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幸福学に学ぶ、人生100年時代の自由でウェルビーイングな暮らし方前野隆司教授【大人の “自由” 研究 vol.2】<後編>

大人を自由にする住まい。それは、人生の選択肢を広げる「余白」があるということ。すべての人になくてはならないものだから、真正面から考えたい。自由とは? 余白とは? 家を、生き方を、住宅業界を、もっとより良くするために。不自由があるならそれを取り除くために。毎回テーマを変えて、スペシャリストにインタビュー

誰もが望むものの、思うままにならない「幸せ」という感覚。それをデータサイエンスで分析していく幸福学の第一人者・前野隆司教授に聞いた。自由で幸せな暮らしってなんですか?

[教えてくれた人]武蔵野大学ウェルビーイング学部長 前野隆司

慶應義塾大学名誉教授。東京工業大学(現東京科学大学)大学院理工学研究科機械工学専攻修士課程修了。博士(工学)。キヤノン株式会社に勤務後、慶應義塾大学理工学部機械工学科教授、慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長などを歴任。著書に『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社現代新書)『ディストピア禍の新・幸福論』(プレジデント)他多数。TED出演や講演など幅広く活躍している

目次

リノベは “人生の棚卸し” をする絶好の機会

——先生のお話でもう一つ、固定観念に縛られないことも大事なポイントのように思いました。物件探しでは「築浅物件じゃなきゃ心配」とか「絶対、駅近!」と思われている方が少なくありません。でも、築50年で安心できる物件があることや、エリアを変えても希望の暮らしがかなう選択肢を提示すると、視野が広がって良い物件に出合えた方がたくさんいます。

実は、視野が広い人は幸せで、狭い人は不幸せという研究があります。また、人生の目標が明確な人、あるいは人生の意味が分かっている人が幸せという研究結果も。パーパスオブライフ、ミーニングオブライフという、人生の目的や意味がわかっていない人は幸福度が低いと考えられています。
そういうことを考えるのは苦手だという人も多いかもしれませんが、幸せになるためにも「自分はこの先、何をしたいか」視野を広げて人生の目的について考えるといいでしょうね。


研究でご協力いただいた西精工という会社では「死ぬまでにやりたい10のこと」を書いた紙を社員全員分張り出しているんです。『仕事で何々を成し遂げたい』とか『母をもう1度あそこに連れていきたい』とかいうことですね。

その10個は、みんなで毎年考えて、変えたくなったら更新するのですが、大きな人生の目標を10個挙げるとなると、優先順位や内容をじっくり考えるじゃないですか。彼らが幸福度の高い状態で働いているのは、そういう思考がベースにあるからだと思います。

ごちゃごちゃしている頭の中を整理することは極めて大事。整理せずに「なんとなく都心に住みたい」のまま計画を進めて本当の希望とは違う住まいになっては、幸せとは言い難いじゃないですか。
優先順位を整理できると、「地方でリノベにした方がいい」などの選択肢も出て、より良い答えが見つかるかもしれませんよね。自由な発想を得て幸せになるためには “人生の棚卸し” が必要なんです

——家づくりが人生の棚卸しにつながりそうですね

すごくいいチャンスだと思います。衣食住のうちで「住」はもっとも大きいテーマ。住む場所からその後の人生まで考えざるを得ないことですから。


自己肯定感が高い人ほど幸せ

——弊社でリノベーションをされたお客様から「家づくりがとてもいい自己表現の機会になって、自己肯定感が上がった」というようなお話をよく聞きます。この自己肯定感というのは、幸せにどう関係しているのでしょう。

自己肯定感と幸せは相関係数0.7以上。非常に相関が高い状態です。自己肯定感が高い人は幸せで、自己肯定感が低い人は不幸せだと言っていいぐらい。リノベーションして自己肯定感が上がったということは、幸せになったということ。それは研究者として断言できますね。すごいじゃないですか。

——そうでしたか! ありがたい言葉をもらっていたのですね。では、一般的には何をすると自己肯定感が上がるのでしょう。

幸せの因子と同様に自己肯定感の因子も膨大にあって、明快な答えは出ていません。ただ、僕が間違いなく寄与していると感じているのは成功体験

小さな成功を積み重ねていくと人として能力が上がり、「自分には悪いところもあるけれど、いいところもあるからこの先もやっていける」と思えるようになる。それが自己肯定感なんですよ。そうするともっと大きなことやいろんなことにチャレンジできるようになるはず。その過程には創造性の発揮も伴います。

新しいビジネスモデルやアートなど、何か新しい創造性を発揮すると幸せになるという研究もあるのですが、家のリノベも自分だけの新しいアートみたいなものかもしれません。

新しい場づくりをリノベーション会社と共同で行なって、自分の意見を取り入れながら創り上げた経験は、仕事での能力発揮や何かの成功体験と同じような効果をもたらすのだと思いました。

——創り上げるという点では、まさしくご家族にとっての一大イベントになっています。何度も話し合い、夢を広げたり、悩んだり、将来を思い描いたりしながら、時間をかけて力を合わせて目標に向かう体験です。

それが成功したら間違いなく自己肯定感が上がります。自己肯定感が上がる家は「幸せになる家」と同義ですから責任重大ですね。

——身が引き締まります!

いい家ができると、アナロジカルには人生の意味についても目が向くかもしれません。家をリノベするというのは、視野を広くもって判断することだから。

日常的にはゴミ出しのような細かい問いにとらわれがちですが、1度、家のような大きい問いに意識が向くと、他の大きな問いも立てやすくなって、人生の意義、意味、目標というところまで気持ちが向かいやすくなるような気がします。

——確かに20代のお客様でも、リノベをするに当たって子どもができたらどうするか、大きくなったら、さらに巣立った後はと、かなり先のことまで考え出す方も多いです。

しかも、新車や分譲住宅のようにすでにある商品を買うのと違って、リノベは工夫をしますよね。大きな買い物の中でも、特に工夫が必要ですから、その分、多大な創造性を発揮できるのかもしれません。
さらに「過去のものを活かしつつ、より良くする」というところにも、なんとも人間味がある。リノベーションは大きな自己肯定感につながる体験になりそうですね。

幸福は年齢とともに変化する

——最後に、先生が研究されている「年代別幸福度」についても教えてください。

横軸に年齢、縦軸に幸福度として統計を取ると、0歳と100歳は幸福度が高く、4、50代が底になります。赤ちゃんは幸せじゃないですか。何も悩んでいない。一方、100歳ぐらいになると欲もなく、生きているだけでありがたいと周囲に感謝する “老年的超越” 状態になります。

年齢帯別幸福度「実践 ポジティブ心理学 幸せのサイエンス」(PHP新書)より

だから、10歳ぐらいまでと、90歳以降は非常に幸せなんですよ。人生100年時代は、幸福の底で寿命を迎えたひと昔前の人生50年時代と違って、 “幸せな後半” があるということ。人類にとっては救いだと思います。

——しんどい時期があったとしても、U字に上がっていくのは希望ですね。創造力を必要とするリノベは、良い住まいを実現できると成功体験や自己肯定感につながって、その後の人生を豊かにする可能性があることを実感しました。先々まで自由と幸せを育める家づくりを目指していきたいと思います。本日はありがとうございました。

構成・取材・文/樋口由香里 撮影/相馬ミナ

 

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