出し資金が必要で自己資金が無い場合は、反対または売却をし、新しい住まいに引っ越すという選択肢もあります。
とは言え、最初にお伝えしたとおり、マンションでの建て替えはほとんど起きないと言えるでしょう。
関連記事:築30年のマンションはあと何年住める?後悔しない物件選びの注意点6つ
建て替えをしない場合の2つの選択肢
耐用年数が過ぎたマンションが建て替えをしない場合、次の二つの選択肢があります。
- 大規模修繕で寿命を延ばす
- 区分所有権を解消し敷地売却する
それぞれについて説明していきます。
4-1.大規模修繕でマンション寿命を延ばす
建て替えできない場合の選択肢として、大規模修繕を定期的に継続しマンション寿命を延ばす方法があります。
大規模修繕でマンション寿命を延命していく場合、想定外の経年劣化で追加の費用が必要になる等、様々な要因で修繕積立金が値上がりする可能性があります。
他方で、近年では老朽化マンションの寿命を延ばすための技術革新も進んでいます。築年数の経過したマンションを長く使用するための方法は今後増えていくでしょう。
4-2.区分所有権を解消して敷地売却する
大規模修繕でマンション寿命を延命する選択肢が一般的ですが、その他に区分所有権を解消して敷地売却する方法があります。
敷地売却の場合は、区分所有者の5分の4の賛成で、土地と建物を売却することができます。この場合、分配される売却利益が少ないと、引っ越し費用に満たないケースもあるので注意が必要です。
とは言え、最初にお伝えしたとおりマンションの建て替えは概ね起こりにくいと言えるでしょう。
より詳しく知りたい方は、マンションの建て替えについて説明しているこちらの記事もご覧ください。
マンション寿命は耐用年数ではなく「管理状態」で決まる
マンションには耐用年数が設けられていますが、実際の寿命は「管理状態」が大きく影響します。マンションの躯体であるコンクリートは、雨水の浸透などで劣化が進みます。そのため定期的なメンテナンスでコンクリートが脆くなるのを防いでいく必要があります。
メンテナンスは美観のためだけに行うのではなく、過酷な自然環境にさらされている躯体の耐久性を維持するために必要なものなのです。そのため、「大規模修繕の実施」と「住民の管理意識」が大切です。
5-1.大規模修繕の実施
大規模修繕は目安として12~15年に一度の実施が推奨されています。外壁塗装の修繕や共有部分の給排水管の交換などを行い、コンクリートの堅牢生を保つなどの目的があります。
大規模修繕をきちんと実施しているかどうかは、マンション寿命に大きく影響します。コンクリートの建物は風雨にさらされても頑丈なイメージがありますが、コンクリートの強度を保つ鉄筋が雨に浸食されると、腐食し強度が保てなくなる可能性があります。定期的なメンテナンスは長寿命な建物ためにも大切なポイントです。
チェック方法
大規模修繕を実施したか確かめるためには、過去の修繕履歴や長期修繕計画の工事内容、修繕積立金の貯蓄額などから、管理体制を把握することができます。すでに入居者であれば、管理組合に確認できますし、購入を検討中の場合であれば、不動産会社などの仲介担当者を通じて確認することが可能です。
関連記事:マンションの大規模修繕とは?実施内容や期間・費用など詳しく解説
5-2.住民の管理意識
マンションの寿命を維持するためには、マンション住民の管理意識も重要です。特に分譲マンションの場合、きちんと管理費を納めて共用部分の清掃や外壁の耐久性を保つなど、適切なメンテナンスを行える環境を整えておくことが、建物の寿命を長持ちさせることにつながります。
チェック方法
住民の管理意識の程度を判断するには、共有部分の清掃状況や管理状況を実際に確認したり、修繕積立金を滞納している人がいないか確かめることや長期修繕計画で確認することなどが挙げられます。
マンション寿命に影響する3つの注意点
マンションの寿命に影響する要素として、大規模修繕以外の他に次に挙げる3つの点についても注意が必要です。
- 塩害を受けやすい場所に建設されている
- 再開発計画が立てられている
- 利便性が悪くニーズが少ない立地
6-1.塩害を受けやすい場所に建設されている
海岸沿いや、潮風のあたる場所など、塩害を受けやすい場所にあるマンションは、他のマンションと比べて劣化しやすい傾向にあります。
特に、外壁塗装や、外に出ている給湯器、エアコン室外機などの設備への影響が気になります。エアコン室外機に関しては、次のような基準が定められ、塩害対策仕様の機器を販売しています。
- 海から300m以内:重耐塩仕様
- 海から300m~1km:耐塩仕様
海沿いで住まいを探されている方は、過去の修繕内容を確認して、定期的な外壁修繕、設備修繕が行われているか確認してみましょう。
6-2.再開発計画が立てられている
再開発計画がある地域や区画整備が行われる地域では、その地域の経済性を優先してマンションの建て替えや取り壊しが起こる場合もあります。
日本で初めての建て替えマンションは、渋谷区の「宮益坂ビルディング」です。マンションの耐久性に問題はなかったものの、渋谷駅周辺の再開発計画により、取り壊し・建て替えが行われました。
6-3.利便性が悪くニーズが少ない立地
マンションの空室をなるべく作らず、十分な修繕積立金を集めるために、マンションの立地と利便性が重要です。
もし、空室が多く修繕積立金を十分に回収できていなければ、大規模修繕を行うこともできず、耐久性に不備が生じた場合でも資金不足で建て替えが難しくなります。
例えば駅から徒歩10分以内の場所にあるマンションや、ターミナル駅周辺のマンションは、一般的に見て賃貸・分譲どちらの場合でも人気が高い傾向にあります。
築年数が経過したマンションで、今後も長く住める物件をお探しの場合は、利便性の良さもポイントに探してみるとよいでしょう。
タワーマンションの耐用年数について
「タワーマンションは建物寿命が短いのか?」という声を耳にするときがありますが、一般的なマンション同様、長期修繕計画や修繕積立金の貯蓄額に注意して管理状態を確認すれば、必要以上に心配することはありません。
戸数が多いタワーマンションの場合は、空室率が高いと修繕積立金が貯まらず適切な修繕ができなかったり、修繕工事の直前に追加徴収される場合もありますので、管理組合などにあらかじめ確認しておくとよいでしょう。
その他、タワーマンションの購入を検討する上で注意したい点については以下の関連記事を参考にしてください。
関連記事:タワーマンションに住み後悔した理由11選!口コミと統計を基に解説
まとめ
マンションの耐用年数を建物そのものの寿命と捉えてる方も少なくありませんが、耐用年数はあくまで減価償却という法律で定めた期間であり、税金などの計算に用いられるものです。そのため、耐用年数=寿命ではないということをお伝えしました。
ただし、一定の寿命を維持するには大規模修繕など適切なメンテナンスが大きく影響します。マンションの管理状態はそのまま建物の寿命に関わるため、中古物件を購入する際には過去の修繕状況や日常的な管理状態がきちんと実施されているか確認することが大切です。
とはいえ、物件情報をみたり内見したりするだけでは、適切なメンテナンスが行われているか判断できない場合も多いと思います。現状を正しく判断するにはプロに相談することをおすすめします。
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