意外にかかる中古マンションのリノベーション期間の注意点
中古マンションのリノベーションを計画する際、頭に入れておかなければならないのが設計や工事にかかる期間です。フルリノベーションと部分リフォームではかなり長さが異なるため、それぞれの場合で、目安となる期間と価格についてご紹介していきます。
一級建築士
西村 一宏
東洋大学ライフデザイン学部講師。リノベーション・オブ・ザ・イヤーを受賞した設計・施工部門の責任者としてゼロリノベ建築を担う。
中古マンションのフルリノベーション期間は6~7ヶ月
コンクリートの箱の状態にまで戻して改修を行うフルリノベーションの場合、6~7ヶ月の期間が必要です。通常、設計に3ヶ月、工事に3ヶ月が目安になるでしょう。
問題は、大掛かりなリノベーションでは、マンションによって理事会の承認を得ないと工事ができない場合があることです(通常、規約に記載があります)。国土交通省平成25年度マンション総合調査によると、マンション管理組合の理事会というのは1ヶ月に1度が45%で、それを逃すと、次まで待たなければならないため、それ以外はもっと期間を必要とする場合もあります。
設計が終わっていても、理事会に承認されるまで工事がスタートできないというケースがあり、そうなれば工事終了までの全体の期間も延びてしまいます。
また、6ヶ月の期間となると正月か盆のいずれかと重なることが多く、その間は工事ができません。ほかにも工事中に予期しないトラブルが起きて遅れが出ることもあります。したがって、理事会の承認の件も含めて、6ヶ月ぴったりで終わるケースはむしろ少ないと言えます。とくに工期は4ヶ月くらいまで伸びる可能性があります。
費用はリノベーション会社によって異なりますが相場は平米単価が10~15万円程度です。もちろんこだわるほど単価は上がります。例えば70㎡のマンションの場合は、767万円〜1,504万円程度を想定しておく必要があります。
より詳しくは、リノベーションの費用について解説しているこちらの記事をご確認ください。
専有部全体のリノベーションは予算的にちょっと。。という方は部分リノベーション、リフォームを検討してみましょう。
部分リノベーション・部分リフォームに必要な期間
部分リノベーションもしくは部分リフォームは、住戸内のどの部分に対してどのような工事をするかによって期間が変わります。また、次項3でなかなか気づきにくい部分リノベーション、リフォームの落とし穴についても触れるのでご確認ください。
2-1.キッチンリフォームの工事期間と費用
現状のキッチンを取り外して新しいキッチンを設置するという交換のリフォームであれば、期間は2~4日程度が目安となるでしょう。
ガス・電気・水道の接続はほぼ現状のまま行えるので、比較的短期間の作業ですみます。ただし、これらに加えて床や壁のクロス張り替えを行うとすると全体で1週間程度はかかるでしょう。
これに対し、キッチンを移動させる場合の期間はもっと長くなり、2週間~1ヶ月程度は必要です。古いキッチンと新しいキッチンの2箇所を工事することになるため周辺の床や壁の工事が加わり、電気工事や設備配管も複雑になります。
費用は、キッチンの移動はせず本体を丸ごと新調した場合で50~150万円です。幅が大きいのはキッチンのグレードによって価格差があるためです。システムキッチンは最低50万円から、オプションやビルトイン食洗機などの機器を導入する場合は100万円以上かかる場合もあります。キッチンを移動させる場合は150~200万円が目安になります。
>>キッチンリノベーションの費用はいくら?メーカー6社の商品相場も公開!
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2-2.浴室リフォームの工事期間と費用
ユニットバスからユニットバスへ交換するリフォームは3~4日間が目安です。タイル風呂からユニットバスへのリフォームは4~7日間が平均的な期間でしょう。これはコンクリートの基礎工事などが加わるためです。
費用は本体価格で違いがあります。
FRP製浴槽のシステムバス(ユニットバス)は80~135万円、人工大理石製浴槽のシステムバスは70~250万円、鋳物ホーロー製浴槽のシステムバスは110~150万円といったところです。
工事費はユニットバスからユニットバスへの交換する場合の工事費は25~30万円ほどで、タイル風呂からユニットバスへ変える場合はその倍以上かかることもあります。全体の費用としては、80~100万円でリフォームするというケースが多いようです。
>>浴室リノベーションの費用相場はいくら?4種類のシステムバスを解説!
2-3.トイレリフォームの工事期間と費用
トイレ本体のみの交換であれば半日~1日で完了します。和式から洋式へ変える場合は2日ほどかかるでしょう。これに床の張り替え、水道管の取り換えが加わると3~4日かかることになります。
費用は便座交換のみなら3~10万円ほど、便器と便座を交換する場合は20万円以内が目安になるでしょう。和式から洋式への交換は50万円前後かかります。
2-4.洗面台リフォームの工事期間と費用
洗面台の交換のみを行う場合は半日~1日程度の工事で終わります。床と壁のクロスの張り替えが加わるなら1~2日かかるでしょう。
費用は洗面台の交換のみで6~8万円、床と壁のクロスの張り替えが加わると10~13万円ほどになります。トールキャビネットを追加すると7万円前後、ウォールキャビネットを追加すると2.5万円前後費用が加算されます。
>>【簡単】洗面台リノベーションの費用とおすすめメーカー6社の特徴
2-5.間取り変更リフォームの工事期間と費用
1部屋を2部屋に分けるリフォームで、壁を作る場合は2~3日が目安です。逆に壁を撤去して2部屋を1部屋にするリフォームは、床の張り替えも入れると5~6日かかります。
費用は1部屋を2部屋に分けるリフォームで、壁のみを作る場合は10~20万円、ドアを新設すると30~70万円、引き戸を取り付けると10~16万円が目安になるでしょう。2部屋を1部屋にするリフォームは18~30万円といったところです。
ただし、これは壁と天井の溝を板などで埋めてクロス仕上げし、床は見切り材で補修するような場合で、フローリングを全張り替えする場合はもっと費用がかかります。
中古マンションの部分リフォームの落とし穴
全体のリノベーションをするか、部分リフォームをするかは何を基準に決めればいいのでしょうか。ここで気づきにくい部分リフォームの落とし穴について触れていきます。実は、築浅の場合は問題ありませんが、築25年以上経過しているマンションの場合、給排水管の劣化が気になります。
寿命は使われている配管の種類によって異なるものの、事前に調査して状況を確認すべきポイントです。一般的に、「水道用亜鉛めっき鋼管」の更新の目安は15~20年、「水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管」の更新の目安は15~30年と言われています。また、「ステンレス鋼管」の場合はパッキンの交換が必要な以外は半永久的に使用することができます。
>>中古マンションの配管寿命は?築38年の物件を買っても大丈夫?
いずれにしろ、水漏れのリスクは年々高まっていきます。ある程度の築年数になっているのであれば、給排水管を含めたフルリノベーションを検討してもいいでしょう。あとから給排水管を交換するとなると再び工事が必要になり、費用もかさんでしまいます。
また、上記に加えて購入当時とのライフスタイルの変化も考慮してみるのもおすすめです。
フルリノベーションはライフスタイルに合わせて間取り・レイアウト・設備を変更できるので、既存の間取りなどに不満が多い、自分たちのスタイルにフィットした理想とするデザインを実現させたいという場合はフルリノベーションが最良の選択となるでしょう。
まとめ
フルリノベーションは6~7ヶ月、工事だけでも3~4ヶ月と、必要とされる期間はどうしても長くなってしまいます。
しかし、給排水管を交換でき、間取りを含めてほぼ一から作り上げる感覚で住まいをデザインできるのは魅力です。
とくにフルリノベーションを前提に新たに中古マンションを購入するのであれば、期間の長さもそれほど気にならないのではないでしょうか。半年以上じっくり時間をかけて物件を作り変えてから、工事完了後に現在の住居から住み替えるという流れになるでしょう。
一方、キッチン、浴槽、トイレ、洗面台など特定の場所の修復や取り換えをメインに考えるなら部分リフォームが適しています。間取りのみを変えることも可能です。1日程度から長くても1週間ほどあれば工事が完了するので、生活への影響もそれほど大きくありません。
なお、リノベーション会社の選び方については、自分にピッタリのリノベーション会社の選び方がわかる6つの手順をご確認ください。
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